以前、「将来離婚する約束」について説明をさせていただきました。
離婚することは夫婦で合意しているけど、今ではなく、将来離婚する約束をしたんです。これは意味はあるんでしょうか・・・? こんなご相談をお受けすることがあります。 離婚は、法的な手続きですから、将来離婚をすることについて約束[…]
おさらいすると、
「将来離婚する約束」があり、その時が到来したとしても、絶対に離婚ができるというわけではない。
しかし、「将来離婚する約束」があれば、離婚判決を勝ち取りやすくなる(離婚訴訟で有利な事情となる)。
そのため、「将来離婚する約束」があれば、相手との話し合いや調停で、相手に離婚に応じさせやすくなる。
ということでした。
今回は、そうした「将来離婚する約束」の効力をより強化するためのポイントを説明しましょう。
1 離婚するタイミングが明確な条件にしておくこと
「将来離婚する約束」での「将来」の時点は、相手の意思・行動に関わらないタイミングで、そのタイミングが明確に予測・確定できるものであることが望ましいです。
というのも、例えば、
「就職して収入が安定したら」 → 離婚する。
「離婚後の生活の目処が立ったら」 → 離婚する。
「2年後に話し合っても夫婦関係が改善できなかったら」 → 離婚する。
などといった条件では、実際にその条件が成就したかどうかが争いになってしまいかねません。
離婚に応じたくない相手としては、強引にでも条件の成立を否定してくることが予想されます。
そのため、例えば、
「子供が中学を卒業する令和4年3月末になったら」 → 離婚する。
「相手が就職して収入が安定するか又は1年経過したら」 → 離婚する。
などといったように、そのタイミングが明確に予測・確定できる条件にしておくことが良いでしょう。
また、
「相手がやっぱり円満は無理だと諦めたら」 → 離婚する。
「相手の両親が離婚することに納得したら」 → 離婚する。
などといった、条件が成立するために相手の意思・行動が必要となるようでは、いつまでもその条件が成立しないこととなりかねません。
そのため、例えば、
「今後2年経過後もこちらの離婚意思が変わらなければ」 → 離婚する。
「相手の両親が離婚することに納得するか又は1年経過したら」 → 離婚する。
などといったように、そのタイミングが相手の意思・行動によらずに到来するような条件にしておくことが良いでしょう。
このように離婚するタイミングが明確になれば、相手としても、離婚話が再開されるタイミングも明確に予測でき、それまでの間に離婚後の生活などについて真剣に検討してくれることが期待できます。
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2 離婚の際の離婚条件についても約束しておくこと
実際に離婚する際には、話し合って取り決めるべきことが多くあります。
詳しくは、
【保存版】これで完璧!離婚のときのお金・財産分与の基礎知識」、
もご参照ください。
「将来離婚する約束」をしたとき、離婚条件についてもしっかりと約束されていたとすれば、その「将来離婚する約束」は真摯なものであったと認められます。
例えば、
① 子供が中学校を卒業する令和4年3月末に離婚する。
② 子供の親権者は相手とする。
③ 養育費は適正な金額を支払う。
④ 離婚後も子供が頼ってきた時は子供のために誠実に対応する。
⑤ 財産分与については、離婚時(離婚前に別居した時は別居時)を基準に分ける。
⑥ 離婚後の生活の保障として解決金100万円を支払う。
⑦ 年金分割の手続きに協力する。
のような約束であれば、「①」のみが取り決められている場合よりも、より真剣に「離婚する」ということを考えた上で約束したものであったことが認められます。
詳細で具体的であればあるほど、離婚訴訟となったときに裁判官に離婚の約束の真剣さが伝わると考えられますので、離婚訴訟上もこちらに有利な事情となります(真剣に離婚の話し合いが行われたという事実が、夫婦関係がもはや元に戻らないことを示すからです。)。
ただし、詳細な約束は、将来いざ離婚をしようとする際に、ご自身の首を絞めてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
ここで約束しまった場合には、将来実際に離婚する際にも、その約束した条件を自分に有利に変更することが極めて困難となります。
例えば、将来離婚するに際して、やっぱり子供の親権が欲しいとか、やっぱり解決金は払いたくない(金額が高すぎる)と考えたとしても、よほどのことがない限り相手は応じないでしょう。
3 「将来離婚する約束」は書面に残しておくこと
口頭での約束に過ぎない場合、相手はそのような約束をした事実自体を忘れる(忘れたことにする)かもしれません。
また、詳細な約束内容は覚えていないと言われてしまうかもしれません。
口頭での約束に過ぎない場合には、後々になって裁判所に「将来離婚する約束」をしていたとの事実を証明するのが難しくなります。
そのため、「将来離婚する約束」は、口頭での約束ではなく、明確に書面を取り交わしておくことが重要です。
さらに言えば、例えば弁護士が作成した書面に双方当事者が署名押印しているとか、公正証書を作成しているとかいった場合の方が、より「真剣に」離婚するということを考えた上で約束したものであることが認められます。
その場合、離婚訴訟上もこちらに有利に傾きます。
そこまですることは難しいとしても、「将来離婚する約束」が成立していることを書面やメール、ラインなどで残しておくことは極めて重要です。
なお、こちらから相手に対してメールやラインで一方的に送信しただけでは約束が成立した証拠とはなりませんので、相手がそれに承諾した旨の返信もしっかりと残しておく必要があります。(ラインでは、相手の送信部分を消去されるケースがまま見られますので、スクリーンショットやバックアップなどで保存しておくことを強くお勧めします!)
4 離婚届を作成しておくこと
「将来離婚する約束」をした際に離婚届を作成していたとしても、離婚届を提出する際に相手に離婚意思がない(離婚する気がない)場合は、その離婚の届出は無効になります。
離婚することは夫婦で合意しているけど、今ではなく、将来離婚する約束をしたんです。これは意味はあるんでしょうか・・・? こんなご相談をお受けすることがあります。 離婚は、法的な手続きですから、将来離婚をすることについて約束[…]
ただ、実際に必要な箇所を全て記載した離婚届を作成していたということであれば、相手が「離婚する約束」をした際に真剣に離婚することについて考えた上で約束したものであることが認められます。
そのような場合も、離婚訴訟となったとき、裁判官に離婚の約束の「真剣さ」が伝わると考えられますので、こちらに有利に傾くでしょう。
<まとめ>
「将来離婚する約束」をする際は、以下のポイントを意識しましょう。
その将来の時点は、相手の意思・行動に関わらないタイミングで、そのタイミングが明確に予測・確定できるものであるようにしよう!
離婚条件についてもできるだけ具体的に決めておこう!
その約束を公正証書や書面に残しておこう!メールやラインといった形に残るものでも、ないよりは全然マシ!
離婚届を作成したという事実があればよりベター!
「将来離婚する約束」があったとしても、結局は、離婚するはずの「将来」が到来した際に相手が離婚に応じなければ離婚はできません。
離婚するはずの「将来」が到来したとき、相手が約束通りに任意に離婚に応じるのであれば一番良いのです。しかし、相手に離婚を拒否されて、相手と一から話し合いせざるを得ないこともあります。
しかし、本文で記載したようなポイントを満たした「将来離婚する約束」が存在してれば、格段に相手に離婚に応じてもらえる可能性が広がるはずです。
ぜひ、ご自身の離婚問題の参考にしてくだされば幸いです。