子供との面会交流を強制的に実現するための手段とは?弁護士が説明!

妻が子供を連れ去って別居が開始された後、子供に会いたくても妻が頑なに子供と会うことを拒否する場合があります。

このような場合に、子供と会うためにどのような手段があるでしょうか。

子供と会わせたがらない妻を説得する!ダメなら裁判官が決める!

子供にとっては不幸なことなのですが、子供を連れて別居した後に夫に子供を会わせない妻は、残念ながらよくいます。

このような場合には、面会交流という制度を活用し、子供と会う機会を確保することが考えられます。

面会交流という制度の詳細は「子供が嫌がっても夫の求める面会交流は認められる?」にてご紹介しています。

面会交流制度を簡単にいうと、

①子供と会う条件を妻と話し合って決める

妻と話し合って子供と会える日時や場所などの面会交流の条件を決めることができれば、それに越したことはないでしょう。

②子供と会う条件を面会交流調停を利用して決める

妻と話し合って決めることが難しければ、面会交流調停という制度を利用して、裁判所において、調停委員・家庭裁判所調査官・裁判官を交えて、面会交流の実施に応じるよう妻を説得します。

しかし、面会交流調停はあくまで妻と話し合って合意を形成するための制度ですので、妻が面会交流の実施に頑なに応じない場合もあります。

③子供と会う条件を裁判官が審判で決める

面会交流調停を実施しても妻が面会交流の実施に応じなければ、面会交流審判という制度を利用して、裁判官に面会交流の日時、場所、方法などの面会交流の条件を決めてもらうことができます。

このようにして、妻が頑なに面会交流の実施に応じない場合には、最終的には裁判官が面会交流の条件を判断することとなります。

裁判官は余程のことがない限り面会交流を実施する方向で決めてくれる!

面会交流を実施することは、子供の健全な成長のために望ましいとされており(法律用語では、「子の福祉に資する」という言葉が良く使われます。)、監護親(子供と生活している親)には、子供の福祉のために、非監護親(面会交流を求めている親)と子供が面会交流を実施することができるように努力する義務があります。

裁判所も面会交流は原則として実施するべきであるとの考えで運用されています。

そのため、裁判官は、余程のことがない限り、最終的には審判で面会交流を実施する方向で判断してくれます。

なお、裁判官が例外的に面会交流の実施を否定し得る場合については、また別の機会に解説します。

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妻が裁判所で決めた面会交流の条件にも従わない場合

裁判所で面会交流の条件を決めたにも関わらず、妻がなおも面会交流の実施を拒否する場合、どのような手段を取ることができるでしょうか。

このような場合は、裁判所から妻に対して面会交流を実施するよう指導する「履行勧告」という制度を利用したり、間接強制という強制執行の制度を利用したり、妻に損害賠償を請求したりすることで、面会交流の実施を強制的に実現していくことが考えられます。

以下、順番に説明します。

⑴裁判所から妻に対して面会交流を実施するよう履行勧告をしてもらう!

履行勧告とは、家庭裁判所に、裁判所で決めた面会交流の条件に従わない妻に対して、ちゃんと決まった通りに面会交流を実施しなさいと勧告してもらう制度です。

履行勧告の流れは、通常の場合、以下の通りです。

  1. 家庭裁判所調査官が、面会交流の実施に応じない妻に対して、裁判所で決められた条件での面会交流を実施するよう求める文書を送付する。
  2. それでも妻が面会交流の実施に応じない場合には、家庭裁判所調査官が妻に直接電話をかけて面会交流を実施するよう説得する。

ただし、履行勧告の制度は、あくまで妻に対してちゃんと面会交流の実施に応じるように説得・勧告するにとどまるものであり、残念ながらそれ以上の強制力はありません

⑵間接強制という制度を利用して面会交流の実施を強制する!

