1.別居期間が短いと裁判では離婚は認められないの?
旦那様または奥様に離婚をしたいと伝えても、相手が応じてくれることがまったく期待できない場合に、ご相談者の方からされることの多い質問です。
ご本人同士のお話し合いでも、裁判所を利用した調停手続きでも離婚をすることができない場合、裁判所に離婚を認めてもらう裁判離婚手続きをする以外の方法がないというのが日本の現状です。
裁判離婚の場合、別居期間は最低でも3年間は必要、5年間はないと難しいというような記載をネットなどでお読みになられたことがあるご相談者の方は多くいらっしゃいます。
別居期間が重要であることはその通りなのですが、実は、短い別居期間でも離婚を認めた裁判例は意外と多くあります。
今回は、短い別居期間でも裁判所が離婚を認めたケースを紹介いたします。
2.短い別居期間でも裁判で離婚が認められるケースとは!?
① 同居期間が短いケース
結婚した日から別居をする日までの期間が短い場合、短い別居期間でも裁判所は離婚を認めてくれます。
平成15年12月25日の東京地方裁判所の判決は、同居期間が約1ヶ月であるのに対して、別居期間は約1年4ヶ月という事案において、離婚を認めています。
別居期間としては1年4ヶ月と、相場と言われている3年間〜5年間に比べれば短い別居期間ですが、婚姻期間とは比較にならないほどに長い期間となります。
平成15年5月30日の神戸地方裁判所の判決は、同居期間が約4ヶ月であるのに対し、別居期間は約11ヶ月という事案で離婚を認めています。
こちらについては、婚姻期間と別居期間との比較だけではなく、夫婦間での話合いがうまくできていないことを考慮して離婚を認めています。
ご紹介した2つの判決では、婚姻期間と比較した場合の別居期間の長さが裁判所の判断に強い影響を与えています。
短い別居期間だとしても、婚姻期間も短いのであれば、裁判所も離婚を認めてくれやすいということができます。
② 相手からのDVがあるケース
旦那様または奥様から暴力を受けている場合、裁判所は短い別居期間であっても離婚を認めています。
平成16年5月28日の東京地方裁判所の判決は、婚姻期間が約13年4ヶ月、別居期間が1年半程度の事案において、離婚を認めています。
こちらの事案では、離婚を求めた方に対して、相手は顔を叩く、煮立ったつみれ汁を首や肩にかけるといった暴力行為をしていました。
同居期間と別居期間を比べれば、同居期間の方が長期間に及ぶ事案ではありますが、相手からの暴力行為を理由に裁判所は離婚を認める判断をしています。
平成13年11月5日の神戸地方裁判所の判決は、婚姻期間が約15年、別居期間が約1年10ヶ月の事案において、離婚を認めています。
こちらの事案も、婚姻期間の方が別居期間よりも圧倒的に長期間である事案です。
離婚を求めた方に対する相手からの肉体的暴力行為があったという点では、1つ前でご紹介した判決と同じですが、こちらの事案では、人格を否定するような言葉を使い、精神的にもDVが加えられていました。
裁判所は、「婚姻関係は修復困難なまでに破綻した」と述べて離婚を認めました。
ご紹介した2つの判決では、別居期間そのものが短いだけでなく、婚姻期間と比較しても圧倒的に別居期間の方が短いにもかかわらず、相手からのDVを理由として離婚を認めています。
DV、特に肉体的な暴力行為がある場合、短い別居期間であっても離婚が認められるということができます。
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③ 離婚の決意が固く、婚姻関係の修復が期待できないケース
離婚を求めている方の決意が固い場合には、相手が関係の修復を願っていたとしても、短い別居期間で離婚が認められています。
平成15年8月27日の東京地方裁判所の判決は、婚姻期間が約13年、別居期間が約11ヶ月の事案において、離婚を認めています。
こちらの事案では、離婚を求めた方が育児や家事で忙しかった時に相手が協力をしてくれなかったことから別居を望み、同居しながら離婚調停を行って不成立となった後、別居に至っています。
別居する以前から、わかりやすい形で離婚したいという意思を伝え続け、関係の修復をするつもりがないということが裁判所から見ても明白であることが、短い別居期間であるにもかかわらず、裁判所が離婚を認める理由となっています。
平成16年9月28日の東京地方裁判所の判決は、婚姻期間が30年以上という事案で、しかも、同居中であるにもかかわらず、離婚が認められています。
同居中ですので、別居期間は短いどころか、まったくないということになります。
こちらの事案では、夫婦間の性生活や、離婚を求めた方が相手から大声で怒鳴られるということが多かったこと、不倫したことについて相手がまったく説明をしなかったことなど、様々な事情が存在しました。
離婚を求めた方の決意が固いこと、関係の修復を求める相手に対してまったく耳を貸そうともしていないことも、裁判所が離婚を認める理由となっています。
最近では、平成23年6月30日の東京家庭裁判所立川支部の判決が、婚姻期間約9年、別居期間約2年半の事案において、「婚姻関係は、既に修復が困難な程度に破綻している」と判断して、離婚を認めています。
こちらの事案では、別居期間は相場よりも短いですが、離婚を求められた相手が関係の修復を希望しつつも、具体的に修復のための行動をしていなかったこと、離婚を求めた方は関係の修復に一切応じていなかったことを裁判所は重視して離婚を認めています。
離婚の決意の固さや関係修復の可能性については、離婚調停の申立てや相手のことをまったく無視するなど、わかりやすい行動をとることが重要です。
今回ご紹介した3つのケースの中で、このケースは唯一、離婚を求める方ご自身の行動によって離婚裁判を有利にできるものといえます。

今回は、短い別居期間であっても裁判所が離婚を認めてくれるケースを紹介しました。
ご自身の置かれている状況がいずれかのケースに該当していれば、裁判になったとしても、離婚が認められる可能性は十分にあります。
ご自身の状況がいずれのケースに該当するかよく分からない場合や、今回ご紹介したケースとは少し違うという場合は、お気軽に当事務所までご相談にお越しください。
お客様の具体的ご事情をお聴きした上で、裁判になった場合の見通しや、裁判において有利になるために今後とるべき行動など、適切なアドバイスをさせていただきます。