【面会交流制度の限界】拒否しようと思えば拒否できてしまう面会交流の実態

1 屈辱と悲しみに耐える夫たち

別居や離婚をした後、子供のことで大きな問題になるのが、面会交流です。
日本では、共同監護や共同親権が公式には認められていませんので、子供と離れ離れになった親がその後子供と会えるかどうかは、ひとえに監護親の意思一つにかかっています

極端な事例では、不倫がばれた母親が子供を連れ去って別居を強行し、生活費(婚姻費用や養育費)を夫に請求しつつ(これは通常法的にも認められます。)、子供には絶対に会わせないという対応をとる場合があります。極端な事例と言いましたが、我々弁護士がたずさわっている案件においては、それなりに多くあります。

そうした場合、夫側としては、①不貞はされる、②多額の生活費を払わなければならない、③子供にも会わせてもらえない、という地獄のような事態に陥るわけです。これほどの屈辱と悲しみを夫側に背負わせれば、何らか事件が勃発しかねないとも思われますが、日本では意外にも、それほど事件化はしていません。そうした事態に耐え忍んでいる夫が多いということでしょう。

このような場合、夫は子供と会うために何ができるのでしょうか。

(※もちろん、監護権や親権が夫に渡った場合も同様の事態になり得ます。本記事は、母親側に親権が渡る傾向が極めて多い我が国の特殊な状況に鑑みた記事になりますので、ご了承ください。)

2 面会交流手続の限界

家庭裁判所の手続きとして、面会交流調停面会交流審判手続というものがあることは、ご存知の方も多いでしょう。裁判所に対して、我が子と会う頻度や条件を決めることを申し立てるものです。

しかし、その手続きは極めて不十分であり、限界があると言わざるを得ません。

(1)時間がかかりすぎる

多くのケースでは、調停の申立をされた妻側も出席をして、話し合いを通じて何らかの条件が整えられ、それにしたがって面会交流が実施されることになります。

話し合いが決裂した場合でも、裁判官が審判手続にて、何らかの判断を下します。

しかし、そこまで行くのに数年に及んでしまうケースも多く、時間があまりにもかかりすぎます。具体的なスケジュール感はこちらの記事(https://riko-net.com/divorce-children/arbitration-not-progressing)を読んでいただきたいと思いますが、2年、3年と手続きが進んでいく間に、子供もどんどん成長していきますそのため、一番会いたい時期に会えない、子供が大きくなって自分と会いたがらなくなってしまった、子供が中学生になってしまって面会交流を行う年齢ではなくなってしまった、などといった事態になることも多いです。

これは深刻な問題だと思いますが、裁判所の遅々として進まない手続きは当面改善される見込みはありません。立法府による早急な解決が必要です。

(2)手続きの参加を拒否されたら意味がない

もし、子供を監護している妻が、裁判所の呼び出しにも応じず、裁判所が求める子供の調査にも協力をしない場合、どうなってしまうのでしょうか?

結論から言えば、具体的な内容での面会交流条件は決まらない、というものです。すなわち、事実上の逃げ得の事態になってしまいます。

妻(または元妻)が調停に参加しない場合、裁判所の判断で面会交流条件を定める審判手続に移行します。

通常は、裁判所の調査官が、子供の生活状況の調査を行い、どういう条件で夫(または元夫)が子供と面会交流を行うべきなのかを判断します。例えば、子供の平日や土日の生活実態を把握して、どういう頻度で、どういう時間帯で、どういう場所であれば現実的に面会交流が可能なのかを判断するわけです。子供の就学状況や習い事の状況、子供の父親への拒絶態度の有無なども確認します。

しかし、もし妻が調査官の調査にも協力をしない場合、上記の子供の状況というものを確認しようがありません。裁判所の調査官は、あくまでも妻に対しては任意での協力を求めることしかできないのです。

では、子供の状況がよくわからない状況が続くとどうなるのかというと、裁判官は、具体的な取り決めを判断できないということになります。例えば、「当事者は、2ヶ月に1回程度、面会交流を実施することを約束する。その具体的な方法については当事者間で別途協議を行う。」という極めて抽象的な決定しか下せないのです。そもそも話し合いができないから申立をしたにも関わらず、具体的な内容を決定できないというのは、制度の穴という他ありません。

一方、妻が調査官の調査に協力した場合は、裁判所も、具体的な判断を下せる可能性が高まります。例えば、「当事者は、毎月第2土曜日の午後2時から午後6時まで、未成年者の自宅前で引き渡しをする方法により面会交流を行う。」といった取り決めを行います。その場合、内容も具体的なため、裁判所の決定には強制力(執行力)が生じます。妻が約束を守らない場合には、妻に過料という制裁を課すよう申し立てることが可能になり、面会交流を事実上強制することができるようになります。

しかし、抽象的な内容の決定にとどまる場合は、このような強制力は生じませんので、まさに絵に描いた餅の結果になります。妻側としても、調査に協力することで子供を会わせなければならなくなるのであれば、調査に協力しない方がマシ、という判断を行なってしまいかねない事態です。

(3)裁判所側の問題点

なぜこのような事態になってしまっているのでしょうか。
一つは、面会交流はあくまでも子供のための制度であるという、裁判所の考えがあるためです。
よって、子供に会うことは親の権利とまでは言い難いため、親がどれほど子供に会いたいかという気持ちは、二の次にされるのです。
親の地位は義務であるとともに、権利のはずです(そうでなければ、例えば、より豊かな生活を子供に提供できる他人に、親権者の地位が渡ってしまうことも認められかねませんよね。)。現在の裁判所の運用は、「子供の福祉」という言葉を盾に、多くの大切なものを犠牲にしていると言わざるを得ません。

もう一つの理由は、先例を重視する裁判官の官僚的な姿勢でしょう。
裁判官が具体的な内容で決定を下したとしても、上級審である高等裁判所にひっくり返されてしまう可能性があります。それにより官僚としての成績が下がってしまうわけですので、妻側の非協力的な対応に鑑みた、勇気ある判断をしづらいわけです。

こうした事態を改善することができるのは、立法府の判断でしょう。
数多くの夫たちが嘆き悲しんだ、面会交流が実施されないという悲劇の一方で、共同親権の議論も盛んに行われ始めています。近い未来に、状況が抜本的に改善することを期待したいと思います。

弁護士のホンネ

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弁護士のホンネ

「今回もこのパターンか」。面会交流の調停や審判に参加する際、私たち弁護士が時々抱く思いです。これまで一緒に仲良く暮らしていた子供と突如会えなくなる。慌てて裁判所に面会交流の調停を申し立てても、裁判所の動きは遅く、また、慎重に慎重を重ねられ、時間だけが過ぎていく。その間に子供の生活状況も変わっていき、成長していく。子供と会いたい。ただそれだけのためなのに、いつの間にか数年がかりの手続きになってしまっている。このような状況に対して抱く思いです。

こうした現状が許されて良いとは到底思えません。もし、本記事を読まれて問題意識を共有してくださった方がおられましたら幸いです。

また、子供と会うということは、これほどまでに大変な手続きになりかねないということを、離婚問題の当事者の方にも知っておいていただければと思います。そうした現状を念頭に、ベストな対策を共に考えていきましょう。

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