妻が離婚に応じてくれない。そんな時は資産運用で将来の財産分与に備えるのもアリ?

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として2015年に設立。翌年東京にも事務所開設。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回は、妻が離婚に応じてくれない場合に、支払うべき金融資産を一旦資産運用した上で、実際に離婚する時に支払うやり方について考察します。この場合、相場が良ければ運用益を自分に帰属させることが可能です(ただし、損失が生じる場合は自分が負担する必要があります。)。以下、解説します。

1 妻が離婚に応じない場合、場合によっては10年の別居期間が必要な場合も

妻が話し合いでも調停でも離婚に応じてくれない場合、妻に不貞などの問題がない限り、一般的には3年から5年の別居期間がなければ離婚が認められません。そうした別居期間があることで、ようやく民法が裁判離婚ができる場合として挙げた条件の一つである、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)があるとみなされるためです。

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また、もし離婚を希望する夫側が不貞を行っており、いわゆる有責配偶者に該当する場合、裁判所の運用では、10年程度といった、より長期の別居期間がなければ、離婚が認められません(最高裁昭和62年9月2日判決)。

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2 5年以上の別居期間が想定されるケースでは、財産分与に当てられる金額を資産運用に回すのが得?

(1)離婚しない間、財産分与は保留になる

以上の通り、妻が離婚に応じてくれない場合、相当長期の別居期間を無為に過ごすことになりかねません。その間に他の女性と関係を持つことは、立場上避けなければなりませんし、妻への婚姻費用の支払いも継続するからです。精神的にも、経済的にも、その負担は大変なものになります。

とはいえ、もし、離婚になる場合に渡すべき財産分与額が数百万円〜1000万円といった多額の金額に及びそうな場合でも、その金額をすぐに渡す必要はありません。あくまでも、財産分与は「別居時」の財産の半分を、「離婚時」に渡すものだからです。

(2)資産運用時代に考えるべき視点

そのため、別居期間中、夫はその金額を管理することができます。そして、場合によっては、それを資産運用に回すという考え方もあります。

最近は、少子高齢化に伴う、貯蓄から投資への流れの中で、非課税投資枠が充実した新NISA制度も開始されました(2024年〜)。もはや老後の生活を年金に頼ることができない現役世代にとって、資産運用は決して欠かせない観点になりました。

そして、財産分与額として、仮に1000万円の支払いが予定されている場合、それを支払う必要があるのは、あくまでも離婚時ですから、それまでの間、一旦資産運用に回すことが考えられます。これは今後、資産運用時代に欠かせない視点となるでしょう。

(3)資産運用による具体的な期待額

ところで、新NISA制度が始まって以降、同制度を使った投資先としては、全界株式ファンドまたは米国株インデックス(S&P500)ファンドをマザーファンドとした投資信託が8割近くを占めています(https://www.youtube.com/watch?v=uoKp2RKjVSA&t=618s

こうした全世界株式や米国株インデックスファンドの年平均利回りは年5パーセントから8パーセントに及んでいます。これは複利ですので、一旦運用に回せば雪だるま式に運用額が増えていくことになります。もちろん、年によっては大きくマイナスリターンになる場合もあるため、短期の運用だと望ましい結果にはならないこともあるでしょう。しかし、長期になればなるほど、リターンは平均値に収斂していき、結果として大きな資産増加につながることが多いのも事実です。

具体的にシミレーションをしてみましょう。

・5年間の運用の場合

例えば上記は、米国株インデックスファンドでの運用を想定し、年率の想定リターンを7パーセント(昨今の金融市場からすれば控えめの値です。)、年率の想定リスクを15パーセントとして、1000万円を一括投資した結果をシミュレーションしたものです(三菱UFJアセットマネジメントのHPより作成:https://www.am.mufg.jp/tool/simulation_ikkatsu.html)。