お金の支払いや、建物の明け渡しなどであれば、強制執行手続きを実施することで、裁判所が決めた内容を強制的に実現することができます。

しかし、面会交流の実施については、執行官が決められた日時になったら嫌がる妻から子供を無理やり引き剥がして連れ来ることはしてくれません。

では結局、妻が従わなければ面会交流の実施はできずじまいになるかというと、そうではありません。

面会交流の実施については、間接強制という制度を利用することで、妻に面会交流の実施を強制することができます

間接強制とは、妻が裁判所で決まった面会交流の条件に従わない場合に、妻に夫に対して間接強制金を支払わせるという負担を課す制度です。

イメージとしては、裁判所から妻に対して「決められた面会交流に応じない場合には、夫に対して1回に応じないごとに5万円支払え。」などと命じてもらう制度です。

この制度を利用することで、妻に心理的な圧迫を加えて、面会交流の実施に協力するよう促すことができます。

ただし、裁判所が間接強制をしてくれるためには、「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けることがないといえる場合」である必要があります(最高裁平成25年3月28日決定)。

そのため、間接強制の制度を利用しようとしても、裁判所から「監護親がすべき給付の特定に欠ける」との理由で間接強制が認められないこともあります。

その場合には、間接強制ができるだけの具体的な面会交流の条件を定めるために、改めて面会交流の調停・審判を行う必要があります。

※間接強制の可否についてより詳細には「面会交流を強制的に実現させる条件とは?

なお、間接強制金は3万円〜5万円程度であることが多いです。

ただ、間接強制金については、直近の裁判例では間接強制金が20万円とされた例(大阪高等裁判所平成30年3月22日決定)や100万円とされた例もあります(東京家庭裁判所平成28年10月4日決定)。

100万円とされた例についてはその後に東京高等裁判所で30万円にまで減額されてしまいましたが(東京高等裁判所平成29年2月8日決定)、それでも面会交流を拒否することに対するプレッシャーは相当なものでしょう。

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⑶妻に損害賠償を請求することで面会交流の実施を強制する!

裁判所で決まった面会交流の条件に従わない妻に対して、損害賠償請求をすることができる場合があります。

実際に損害賠償請求が認められるかどうかは具体的な事情により判断が異なりますが、重要なことは実際に損害賠償請求が認められる場合があるということです。

妻としても、面会交流を拒否することにより損害賠償を負わなければならない可能性があると分かれば(これは相当なプレッシャーです)、面会交流の実施に協力せざるを得ないこととなると期待できます。

以下では、実際に損害賠償請求が認められた裁判例を紹介します。

ア 静岡地裁浜松支部平成11年12月21日判決

この事案では、裁判所は、調停で決まった面会交流の条件を守らなかった妻の行為は、「原告(夫)の親としての愛情に基く自然の権利を、子たる一郎の福祉に反する特段の事情もないのに、ことさらに妨害した」ものであって、不法行為に該当すると判断し、それによって夫の被った精神的損害に対する慰謝料として、500万円の損害賠償請求を認めました。

なお、この事案では、裁判所は、面会交流の意義について、「家族の社会生活における意義」にまで考察を遡らせ、詳細に分析・検討しています(実際の判決文の記載については、末尾の「弁護士のホンネ」ご参照)。

イ 横浜地方裁判所平成21年7月8日判決

この事案では、裁判所は、妻が調停で決まった面会交流の条件を守らなかった行為が債務不履行に該当すると判断し、それによって夫が被った精神的損害に対する慰謝料として、70万円の損害賠償請求を認めました。

また、この事案では、裁判所は、「被告(妻)が本件合意に係る面会交渉を拒否した行為は、原告(夫)の面会交渉権の侵害として不法行為を構成する」とも判断しています(ただし、上記の「債務不履行に基づく損害を上回る損害の発生を認めることはできない」と判断し、上記の債務不履行に基づく損害賠償に加えて、別途不法行為に基づく損害賠償を認めることはしませんでした。)。

ウ 熊本地裁平成27年3月27日判決

この事案では、裁判所は、調停で決まった面会交流の条件に従って面会交流の具体的日時・場所を定めるための協議に誠実に対応しなった妻(及び妻の代理人弁護士)の行為は、夫の面会交流権を侵害するものであり、夫に対する不法行為に該当するとして、20万円の損害賠償請求を認めました。

ただし、この事案では、その後に福岡高等裁判所で不法行為が否定されてしまいました(福岡高裁平成28年1月20日決定)。

なお、この事案では、調停で決まった面会交流の条件は、詳細に取り決められていたものではなく、「月二回程度(原則として第二、第四土曜日)の面会交流をすることを認め、その具体的日時、場所、方法等については子の福祉を慎重に配慮して、当事者間で事前に協議して定める。」というものでした。

