配偶者が子供を連れ去る計画を立てている!どんな手段を取れば良い?

今回は、同居中の配偶者が子供を連れて別居を強行しようと計画を立てていることが判明した場合に、どのような対応が取れるのか、解説します。

1 社会問題になって久しい子供の連れ去り

配偶者による実子の連れ去りについては、それが社会問題になって久しいと言えるでしょう。

以下は、MBSニュースのリンクです。子供を引き離された母親の悲痛な状況が報道されています。実務においても、そうした状況に陥ってしまった方々は大勢いらっしゃいます。
https://www.mbs.jp/news/feature/scoop/article/2024/03/099563.shtml

また、令和4年度の司法統計年報家事編(https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/659/012659.pdf)によれば、令和4年度は全国で3416件の監護者指定の申立が、2789件の子供の引き渡しの申立がなされていたことが分かります。

十分な話し合いをせずに、夫婦の片方が子供を一方的に連れ去って別居を試みるケースが、全国で数多行われている実態を窺い知ることができます。

こうした状況については、諸外国からも厳しい非難がなされており(外国人を配偶者にもつ日本人が同様の行為を国を跨いで行っているため)、令和2年7月9日には、欧州議会本会議(会議場:ブリュッセル)において、日本における子の連れ去りに関する決議がなされました(賛成686、反対1、棄権8)。

決議の本文は11項より成っていますが、その前文では次のことが宣言されました。

(1)日本のハーグ条約の下での子の送還にかかる司法判決の執行率が低いこと、また、面会交流の権利執行の可能性の欠如によりEU籍の親の日本居住の子女との意味ある関係の維持が妨げられていることに対し懸念を表する

(2)EU市民の親と日本市民の親の場合の、片親による子の連れ去りの未解決案件数の多さを憂慮する

https://www.moj.go.jp/content/001347789.pdf

ハーグ条約は、国境を超えた実子の連れ去りに対して、原則として元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現のための協力について定めたものです。①子を元の居住国へ返還することを原則とすること、②親子の面会交流の機会を確保すること、を柱とする取り決めです。日本は、このハーグ条約の理念に沿った対応が十分になされていないことを痛烈に非難されたと言えるでしょう。

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2 なぜこのような連れ去りが行われているのか

日本において、諸外国より厳しい非難を浴びるほど、連れ去りが常態化している理由は、日本の裁判所の対応にあると考えられます。日本の裁判所においては、主に子供の身の回りの世話を担っていた配偶者による連れ去りを事実上容認していると評価できます。

というのは、裁判所は、子供が連れ去られた場合であっても、①これまで子供をメインで面倒を見てきた方はどちらか、②現在の子供の生活が安定しているかどうか、という観点を監護者指定の際に最も重要な要素とみなします。そのため、実際に親と引き離された経緯については、検討材料としては二の次になるため、結果として連れ去り行為の実施を後押ししてしまっている状況にあるのです。

そうすると、配偶者がまさに連れ去りを計画していることが判明した場合、もう片方の配偶者は、どのような対処をすべきなのでしょうか。

以下、対応策をお伝えします。

3 対応策

(1)監護者指定の申立てと弁護士からの通知

配偶者が子供の連れ去りを計画していることが判明した場合は、早急に弁護士に相談してください。

その上で、裁判所に監護者指定の申立てと子の引き渡しの申立て手続きを家庭裁判所に対して行いましょう。別居後の監護者をどちらが担うのか、裁判所に判断を仰ぐのです。監護者指定の申し立てについては、下記の記事もご参照ください。

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その間に連れ去りが完遂されてしまうリスクが高い場合は、弁護士から通知をし、絶対に連れ去りなどはしないよう、警告しましょう。

ただし、弁護士の通知を無視して連れ去りを断行された場合でも、子供の身の回りの世話をその配偶者があなたと同程度に行っていた場合は、やはり引き渡しは認められない可能性が高いです。というのは、裁判所の手続きには一定の時間がかかりますが、その間に子供は新しい環境になれてしまいます。そして、裁判所は、新しい子供の環境をさらに変更することは相当でないと判断する傾向にあるのです

したがって、子供を連れ去る余地を与えないような仕事の形態をとるなど、工夫を凝らす必要はあるでしょう。自分の両親の援助を受けられるのであれば、一時的に同居してもらい、裁判所の判断が出るまでの間、一方的に連れ去られないよう、体制を整えておくのも良いでしょう。

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(2)自ら子供を連れて別居をして監護者指定を申立てる?

自らが中心に子供の日常的な世話をしていた場合で、相手が間違いなく子供を連れ去ってしまう切迫した危険がある場合は、相手から連れ去られる前に、先に子供を連れて避難をし、裁判所に監護者指定の申立を行うという方法がありえます。

ただし、これは自分の方が間違いなく子供の監護を担っていたケースにおいて選択肢になり得るものであり、相手よりも子供の日常的な世話をしていなかったケースであれば、そうした対応は違法とみなされる可能性があります。弁護士に相談をしましょう。ただし、弁護士も最近は「連れ去り教唆」と言われることを極度に恐れますので、明確な回答は得られないかもしれません。最終的には自分自身で判断する必要があります。

(3)子供を連れ去られてしまった後は直ちに監護者指定の申立てを!

相手の連れ去り計画に対する対応を検討している間に、実際に連れ去られてしまった場合は、直ちに監護者指定の申立をするほか、合法的な選択肢はありません。

まれに、子供を連れ去った配偶者の実家や、子供の通学先の学校に乗り込んで子供の「連れ去り返し」のような対応を行うケースが見られますが、極めてグレーなものであり(違法と判断される可能性も高いです。しかし、それが結果的に成功してしまう場合があることが、問題をややこしくしています。)、決して推奨できません。

したがって、監護者指定の申立を行うという方法一択になるでしょう。至急弁護士に連絡を取って、適切な対応を行いましょう。

弁護士の本音

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弁護士のホンネ

本当は、子供を連れ去った場合は原則として子供を一旦元の家に戻さなければならないという原則を、裁判所が打ち立てるのが一番だと思います。それは、日本も批准しているハーグ条約と軌を一にするものです。そして、その状況下で子どもにとって父母どちらと生活をするのが子供の利益になるのかをじっくりと審理・判断すべきと言えるでしょう(もちろん、DVなどの問題がある場合は別でしょう。とはいえ、その判断もまた難しいのですが。)。

弁護士としても、こうした問題に対するアドバイスが年々難しくなっているという現実があります。連れ去りが社会問題化しているため、不用意にアドバイスをすると、後から問題視されるリスクがあります。そのため、最近は弁護士のアドバイスもぼやけたものなっている印象を持ちます。

それは逆に、当事者の方が、自らの責任と判断で連れ去り問題に対する対応を検討する必要が高くなっているとも言えるでしょう。

今回の記事が、日本で最も深刻な社会問題の一つである、「配偶者による子供の連れ去り」に対し、現に悩まれている方のお役に少しでも立てるのであれば幸いです。

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