面会交流調停では日時や場所を具体的に取り決めるべき?

 「面会交流について調停で取り決めたのに、相手が実行してくれません」ということはよくあります。その際、「ではその調停条項を見せてください」と言って調停条項を見ると、日時や場所が具体的に取り決められていないため、これでは強制的に実現させることはできないことがあります。これは、本人だけで調停を行ったときのみならず、弁護士が調停に入っていたとしても実際に起こることです。

 ではなぜ、弁護士が調停に入っていたとしても、強制的に実現できないような条項になっていることがあるのか、絶対に日時や場所は具体的に取り決めるべきなのかについて解説していきます。

 なお、面会交流を強制的に実現させる条件については、「面会交流を強制的に実現させる条件とは?」(https://riko-net.com/divorce-children/implementation-of-visitation)で紹介しております。

1 面会交流の取り決め方

 面会交流の取り決めは、①話し合い、②面会交流調停、②面会交流審判のいずれかの方法で行います。

 まず、夫婦間での話し合いで決めれば、その内容を書面などにして合意しておきます。しかし、話し合いで決まれなければ、面会交流調停の申立てを行い、それでもお互いに合意できなければ、面会交流審判で裁判官に具体的な条項を決めてもらうという流れになります。

 もし、話し合いで決まるのであれば、夫婦関係もあまりこじれてはいないはずなので、後から話し合いで柔軟に条項を修正していくことも容易でしょう。そのため、最初の段階で具体的な日時場所などの条項を決めすぎてそれに縛られるより、ある程度抽象的な内容で決めておき、子供の成長に合わせて後から柔軟に対応できるようにしておく方が良いということになります。

 しかし、面会交流調停を申立てるということは、夫婦関係がある程度こじれているということでもあります。そのため、相手が後からの話し合いに応じてくれなかったり、相手が条項通り実行してくれないということが起こり得ます。このようなときに、具体的な日時場所などの条項を決めておいておかなければ、面会交流を強制的に実現することができず、全く子供に会えないという事態になってしまうのです。

2 面会交流を強制的に実現させる方法

 面会交流について条項が取り決められたとしても、相手がこれに従わない場合、とれる手段としては履行勧告間接強制があります。しかし、履行勧告は家庭裁判所調査官が相手に手紙を送ったり、電話をしたりして説得するだけなので強制力はありません。そのため、最も有効な方法は間接強制ということになります。

 間接強制とは、相手が裁判所で決まった面会交流の条件に従わない場合に、相手に毎回、間接強制金を支払わせて負担を課す制度です。条項で具体的な日時や場所などが決まっていれば、この間接強制という制度を使うことができ、これにより相手に毎回心理的な圧迫を加えて、面会交流の実施に協力するよう促すことができます。

 その他、面会交流の条件に従わない相手に対して、損害賠償請求をして心理的な圧迫を加えることができる場合もありますが、これは一度きりなので毎回間接強制金を課すことができる間接強制の方が有効といえるでしょう。

なお、面会交流を強制的に実現するための手段は「子供との面会交流を強制的に実現するための手段とは?弁護士が説明!」(https://riko-net.com/divorce-children/enforce-visitation-rights)で紹介しているので、ご参照ください。

3 なぜ、調停で日時や場所を具体的に取り決められないことがあるのか

 ここまで見てきて、ではなぜ裁判所や調停委員は具体的な日時や場所を決めるように提案してくれないのかという疑問が湧くと思います。

 これは、条項を話し合いで決める場合のところで述べたように、裁判所は、ある程度抽象的に文言を決めておいて、子供の成長に合わせてある程度柔軟に決めていってほしいという考えをもっているからです。そのため、裁判所の方から具体的な内容を提案してくれることはまずありません。そして、間接強制が可能かについても親切に教えてくれることもないため、間接強制できないような具体的でない内容の条項で合意してしまい、相手が実行してくれないという段階になって初めて強制的な実現ができないと気づくことになるのです。

 では、本人のみの調停ではなく、弁護士がついていればこのようなことは起こらないのではないかと考えるかもしれませんが、そうでもありません。これは、弁護士自身も柔軟に対応できる条項にしておいた方が良いと考えていたり、相手が納得するような内容でまとめることを優先していたり、間接強制できる条件をそこまで詳しく把握していないという場合があるからです。

 そのため、将来、相手が条項通り面会交流を実行してくれない可能性があるのならば、面会交流について具体的な日時や場所を条項に入れるように積極的に主張していくべきです。

 なお、注意しておきたいのは、具体的な日時や場所を決めていたとしても、面会交流に第三者機関を入れた場合は間接強制ができない点です。

 面会交流の第三者機関については、「面会交流の第三者機関って??夫婦間で直接子供の受け渡しをできない時は」(https://riko-net.com/divorce-children/third-party-organization)で紹介しておりますので、ご参照ください。

4 まとめ

 このように、面会交流の条項をある程度抽象的にしておくことにも、後から柔軟に変更できるという点でメリットがあるものの、相手が実行してくれない場合、何も強制的に実現させる手段がないという事態になってしまいます。そのため、将来的に相手が実行してくれない恐れがあるときは、間接強制できるほどの具体的な条項にすることを強く主張していくべきです。そして、実際に間接強制できる条項になっているか不安な場合は、離婚について経験が豊富な弁護士のチェックを受けましょう。

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 間接強制ができたとしても、相手がそれに痛みを感じず徹底的に拒否した場合には、強制的に実現させることはできません。しかし、間接強制ができなければ、相手へプレッシャーをかけることすらできません。面会交流は、相手において何らかのメリット(不利益を回避するというものも含みます。)がなければ、ほとんど実施が見込めない、という風に理解しておくと良いと思います。人間の行動はすべて同じ理屈なのです。
 ここまで、具体的な条項にすることの大切さを述べてきましたが、どんな時でも必ず具体的な日時場所を決めるべきというわけではなく、そのことにこだわって離婚自体の調停がまとまらないということになれば全体として当事者の不利益になる場合もあります。よって、全体的に見てどのような内容で合意した方がメリットがあるか適切に判断していくことも大切でしょう。

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