このように、実際に面会交流を実施する前に、当事者間が面会交流の条件について協議して定める必要があり、しかもその協議の方法や内容についても当事者に委ねられているものでした。

そのため、裁判所は、間接強制をしたり、合意の不履行に基づく損害賠償請求をしたりすることはできないと判断しています。

重要なのは、決められた面会交流の条件に曖昧なところがあるために間接強制ができない場合であっても、妻に対して不法行為に基づく損害賠償請求が認められる場合があるということです。

エ 熊本地方裁判所平成28年12月27日判決

この事案では、裁判所は、調停で決まった面会交流の条件に従って面会交流の具体的日時・場所を定めるための協議に誠実に対応しなった妻の行為は、夫の面会交流権を侵害するものであり、夫に対する不法行為に該当するとして、70万円の損害賠償請求を認めました。

また、調停の際に夫と妻との間の連絡役となることに了承していた妻の再婚相手に対しても、夫に対する不法行為責任を認め、妻と連帯して30万円を支払うよう命じました。

<まとめ>

・面会交流の取り決めは、①話し合い、②面会交流調停②面会交流審判のいずれかで行う!

・相手が面会交流の取り決めに従わない場合は、①裁判所からの履行勧告、②間接強制という強制執行制度の利用を考えよう!

・それでも相手が面会交流の取り決めに従わない場合は、損害賠償請求が認められるケースがある!

弁護士のホンネ

面会交流は誰のために実施するべきものでしょうか。

もちろん、子供と離れて暮らす夫の、子供と会いたいという思いを叶えるとの側面もあるでしょう。

しかし、より大切なのは、父親と離れ離れに暮らすこととなってしまった子供のために面会交流を実施しなければならない、との側面です。

面会交流の実施ができないという状況は、子供にとって不幸なことであり、速やかに改善されなければなりません。

そのためには、まず何よりも、妻に面会交流の意義をしっかりと理解してもらうことが必要だと思います。

妻がどうしても説得に応じない場合には、子供のためにも、まずは面会交流調停を申し立てて、妻に対して、調停員や家庭裁判所調査官の口から、面会交流の意義をしっかりと説明してもらうことが必要でしょう。

面会交流の意義について、本文で紹介した静岡地裁浜松支部平成11年12月21日判決は、かなりの長文で詳細に論じています。

内容については様々な議論の余地があるところとは思いますが、裁判所がこのように面会交流の意義を詳細に論じた上で、面会交流の実施を拒否する妻に対する500万円もの高額の損害賠償請求を認めたという事実は、我々実務家としても、決して軽視できないことです。

以下で、その判決文をそのまま紹介することで、今回は終えたいと思います。

一1 ところで、家族の社会生活における意義を見るに、テンニースという学者は、社会をゲマインシャフト(共同社会)とゲゼルシャフト(利益社会)とに分けている。ゲゼルシャフトとは会社とか学校とか組合のように、人がある目的のために結び合う社会のことで、そこでは人々はその目的のために結び付くのであって、一面的である。ゲマインシャフトとは村落とか、家庭のように人々がそれ自体で結び付き、無目的に結合している社会で 、そこでは全人格的に人々は結び付く。その典型は家庭である、というのである。

家庭は、もともといろいろな機能を果たしてきた。生殖は勿論、生産も教育も娯楽も全て人々は家庭に求め、そうすることで落ち着きを感じとってきた。安楽の地が家庭であり、人々は家庭に安住しているだけで充分生活していけた。

しかし、資本主義社会が発達して人々の分業が進み、多くの人が都会に居を構えるようになった現在、そのような機能はほとんどがゲゼルシャフトに奪われ、家庭は生殖と睡眠とかいった数少ない機能しか果たしていない。しかも、ゲゼルシャフトの要求は次第次第に家庭というゲマインシャフトに対して強く迫り、人々は休息の場さえ奪われ兼ねない。家庭は構造的にも夫婦と未成年の子で構成されるようになり、いわゆる核家族化される傾向にあり、ときとすればゲゼルシャフトの要求に抗し切れない場面すらある。