見て分かる通り、5年後に元本割れする可能性は低いながらも否定はできません。一番下の青線は、運用成績が下位5%のもので、資産額は791万円と目減りしています。しかし、期待できる平均的な予想資産額は1400万円以上と、4割の増加となっています。一番上の、運用成績が上位5%の赤線は、2277万円と算出されます。

・10年間の運用の場合

一方こちらは、有責配偶者になってしまい10年間の別居期間が必要なケースを想定したものです。先ほどの5年間の場合と同じ条件で、10年間の運用をした場合のシミュレーションになります。同じく、三菱UFJアセットマネジメントのHPで作成したものです。

こちらも、平均的な予想資産額は1967万円と増えており、元本の約2倍になります。ちなみに、下位5%の成績の平均である青線は821万円、上位5%の成績の平均である青線は3686万円となっています。

以上のことからすると、別居期間が長くなりそうであればあるほど、財産分与に回す予定の金額を資産運用に回すメリットを見出すことができます。実際に財産分与を行う場合は、別居時の財産として計算された1000万円を支払えば良いため、運用益は自分に帰属させることが可能です。

相場次第では、離婚になるまでの間妻に支払い続けた婚姻費用額の総額を上回る利益を得ることもあるでしょう。

なお、妻側の視点からご紹介している記事もありますので、ご参照ください。

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3 別居後に証券口座に入金して運用すること

ただし、もし、資産運用を別居前から行っている場合は注意が必要です。その場合は、そのままの形で別居後も引き続き運用を継続すると、その後の運用益も財産分与の対象になります。

家庭裁判所の運用では、別居時点に持っていた株式や投資信託の評価額が、別居後に上昇した場合、直近の評価額を財産分与の対象とするためです。

したがって、もし、妻がリスクを負担せずにその運用益だけを享受することが納得できない場合は、別居後に他の証券口座を作ってそちらに資金を移動させ、改めて運用を開始すれば、その後の運用益は自分に帰属させられる可能性が高いと考えられます。共有財産の金額は、一旦現金化した時点で確定し、その後の対応は自らの責任によるものと考えられるためです。

一旦利益確定をする必要があるとは思いますが、一つの方法になるでしょう。

詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。

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1 財産分与の原則財産分与という制度については、皆さん、ご存知だと思います。今の運用に基づいて言えば、別居時点の財産を2等分するという制度です。実際には、別居時点の残高や評価額を一覧にして、全てを足し合わせて、計算上、各自の取り分が[…]

4 資産が目減りした場合は自分の責任になる

最後に、資産運用は自己責任であることも確認しておきましょう。

先ほどのシミュレーションでも、全世界株式や米国のインデックス株式といった、「手堅い」投資対象であっても、元本割れするリスクはありました。とりわけ、運用が短期になる場合はその可能性が高まります。

したがって、財産分与として渡すことを予定している金額を運用に回す場合は、他にも金融資産を残しておいて、いざという場合には、残しておいた部分からも財産分与額の一部を捻出できるように準備をしておく必要があるでしょう。

いずれにしても、制度や仕組みをよく理解し、慎重に検討をしてから対応をしましょう。

今回の弁護士からのアドバイス

妻が離婚に応じてくれず、別居期間が長期になりそうな場合は、、、

☑️財産分与予定の金融資産を運用する道も検討してみよう!

☑️相場が良ければ、運用益を自分だけで享受できたり、婚姻費用額を賄える場合もある!

☑️ただし、資産運用はリスクがつきもの。特に短期運用では損失が生じることも多いので、慎重に検討しよう!

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

昨今の資産運用ブームは、離婚や財産分与の実務にも影響を与えることになるでしょう。まだ新NISA制度が始まったばかりではありますが、貯蓄から投資への流れは、少子高齢化時代に伴う、必然的な時代の要請です。そうした制度の利用の可能性を加味した上での対応策が、今後ますます必要になるでしょう。

今回の記事が皆様の離婚問題に少しでもお役に立てましたら幸いです。離婚問題については無料相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

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