離婚調停で、相手が財産資料を開示してくれない!どんな対応を取るべき??

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として2015年に設立。翌年東京にも事務所開設。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回は、離婚調停で、相手が十分に財産資料を開示してくれない場合に取れる方法について解説します

1 離婚調停でも証拠資料が命!

ほとんどの離婚調停でモメるのが、婚姻期間中に築き上げた財産を分割する手続である、財産分与です。
夫婦で築き上げた財産は、潜在的に夫婦の共有とみなされますので、離婚時に半々で分けることが通常です。

実際には、お互いの名義のものを、婚姻関係財産一覧表というものに列挙して、残高や評価額を計上し、最終的にお互いの取り分が等しくなるように、多い方が足りない方にお金を支払うという形で解決します。

婚姻関係財産一覧表は以下のようなものです。通常、どんな財産を計上することになるのか、ざっと理解いただけると思います。
(東京家裁が利用する婚姻関係財産一覧表)

ところが、調停になった際、相手が正直に財産を開示しないケースが多く見られます。裁判所での手続きは、証拠主義です。証拠となる財産資料がなければ、相手がそれを持っているとはみなされません。

2 調査嘱託という制度

そこで利用すべき手続きが、「調査嘱託」という制度です。調査嘱託は、通常、訴訟段階で利用されますが、調停でも利用することは可能ですし、実際に我々もよく利用します。

調査嘱託は、当事者が相手の財産を特定した上で、裁判所に対して、その財産を管理している銀行や保険会社、勤務先などに金額の照会をすることを要請することで実施できます。裁判所の権限で行われるものであるため、裁判所が実施するかは確定的ではありませんが、相手が財産を任意で開示してくれないケースでは、多くの場合、裁判所は認めてくれます。

調停であっても、相手が離婚に応じないスタンスを明確にしていない限りは採用されます。

以下、具体的な財産ごとに、相手が財産を開示してくれない場合の対応方法をご紹介します。

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3 具体的な財産ごとの対応方法

(1)不動産の評価額

上記の婚姻関係財産一覧表を見ていただくとわかる通り、最初に不動産が挙げられています。不動産は、その価値が他の財産を大きく上回ることが通常ですので、財産分与の際に最も重要になります。

不動産の評価額は、民間の不動産会社に依頼して簡易査定書を作ってもらい、その金額を計上するのが通常です。

ところが、時々、調停実務の運用に対する無知を利用して、相手が「固定資産評価証明書」というものを提出してくるケースがあります。固定資産評価証明書は、固定資産税や相続税の計算の際に使われる「固定資産税評価額」が記載されたものです。公の書類であるため、一見、これを元に財産分与額を決める必要があると思われるかもしれませんが、違います。

財産分与の際に基準となる不動産の評価額は、実勢価格であり、不動産会社による査定価格です。固定資産税評価額は実勢価格よりも著しく金額が低い場合が普通です。ご注意ください。

ですので、不動産の査定書を取得しましょう。査定書は、民間の不動産会社にお願いして取得することになります。通常は無料で作成してもらえます。調査嘱託などは用いらず、自分で、もしくは代理人である弁護士が、不動産会社にお願いして査定書を取得することになります。自分の名義ではなくとも、取得することは可能です。

通常は、査定書を複数取って、最も高い金額(分与する側であれば低い金額)を提出します。相手も逆の対応をするのが通常ですので、そのような対応をせざるを得ません。

ただし、不動産にそのまま住み続けたいケースなどでは、理屈上、低い金額の査定の方が有利になります。もっとも、そのまま住み続けられる結果になるかは分かりませんので、どちらに転んでも良いように、中間の金額の査定書を出すのがベターと言えるでしょう。

(2)銀行口座

ア 調査嘱託で取得

相手が口座の内容を開示してくれない場合、調査嘱託が役に立ちます。調査嘱託で、財産分与の基準時(通常は別居日)の残高を開示するよう銀行に求める手続きをとりましょう。

過去10年分であれば、銀行も取引履歴を保有しています。そして、どの銀行も調査嘱託には応じるケースがほとんどです。とはいえ、一部の銀行は、相手の承諾がなければ開示しないというスタンスをとっていますので、その場合は文書提出命令など、次のステップを踏む必要があります。それに関しては別の機会に説明をしたいと思います。

なお、調査嘱託を行う場合、相手が口座を持っている銀行の支店まで特定しておく必要があります(ゆうちょ銀行やネット銀行はその必要はありません。また、口座番号までは不要です。)。同居中、相手がどこの銀行のどの支店に口座を持っているのか、その程度の情報は把握しておくべきといえます。

イ 子供名義口座

相手が子供名義の口座で多額のお金を管理している可能性がある場合も、調査嘱託で調査が可能です。

さらに、ゆうちょ銀行であれば、親権者ならば窓口で申請をすれば取引履歴や残高証明書を取得できます。

ウ 10年以上前の部分

10年以上前の履歴については、調査嘱託でも開示してもらえない可能性が高いでしょう。

なお、自分の口座資料で、10年以上前の部分がどうしても必要な場合があると思います。例えば、特有財産であることを証明する場合などですね。そうした時は、銀行の窓口で担当者と交渉してみてください。自分名義のものであれば、特例で、10年以上前の取引履歴や残高証明書を出してくれる場合があります。この点はあまり知られていないので、お伝えしておきたいと思います。

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(3)生命保険、証券口座

生命保険の解約返戻金や、証券口座の残高を開示してくれない場合があるかもしれません。

相手が持っている生命保険の解約返戻金(基準時時点のもの)がどれくらいあるかも、調査嘱託で調べることが可能です。

証券口座についても、基準日において保有している銘柄や金額を調査することができます。

(4)退職金

問題になりやすいのが、退職金です。相手は、退職金はないとして開示しないケースがあります。しかし、そう言われた側は、本当に退職金がないのか判断することができません。

そこで、調査嘱託を利用することが考えられます。

相手が勤務している職場を照会先として、退職金制度があるかどうか、ある場合に、基準時時点で退職するとすればどの程度の金額になるのか、調査嘱託を申し立てて調べることが可能です。

(5)確定給付年金、確定拠出年金

企業年金についても、わからないケースがあると思います。

そこで、相手が勤務している職場を照会先として、企業年金保険制度があるかどうか、企業年金保険契約の締結年月日、脱退一時金額や、現時点の評価額などを、調査嘱託で調査することが可能です。

(6)持株会

持株会についても、配偶者の立場では不明なケースも多くあります。

これに関しても、調査嘱託制度で調べることができます。

相手の職場を照会先として、持株会制度があるかどうか、基準時時点の評価額、

管理している証券会社はどこかなど、調査が可能です。

今回の弁護士からのアドバイス

離婚調停で、相手が財産を開示してくれない場合は、、、、

☑️調査嘱託制度を利用しよう!

☑️証券口座、退職金、持株会などもこれで調査ができます!

☑️不動産の評価は、固定資産税評価額ではなく、査定価格が基準になるので注意しよう!

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

離婚問題が長引く原因の一つが、夫婦の財産資料がなかなか集まらない、というものです。財産資料それ自体があっても、基準時時点の財産がわからない場合や、評価の仕方に争いがある場合もあり、適切な資料を取得するのに時間がかかりがちです。

もし、早期に解決を図るのであれば、資料については誠実に開示を行うのが良いと言えるでしょう。また、上記の通り、調査嘱託という制度がありますので、相手の財産調査を安易に諦める必要はありません。

公正な解決を図って、適切に対処していきましょう。
当事務所では、離婚問題に関する無料相談をお受けしています。お気軽にお問い合わせくださればと思います。

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