誰しも、離婚をすると決めたならば、できるだけ早く話し合いで済まし、裁判などにはもって行きたくないものです。
しかし、当事者のどちらかが、パーソナル的に問題があったり、考え方に問題があると、合理的な決断をせず、話し合いで決着しなくなります。
今回は、どのような場合に、離婚が話し合いでは決着せず、裁判に移行してしまうのか、お話しします。
1 細かいところにこだわり森を見ない
細かいところにこだわりすぎて、全体的な利害に考えが至らず、合意ができなくなるということは多くあります。
財産分与や養育費など、お金が絡む場合によく見られます。
大事なのは、相手に対して最終的にいくら払うのか、またはいくら貰うことになるのか、です。したがって、それぞれの項目ごとの細かい金額に神経質になりすぎると、解決までに時間がかかり、その間に相手の考えが変わったりするなどして、結局話し合いで決着がつかなくなることがあります。
もちろん、養育費などは、月額1万円違うだけで、10年で120万円の差につながるので、そういう部分は慎重に対応するべきです。
結局、神経を使うべき項目か、そうでもない項目かの判断はとても重要なのですが、そうでもない項目の方が目立つことが多いので、それに気を取られないようにしたいところですね。
2 相手の言動に反応して実益を取らない
これは本当によくあります。
相手の言動がムカつくから応じられない、というものです。
子供ではないのですから、合理的に冷静に判断をしたいところですが、当事者になると、やはり感情が大きな邪魔をし、判断を鈍らせます。
別居後の荷物のやり取りがスムーズにいかない、相手から謝りの言葉がない、メールの文面のこの部分が気に入らないなど、きっかけは数多あります。
こうした感情で邪魔されないよう、双方が弁護士を代理人として立てるのが有効です。
しかし、相手が、キレやすい、激昂しやすい、精神が不安定などのパーソナルの問題をもっている場合、相手自身は弁護士への依頼を行わない傾向にもありますので、厄介です。
その場合は、調停などの裁判所の手続きを利用して、公の第三者を介入させて解決を図ることが選択肢になってくるでしょう。
3 味方であるはずの弁護士と対立する
依頼した弁護士と考えや関係が対立する場合も、結局は早期の解決が困難になります。
弁護士は、数十件から数百件の離婚問題を見てきています。今の状況がどのフェーズにあるのか、どういう筋道が今後考えられるのか、それぞれの道筋の可能性はどれくらいかというのを経験的に理解しています。
もちろん、そのあたりをスムーズに説明してくれる弁護士が良いですが、弁護士によっては、そこを丁寧に説明してくれなかったり、あるいは依頼者側のパーソナルの問題で意思疎通がうまくいっていない場合もあるでしょう。
そうすると、当事者は、自分が今どの状況にあるのか、これからどういう道筋をたどっていくのか、不安になります。
そしてその不安は、相手から良いようにされている、負けているのではないかとの考えをもたらします。
負の感情は、人を他罰的にさせます。相手のせいだ、いや、もしかしたら依頼している弁護士のせいかもしれないなどと考え、弁護士と対立をしてしまったり、解任をするなどして、結局解決が遠ざかるというパターンがあります。
大変もったいない状況ですが、しっかりと弁護士と打ち合わせの時間を持ち、意思疎通を図ることで解消できるはずのものです。もともと離婚問題は負の感情を持ちやすいものです。冷静に離婚問題と向かい合うことを心がけましょう。
弁護士のホンネ
「負の感情に支配される」ということは、離婚問題に限らず、仕事でも、人間関係でも、あらゆることを乗り越える際の足枷になります。
とりわけ離婚問題は、人生で最もストレスのかかる出来事ですので、こうした問題に携わっている間は、何らかの気晴らしを定期的に行う必要があります。もっとも、それを他の異性に求めると、より離婚問題が拗れ、不利益になるケースもあるので、お勧めしません。
離婚後を見据えて、新しいことにチャレンジしたり、旅行にいって見識を広げたり、関心のなかった分野の本を読むなど、さまざまな気晴らし方法があるはずです。ぜひ、心掛けていただければと思います。