
こんなご相談をお受けすることがあります。
離婚は、法的な手続きですから、将来離婚をすることについて約束をしてもあまり意味は無いように思えますよね。
でも、そんなことはありません。
今回は、将来離婚する約束とはどんなものなのか、そしてどんな意味があるのかについて、説明をしたいと思います!
どうぞ最後までお読みください。
1 「将来離婚する約束」の具体例
「将来離婚する約束」とは、例えば、以下のような約束が考えられます。
「子供が中学校を卒業したら」 → 離婚する。
「今後2年間共同生活を続けてもそれで関係修復ができなければ」 → 離婚する。
「妻が就職して収入が安定して離婚後の生活の目処が立ったら」 → 離婚する。
「夫に新たに一緒になりたい(結婚したい)人ができたら」 → 離婚する。
離婚するための条件(括弧内の条件)は様々です。
ただ、このような約束がなされるに至った背景には、一言では言い表せない事情があるでしょう。
大抵の場合は、離婚の話し合いが難航した結果、最終的に上記の「将来離婚する約束」に至る例が多いです。
2 離婚する約束の「将来」が到来したのに離婚できない!?
そもそも、夫婦のどちらか一方が離婚に応じない場合は、裁判所の離婚判決を得ない限りは離婚することができません。
そのことは、離婚する約束の「将来」が到来した(約束した離婚するための条件が成就した)としても、変わりはありません。
すなわち、実際に離婚するはずの「将来」が到来したとしても、その時に相手が離婚に応じない場合には、結局は裁判所の離婚判決を得ない限りは離婚することができません。
そして、裁判所は、「『将来離婚する約束』が存在し、そこで決められた離婚するための条件が成就しているのであるから、離婚判決をする!」とは考えてはくれません。
裁判所は「将来離婚する約束」は法律上の効力を持たないと考えています。
結論としては、結局のところ、相手が実際に離婚する時に離婚に応じない限り離婚はできませんし、裁判所も「将来離婚する約束があった」というだけでは離婚判決はしてくれません。
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なお、この結論は、「将来離婚する約束」をした際に必要事項を全て記載した離婚届を作成していたとしても変わりません。
相手が約束していたはずの離婚するための条件が成就した時に相手に離婚意思がない(離婚する気がない)場合は、相手は役所に離婚届の不受理申出をしているかもしれません。
その場合は、役所は離婚届を受理してくれません。
また、仮に役所が離婚届を受理したとしても、その際に相手に離婚意思がない(離婚する気がない)場合は、法的には、その離婚の届出は無効となると考えられています。
その場合は、形式的には離婚届が提出された時点で離婚は成立しますが、その離婚は無効ですし、たとえ再婚していたとしても再婚の取消事由ともなってしまいます。
3 「将来離婚する約束」にはちゃんと意味がある!
さて、離婚に応じない相手と離婚するためには、最終的には離婚訴訟で勝訴しなければなりません。
そして、裁判所は、法定離婚原因が存在すると判断したときに、離婚判決を出します。
法律上の離婚原因として挙げられているものは以下のとおりです(民法770条)。
1 配偶者に不貞な行為があったとき。
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5 その他婚姻を継続し難い、重大な事由があるとき。
ここでポイントとなる法定離婚原因は「5 その他婚姻を継続し難い、重大な事由があるとき」です。
裁判所は、夫婦の間の様々な事情を総合考慮して、婚姻関係が破綻し復縁の可能性がないと認められる場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」として、離婚を認める傾向にあります。
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ここで、「将来離婚する約束」の出番です!
「将来離婚する約束」がある場合は、「その約束がされた時点において、夫婦間で、条件が成就したら離婚するとの合意が存在していたこと」という事実を証明できます(もちろん、そうした約束があったことを書面やメール・ラインで残しておくことが必要です!)。
そして、そもそも、そのような将来離婚する約束をした夫婦が円満であるはずはなく、約束をした時点で既にかなり険悪なものであった(婚姻関係が破綻していた、ないし破綻に瀕していた)ことが推測されます。
それに加えて、約束した離婚するための条件が成就している(相手が離婚してもいいと考えていた状況が到来している)という状況にもなっているでしょう。
「将来離婚する約束」には、離婚訴訟において、裁判官に対して、合意の時点ですでに婚姻関係が悪化しており、さらに時期が経過したという事情をしっかりと分かってもらえるという効果があります。
つまり、「将来離婚する約束」は法律上の効力は持ちませんが、離婚判決を勝ち取りやすくなるということですね。
なお、これは離婚訴訟の話で、和解や合意で離婚することはもちろん可能です。
相手も、「将来離婚する約束」により、離婚訴訟となった場合に離婚判決が出される可能性が高いと分かれば、離婚訴訟となる前に話し合いや調停で離婚に応じるかもしれません。
すなわち、「将来離婚する約束」は、相手との話し合いや調停で相手に離婚に応じさせる説得の材料の一つになり得ます。
離婚調停について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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弁護士のホンネ
本文で記述したように、「将来離婚する約束」はその「将来」に確実に離婚できる効果はありませんが、離婚訴訟で有利な事情となるとの効果があります。
そのため、相手がどうしても離婚に応じてくれないときには、次善の策として、相手に「将来離婚する約束」を持ちかけるとの手段が考えられます。
相手としても、今ではなく「将来」の離婚であれば、その約束に応じるかもしれません。
どうしても今すぐに離婚したいのではなく、また今すぐに離婚しようとしてもそれができない事情がある場合には、将来の離婚(相手との離婚交渉)に備えて、事前に「将来離婚する約束」をしておくこともあり得るでしょう。
もちろん、どのような内容の「将来離婚する約束」にするべきかどうかは具体的な事情によって千差万別ですし、むしろそのような約束をして来たる「将来」を待つのではなく今すぐに調停などの手段で早期離婚成立を目指した方が良い場合も多いです。
相手が離婚に応じない場合に取り得る手段は色々とありますので、相手との離婚交渉が暗礁に乗り上げた時は、そういう案件の経験豊富な弁護士の無料相談などを利用して対処法を探ることをお勧めします。