婚姻により発生する4つの義務について弁護士が解説!【同居・協力・扶助・貞操義務】

今回は、結婚によりどのような義務が生じるのか解説します。

結婚後、婚姻関係が悪化し、夫婦はどのような義務を負っているのか、改めて確認をしたいと思った方や、これから結婚しようと考えていて、結婚をするとどのような義務を負うのか疑問を抱いている方は、ぜひお読みください。

1 同居義務

・同居義務の内容

同居義務は、要するに、夫婦は共同生活を送るために同居をしなければならないという義務です。

民法上の根拠規定は以下の通りです。

(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力扶助しなければならない。

実は、この規定は、次に述べる協力義務と扶助義務も含めた包括的な規定です
3つの義務が同じ規定を根拠にしているということになります。

・同居義務の違反があった場合

同居義務は、婚姻関係の基本をなすものです。これを正当な理由なく拒否した場合は離婚事由に該当し、離婚時に慰謝料請求をすることも理屈上は可能になります。

しかし、実際には、同居義務違反を理由に、離婚時に慰謝料請求が認められるケースは稀です。夫婦で喧嘩をした、別々に暮らすことに異議が述べられなかったなど、些細なことで別居すること自体はやむなしと判断されることが通常です。

また、婚姻中、家庭裁判所に対して、同居を命じる旨の審判を申し立てることは可能ですが、それが認められることは稀です。
とりわけ、婚姻関係が破綻した後は、同居義務の履行は命じてもらえません。

(東京高裁平成13年4月6日決定 家月54巻3号66頁)
夫婦の同居義務は、夫婦という共同生活を維持するためのものであるから、その共同生活を維持する基盤がないか又は大きく損なわれていることが明白である場合には、同居を強いることは、無理が避けられず、したがって、その共同生活を営むための前提である夫婦間の愛情と信頼関係が失われ、裁判所による後見的機能をもってしても円満な同居生活をすることが期待できないため、仮に、同居の審判がされ、当事者がこれに従い同じ居所ですごすとしても、夫婦が互いの人格を傷つけ又は個人の尊厳を損なうような結果を招来する可能性が高いと認められる場合には、同居を命じるのは相当でないと解される。

また、仮に申立てが認められ、同居することが命じられたとしても、それを強制執行することは認められません(大審院昭和5年9月30日決定)。

したがって、同居義務は婚姻関係の基本となるものでありつつも、実際にその違反について責任を追及したり、強制することは極めて困難と言うことができます。

2 協力義務

・協力義務の内容

協力義務は、夫婦としての共同生活を協力して営む義務を言います。日々の生活の助け合い、病気の場合の看護、子育てなどが含まれます。同居義務と同じく、民法752条が根拠です。

・協力義務の違反があった場合

同居義務と同様、協力義務の違反についても、離婚事由になったり、慰謝料請求の原因となり得ます。離婚裁判では、不貞行為や悪意の遺棄といった分かりやすい不法行為がない場合であっても、慰謝料が認められるケースがあります。それは、夫婦の協力義務に違反したものと整理できます。

ただし、婚姻中は、この協力義務の履行を求めて具体的な請求や申立てをすることは一般的ではありません。大抵の問題は、婚姻費用の問題(お金の請求)に収斂されますので、出番の少ない義務と言えるでしょう。

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3 扶助義務

・扶助義務の内容

夫婦間での扶助義務は、配偶者の生活水準を自己の生活と同じように保持する義務のことを言います。同居義務や協力義務と同じく、民法752条が根拠です。

実務上は、いわゆる婚姻費用の分担義務という形で運用されます。
同居中であっても、別居中であっても、収入の高い側は、配偶者の生活水準を自己の生活と同じように保持する必要があります。

さらに、扶助義務は、同居義務や協力義務と民法の規定を根拠とするにも関わらず、婚姻関係が破綻した後も、戸籍上夫婦である限り、継続するのが大きな特徴です。

(東京高等裁判所令和4年10月13日決定(判タ1512号101頁))
婚姻費用分担義務は、前述したように婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力関係の存在という事実状態から生じるものではないから、婚姻の届出後同居することもないままに婚姻関係を継続し、その後、仮に抗告人(妻)と相手方(夫)の婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態に至ったとしても、前記法律上の扶助義務が消滅するということはできない。

・扶助義務に違反があった場合

相手配偶者が婚姻費用の分担を行わない場合は、裁判所に対して婚姻費用の分担を求めて申し立てを行うことが可能です。

裁判所は、双方の収入金額を元に、家族構成に鑑みてどちらがどちらに対して婚姻費用の支払いを行うかを決めます。裁判所が利用している具体的な指標が表として公開されていますので、ご確認ください。

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

裁判所で合意したり決定されたりした金額は、強制力を持ちます。相手配偶者が支払いをしない場合は、相手配偶者の財産や収入を差し押さえることが可能になります。

4 貞操義務

・貞操義務の内容

貞操義務は、他の異性と性的関係を持ってはならないという義務です。
法定離婚原因を定める条項が、不貞行為を離婚原因の一つに挙げていることから、夫婦間において貞操義務があることが認められます。

(裁判上の離婚)
民法第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

ところで、扶助義務は婚姻関係が破綻しても存続するということを先ほど紹介しましたが、貞操義務は逆です。つまり、婚姻関係が破綻すると、貞操義務は消失します。

(最高裁平成8年3月26日判決 民集50巻4号993頁)
甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。けだし、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となる(後記判例参照)のは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。

そうすると、婚姻関係破綻後は、たとえば妻が他の男性と性的な関係を持っていても、夫に対して扶助義務の要求、つまり婚姻費用の分担を請求することが認められそうです。

もっとも、婚姻関係の破綻や別居の原因が妻の不貞にある場合は、裁判所は妻による婚姻費用請求を権利の濫用として制限する(養育費の請求を認めるにとどめる)というのが通例になっています。

(東京高裁平成29年9月4日 ウエストロー・ジャパン搭載)
配偶者以外の者と男女関係を持つことは、夫婦間の信頼関係を破壊する背信的行為といえ、そうした背信的行為に及んだ者が、別居中の配偶者に対し、婚姻費用として、監護している子の養育費分にとどまらず、自らの生活費に係る部分を加えて、婚姻費用の支払を請求することは、信義に反し、権利濫用に該当する行為というべきである。

・貞操義務に違反があった場合

貞操義務違反、つまり、不貞行為が存在した場合、離婚原因になることはもちろん、慰謝料請求を行うことも認められます。

慰謝料請求は、離婚する場合だけでなく、それ以前の段階においても請求が可能です。金額としては、概ね100万円から300万円の間で、別居や離婚の有無などの事情によって定められます。

まとめ

☑️結婚により生じる義務は、①同居義務、②協力義務、③扶助義務、④貞操義務の4つです!

☑️このうち、①同居義務と②協力義務については、婚姻中に強制する手段はほとんどありません。

☑️③の扶助義務は、婚姻関係が破綻しても継続します。

☑️④の貞操義務は、婚姻関係が破綻すると消滅します。

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