しかし、家庭の果たす役割はやはり重要であると言わざるを得ない。ゲゼルシャフトの場でいろんな働きをして、精神的にも肉体的にも疲れ切った人々はやはりその休養を家庭に求めるのであり、憩いの場、慰めの場、思いやりの場、人間らしさを取り戻す場は家庭をおいて他にはない。人間は、所詮個々としては一人の人間だけではとても生きていけない。その 人生において困窮した時、疲れ切った時、難関に直面した時、やはり身近に話し合いや慰めの場を持ちたいと思うのであり、そうした最後の砦が家庭であるといってよい。

2 右家族の中で産まれた子の観点から検討するに、まず、右家族の中で生命を与えられた子にとってはそれは運命であるといわざるを得ない。

家庭は未成熟の子を独立した一個の人格者として、いわば社会人として送り出すまでの養育の場でもある。人が生まれ落ちて与えられる環境は先ず真っ先に家庭であり、子供にとってそこに選択の余地はないのである。

しかるに、長ずるに及んで一個独立社会人として世に出るまで、長い期間を要し、その間家庭で父母の監護教育の下におかれることを考えるとき、家庭の持つ意義は大きい。

人間は本能を忘れた動物であるという説がある。したがって、人間には本能に代わる行動パターンが必要となり、自我を養成してその自己規定に基づいて行動する。そのため、すなわち、社会的に独立し、主体性を持った人格を持つには人間は約二〇年もの長期間を要するというのである。そして、幼児のときに母親ないし父親の肌で触れ合う感触が、人間として の優しさ、思いやりなど、後々の人格形成に大いに必要な、かつ不可欠なものなのである。しかも、それは幼児期という時期を失してはもはや代わるべき体験はできないものである。すなわち、右の体験は不可遡及的なものであり、このことを担う役割は、やはり生みの母親を先ずおいて他には求められない。

つぎに、外部からの社会的規範など、様々な社会生活をしていくうえで準拠すべきルールや生き方の方法などを家庭に持ち込み、これを内面化する役割を主として父親は担うものと思われる。

これらの作用は、夫婦の協力によってもたらされるのであり、従って夫婦間の相互理解が必要であり、その仲睦まじさが、子供にとっても多大な影響を与える。

二 右のような役割を民法は親権と称して第八一八条ないし第八三七条にこれに関する規定を設け、原則として親権は父母が共同してこれを行うと定め、その具体的内容を財産管理権の他、子供の躾や教育をはじめ子の回りの世話など子の全生活に亘り監護教育をするというものであり、これは親の権利であると同時に、まず子の福祉を念頭において行使すべき ところから義務ともいえるのである(民法第八一八条第一項ないし第三項)。

ことに、前記一で考察したように、典型的なゲマインシャフトとして、また、社会の基底的集団として、家族は全人格的に付き合うものであって、人はこうした家庭でおよそ成人に至るまでの長期間育成されるものであり、成人して出ていく社会にも社会的法則や倫理を遵守するとかの父性的原理に基くものや思いやりなど他人と共感して生活するなど母性的原理 に基くものの双方を必要とし、未成熟の子に対する父親としての役割、母親としての役割を考慮すれば、つぎの時代を担う人間を育成する場として親権は親の権利性をそう強調して論ずべきものではなく、また、子の福祉の観点からその義務性をそう軽々しく論ずべきものではなく、父と母の共同して親権を行うことが最も望ましいのはいうまでもないところである 。

ところで、両親の離婚という現象は場合によっては親たる夫婦間にしてみれば避けられない現象ではあるが、右離婚という現象はあっても、その子にとってはその後は欠損家庭に生きるという不幸な出来事というべき一面があるとともに、その子にとってみれば、父と子、母と子という親子の関係それ自体は生涯離れることはできない運命的なものである

しかしながら、親権の具体的内容たる監護教育する権利は、どちらかの親権者の手に委ねざるを得ないことになる(民法第八一九条第一項ないし第六項)。すなわち、他方の親権はその行使が停止されることになる。

かくて、子との面接交渉権は、親子という身分関係から当然に発生する自然権である親権に基き、これが停止された場合に、監護に関連する権利として構成されるものといえるのであって、親としての情愛を基礎とし、子の福祉のために認められるべきものである。」

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