離婚リスクを考えた資産形成の方法!証券口座は特に注意!

1 若い世代が始めた資産形成

老後2000万円などの問題が以前取り立たされましたが、現在の現役世代は、全ての方が資産形成を考えなければならない時代です。国の年金だけに頼るのではなく、現役時代に自分で資産を築き上げ、時に運用に回し、年金を補填する必要があります。

こうした中、最近は20代や30代という若い世代も、資産形成に積極的になりつつあります。日本証券業協会がまとめたデータによると、20代と30代を合わせた証券口座数は、2018年末が100万口座であったのに対し、2021年末は300万口座と激増しています。2018年はつみたてNISAが始まった年ですが、「貯蓄から投資へ」の流れは、着実に進んでいることがわかります。

2 財産分与により、形成した財産が失われるリスク

しかし、20代や30代というのは、これから結婚をするという世代でもあります。そして、昨今の傾向を考えると、常に離婚リスクを念頭に置きつつ、結婚を考える必要があるのも事実です。

厚生労働省の人口動態統計の直近データでは、婚姻件数と比べた離婚件数は3分の1を上回っており、3組に1組は離婚するという傾向は続いています。
そして、離婚する際にもっとも問題になる論点が、財産分与です。婚姻後に築き上げた財産を、2分の1ずつに分けることが基本になります。

資産形成を始めた若い世代が結婚をする際、上記に書いた離婚リスク(3分の1という極めて高いリスク)とどのように向き合うのがベターなのでしょうか。必死に築き上げた資産は、離婚時に半分、財産分与として相手に取られてしまうのでしょうか?

3 離婚リスクに備えた財産の守り方

(1)財産分与の制度

まず、財産分与の制度を整理します。この制度は、婚姻中に築き上げた財産は、離婚時に配偶者と2分の1ずつ分けなければならないという内容が基本です。共に協力して築き上げた財産はきちんと精算すべきという考えによります。

したがって、婚姻中に得た給与を貯蓄に回していた場合や、投資信託や株式の購入に当てていた場合、離婚時の残高を2分の1ずつ分けることになります。

一方、婚姻前に築き上げていた部分については、原則として財産分与の対象にはなりません。婚姻中、親などから相続をして得られた資産も同様です。配偶者の寄与が想定できず、共に築き上げた資産と評価できないからですね。

しかし、結婚前に築き上げた財産と、結婚後に築いた財産が同じ口座にある場合、深刻な事態になる場合があります。

(2)普通預金口座での注意

ア 基本的な考え方

例えば、結婚前に1000万円の残高のある普通預金口座を、結婚後も生活資金として使用するとします。
1000万円の残高は、家計の支出が増えることをきっかけに減ったり増えたりしながら推移をすることでしょう。

離婚する時点では、残高が2000万円になっている場合、財産分与として配偶者に渡す金額は、増えた1000万円の半額の500万円と考えるかもしれません。

しかし、残高が一時500万円にまで減っている場合は、結婚後に築き上げられた金額は1500万円とみなされ、分与額はその半分の750万円になる可能性が高いです。

イ 全てが財産分与の対象になるリスク

さらに、その口座が夫婦の基本的な生活資金口座とみなされると、婚姻期間の経過により、その口座の残高は全て夫婦の共有財産に変わったとみなされ、残高2000万円全てが共有財産とされてしまう場合もあります。その場合、配偶者に支払う金額は1000万円です。

ウ 対処法

したがって、結婚後は、生活資金口座を新しく別に作ることを強くお勧めします。そして、結婚前までに蓄えていた財産に対しては、追加の蓄財をせず、そのまま預金口座に寝かしておくか、もしくは証券口座で追加投資なしで運用をすることをお勧めします(大切なポイントは、結婚後に築き上げた財産と絶対に混ぜないという点です。)。

(3)証券口座での注意

ア 混在すると全て財産分与の対象になる可能性

証券口座も考え方は一緒です。
結婚後も同じ証券口座を利用し、そこに追加投資をしたり、売却と買い付けを繰り返ししていると、結婚後の財産と混在してしまい、区別ができなくなってしまいます。
結果として、離婚時に、残高の全てが共有財産とみなされ、半分を配偶者に渡さなければならないリスクが生じます。

イ 含み益にかかる税金はこちら負担

とりわけ、普通預金よりも厄介なのは、含み益の存在です。
財産分与を行う際、証券口座で持っている金融商品の評価額が基準になります。これは、含み益を含んだものですね。
するとどうなるでしょうか。

離婚時点の投資信託Aの評価額が、2000万円だとします。
そのうち、含み益は1000万円あるとします。
その場合、1000万円を配偶者に支払う必要があります。
証券口座をお持ちの皆さんはもうお気づきですね。含み益1000万円にかかっている潜在的な金融所得課税200万円は、全てこちらが負担することになります。

こうした災難を避けるためには、やはり結婚後は別の証券口座を開設し、そこで新しく資産運用をすることを強くお勧めしたいと思います。

ウ 対処法

例えば、最近の若い世代はSBI証券、楽天証券、マネックス証券などのネット証券口座を利用していると思います。結婚前にSBI証券を利用していたのであれば、結婚後の追加投資をする資産運用は楽天証券で行うなど、別の証券会社自体を利用するのが良いです。

ちなみに、結婚時に持っていた証券口座を追加投資なしでそのままほったらかしにしていて、気づいたら素晴らしい含み益が出ていたとしても、離婚時に財産分与の対象にはなりません。配偶者はその含み益に対して何ら寄与をしていないからです。

証券口座については、特に結婚前後で切り替える必要が高いことをおわかりいただけたと思います。
この記事が、皆さんの資産形成と離婚対策の一助になりましたら幸いです。

<まとめ>

  • 資産形成を始めた若い世代こそ離婚リスクに注意しよう!
  • 結婚前にあった普通預金口座も証券口座も、結婚後の資産と混在すると全てが財産分与の対象になるリスクがある!
  • 証券口座の含み益にかかる潜在的な税金は、全てこちら負担になってしまう!
  • 結婚後に新しく口座を開設し、これらのリスクを回避しよう!

<弁護士のホンネ>

プロキオン法律事務所
弁護士のホンネ

財産分与は、夫婦の公平を図る制度ではあります。しかし、昨今は2分の1ルールが厳格に適用されるなど、反論の余地のないドグマのようなものになり、柔軟性に欠けているのも事実です。

したがって、一般の方々が想定している以上に、財産分与による不利益(分与する側にとって)は大きくなっていると思います。

特に、証券口座での含み益にかかる課税は、分与する側の負担になりがちであり、不公正な解決になることが多いです。
こうした状況を回避し、公正な結果を図るためにも、結婚前と結婚後で口座を区別するという、決して難しくない作業をぜひ行っていただきたいと思います。

弁護士の無料相談実施中!


プロキオン法律事務所は、横浜駅徒歩6分渋谷駅徒歩7分の好アクセス。離婚・男女トラブルに関するご相談を60分無料で承ります。お気軽にお問い合わせください。

0120-533-284

チャットで相談予約

>弁護士法人プロキオン法律事務所

弁護士法人プロキオン法律事務所

弁護士法人プロキオン法律事務所(横浜・東京)は、離婚・男女問題に特化した専門事務所です。初回相談は60分無料で、平日夜間・土日も対応可で、最短で即日相談も可能です。あなたの、離婚に関するお悩みはプロキオン法律事務所(横浜・東京)にお任せください!