不貞をしてしまったが、離婚がしたい。別居に踏み切るべきかの判断ポイント3つ!

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として2015年に設立。翌年東京にも事務所開設。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回は、妻以外の女性と関係を持ってしまった男性が、妻との離婚を望む際に、別居に踏み切るかどうかを検討する際のポイントを3つ、お伝えしたいと思います。

1 不貞をした場合における夫の立場(有責配偶者からの離婚請求)

多くの不貞問題で、不貞は婚姻関係を破綻させる原因というよりは、婚姻関係が破綻した結果であることも多いでしょう。このことは、実際に離婚実務に携わっている弁護士であれば、かなりの程度納得できることかと思います。

しかし、裁判所というのは証拠主義です。そして、いかに婚姻関係が悪化し、家庭内の不和が大きい場合でも、それがそのまま証拠として残るということは乏しいです。常に録音や録画がなされているわけではありませんから、不貞前の家庭状況がどのようなものであったか、証明できるケースは少ないです。そのため、夫の不貞があるケースでは、それ以前の夫婦関係がどのようなものであったか証明できない限り、(例えば日頃から妻から暴言を吐かれ続けていた場合でも)不貞をした夫が悪いと判断されてしまいます。

婚姻関係を破綻させた原因が夫の不貞にあるとされた場合、夫は、いわゆる有責配偶者という立場になります。その場合、夫がいかに妻と離婚したい場合でも、妻が応じてくれない限り、すぐに離婚ができるわけではありません。

有責配偶者からの離婚請求を裁判所が認めてくれるためには、大きく3つの条件があります。

①長期間に渡り別居に至っていること。
②配偶者との間に未成熟子がいないこと。
③離婚により配偶者の生活が過酷な状況に陥らないこと。
(最高裁大法廷昭和62年9月2日判決参照)

これらの条件が整わなければ、夫からの離婚請求は、権利の濫用として棄却されてしまいます。

以上の三つの条件のうち、最も問題を孕むのは、①の別居期間です。不貞がなければ、3年から5年程度の別居期間で離婚ができるはずが、不貞があることで、5年から10年程度の別居期間(もしくはそれ以上)がなければ、離婚は認められませんこの運用が公正かどうかはともかく、このことを前提に、有責配偶者である夫は、別居を行うべきかどうか、いつのタイミングで行うべきかどうかを検討しなければならないのです。

<参考記事>

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2 別居に踏み切るかどうかのポイント3つ

(1)妻も離婚の話し合いに乗ってくれる場合は無理して別居しなくて良い

別居に踏み切るかどうかのポイント一つ目は、妻が離婚の話し合いに乗ってくれるかどうかです。

いざ別居を行うと、離婚の話し合いができる可能性が乏しくなります。

月に一回程度、妻がファミレスでの話し合いに来てくれるなどであれば良い方です。また、話し合いを始められたとしても、多くの場合は半年から年単位の期間がかかるはずです。

また、いざ別居になれば、妻は夫から生活費(婚姻費用)をもらえますから、離婚をする意味を乏しく感じ、離婚にはより一層応じづらくなる可能性もあります。

したがって、もし妻が同居をしている現時点で離婚の話し合いに乗ってくれているのであれば、その話し合いでなんとか離婚の話を進めていくのがベターと言えるでしょう。

ただし、話し合いが決裂して、結局裁判になる場合、長期の別居期間がなければ離婚ができません。したがって、話し合いが1年を超えてもなお決着しない場合は、別居期間を作るために、別居に踏み切る必要性が高くなってくるでしょう。(離婚に携わる法律家の間では、「離婚のために別居期間を稼ぐ」という言い方をします。)

(2)住宅ローンと婚姻費用のダブル負担ができない場合は別居が困難

別居後、夫の収入が高ければ、妻に対して生活費(婚姻費用)を支払わなければなりません。そして、この時、夫は妻が居住をしている自宅不動産の住宅ローンを支払っているケースも多いでしょう。

