分与する側の男性からすれば、自宅の財産としての価値やローンはとても気になるところです。
今回は盲点となりやすい自宅の査定についてお話しします。
1. 財産分与のための自宅査定と住宅ローン
調停や裁判で自宅を財産分与することになった際は、必ず、自宅の査定価額と自宅の住宅ローン残高を調べることになります。
自宅の査定は、基本的には大手の不動産会社、住宅販売会社の無料査定サービスを利用することが通常です。
自宅売却を前提としない場合、査定書の作成までは嫌がる業者もいますが、自宅売却も可能性としてはありうることを伝えれば、通常は応じてくれるでしょう。
自宅の住宅ローンの残高は、ローンを借りている銀行などに、住宅ローンの残高証明書を発行してもらう場合と、年に1回か2回送られてくる、住宅ローンの返済計画表を利用する場合があります。
2. いつの時点の住宅ローン残高?いつの時点の査定?
これは財産分与というものが、夫婦が共同して作り上げた財産を清算しようという制度だからです。
つまり、共同生活の終点である別居時を基準とするということです。
ですので、別居時がはっきりとわかっている場合は、別居時の残高証明書や、別居時を含んでいる返済計画表を利用します。
一方、自宅の価額は、裁判所の判決直前のものが基準時とされます。
要するに、直近のものを出せば良いということです。
もっとも、調停や裁判の場合、以前にとった自宅の査定書をそのまま使い回すということが多く、調停の成立前や判決前に改めて取得する、ということは少ないと言えます。
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3. 自宅査定の工夫の仕方
ところが、特に自宅がマンションの場合、よほど立地に恵まれていなければ、時間が経てば経つほど自宅の時価は低額化する傾向にあります。
建物は特にそうですね。
したがって、もしあなたが男性で、できるだけ自宅不動産の価額を抑えたいということであれば、定期的に自宅の査定書を取り続けて、安い価額になる度に新しい査定書を提出するのがベターと言えるでしょう。
それによって最終的に妻に渡す分与額が抑えられることがあります。
また、査定は複数の不動産屋で取得して、安い方を提出するということもよく行われています。
なお、自宅不動産と住宅ローンがある場合の財産分与の計算の詳細は、「借金があれば財産分与は不要に!?住宅ローンやカードローンがある方必見!」をご覧ください。
自宅不動産は、判決の直前(専門用語でいうところの「口頭弁論終結時」です。)の価額を前提に財産分与の処理がなされます。
ところが、普通は判決の直前にわざわざ裁判所が自宅を査定するということはなく、当事者が以前にとって証拠として提出した自宅の査定書をそのまま踏襲します。
したがって、値下がりしがちなマンション宅の場合は、割高に判断されてしまっている可能性があるということです。
これは調停の場合も同じです。
調停が始まる前に自宅の査定書をとっており、調停が始まってから提出する場合が多いですが、調停が長引くほど、自宅の実際の価額が変動している可能性があります。
今お使いの自宅の査定書がいつの時点でとられたものなのかを確認していただき、必要であれば再度査定書をとってみると良いでしょう。