婚姻費用の金額を決める際、夫が自宅不動産の住宅ローンを負担している場合、妻の住居関連費(妻の収入に応じますが、月額2万円〜5万円)を控除できることが多いです。

ところが、夫が有責配偶者である場合、婚姻費用の金額から、妻の住居関連費を控除することは認められない傾向にあります

そのため、有責配偶者である夫は、

①妻への婚姻費用
②自宅不動産の住宅ローン満額
③自分の生活費

の3つを負担しなければならなくなります。これは相当にしんどく、現実的に負担が不可能なこともあるでしょう。

この中のどれかをどうしても諦めなければならないとすると、②の自宅不動産の住宅ローンになると思います。①の婚姻費用は自己破産をしても免れることはできませんし、③の自分の生活費は生きていくために不可欠だからです。

住宅ローンの支払いをやむなく止めたとき、妻に経済的な余裕があれば妻が一時的に負担をすることになるケースは多いです。しかし、そうでなければ、住宅ローンの支払いが遅滞に陥ることになりますその後は抵当権が実行されて不動産を手放すなどの事態が想定されます。

夫の仕事内容次第では、住宅ローンの支払いの遅滞が生じることは絶対に避けなければならないケースもあるでしょう金融機関に勤めているケース、金融機関から借り入れがある自営業者であるケースなど、さまざまです。したがって、絶対に住宅ローンの支払いの遅延ができない場合で、かつ、婚姻費用と住宅ローンのダブル負担も金銭的に不可能な場合は、別居に踏み切ることは適切ではないということになります。その場合は、徹底的な家庭内別居を行うなど、イレギュラーな方法で離婚ができる状況を模索する必要が出てくるでしょう

なお、以下の記事も参考にしてください。

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今回紹介する判例は、夫が不貞をして自宅を出た場合、婚姻費用の算定において、夫が自宅の住宅ローンを負担している事実を考慮することは認められないとした東京家裁立川支部の決定です。1 婚姻費用の算定で考慮される住宅ローン(通常の場合)最近[…]

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(3)不貞相手との間に子供がいるかどうか

不貞相手との間にお子様がいる場合は、幼い子供のケアのために、別居に至るという判断もありうると思います。

もちろん、妻との間にも子供がいるケースはあると思います。そういう場合は慎重に検討を行う必要があります。どちらかといえば、子供は幼い方が手がかかります。

なお、有責配偶者からの離婚請求に関して判断を下した最高裁昭和62年9月2日判決は、一般的に有責配偶者からの離婚が認められるべきかどうかの判断の中で、

夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等が斟酌されなければならず

と述べています。不貞相手との間に子供がいる場合は、そうでない場合よりは、離婚が認められやすい方向に裁判所の判断が傾くことになります

今回の弁護士からのアドバイス

有責配偶者の夫が、別居に踏み切るべきかの判断に際しては、、、、

☑️妻が離婚の話に応じてくれるかどうかが重要です!

☑️住宅ローンを負担している場合でも、妻への婚姻費用から妻の住居関連費を控除できない可能性が高いです!

☑️不貞相手との間に子供がいるかどうかも考慮する必要があります!

☑️どうしても別居ができない場合は、家庭内別居を徹底させるなど、他の方法を模索する必要があります!

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

不貞をしてしまった多くの方々から相談を受けていますが、ほとんどのケースで、不貞に至る前から配偶者との関係が劣悪だったエピソードをお聞きします。

しかし、夫婦間の細かいやりとり(例えば、口論の内容やその時の配偶者の声の大きさ、配偶者のイラつきの様子や八つ当たり様子など)は、なかなか証拠には残りません。したがって、他の異性に安らぎを求めて関係を持ってしまえば、裁判では、有責配偶者であると一刀両断されてしまう現状があります。

そのため、有責配偶者とされてしまう状況の方が、どのように離婚問題を解決していくか、その参考になればと思い、本文を書かせていただきました。

皆様の離婚問題解決のための一助となりましたら幸いです。

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