別居中の子供が私立の医学部・歯学部・薬学部に進学した!高額な学費を請求されたが支払わなくてはいけないの?

当事務所に相談にいらっしゃる方の中には、子供が進学した私立の医学部、歯学部、薬学部などの高額な学費を養育費(又は婚姻費用)として請求されて困っているという方がいらっしゃいます。

私立の医学部や歯学部などとなると、卒業までの学費が何千万円にも上ることも珍しくなく、請求する側にとっても請求される側にとっても非常に重要な問題です。

そこで今回は、私立の医学部や歯学部などの高額な学費が法的にはどのような扱いをされるのか説明したいと思います。

—トピック—

①子供が未成熟子ならば算定表で計算された金額の養育費を支払うのが原則

②子供が大学生ならば、さらに学費を加算して支払う可能性が高い

③ただし、私立医学部の学費など極端に高額な学費については減額される可能性がある

④高額な学費を負担させられないための注意点

親には未成熟子を扶養する義務がある

親には未成熟子を扶養する義務があります。

そのため、離婚後や別居後であっても養育費や婚姻費用を支払わなくてはならないのです。

未成熟子とは、簡単に言うと、自分で自分の生活費を稼ぐことができない(又は稼ぐことが相当でない)子供を指します。

基本的には大学生は未成熟子にあたります。

未成熟子の定義や、いつまで未成熟子の養育費を支払わなくてはならないのかなどについては以下の記事が詳しいので参照してください。

したがって、子供が大学生であれば、基本的に養育費を支払わなくてはならないことになります(ただし、あなたが子供の大学進学に同意していない場合で、かつ年収や学歴に照らして子供が大学に進学することが相当でないと判断される場合などには20歳まで支払えばよいとされる可能性もあります。このような事情がありそうな場合は弁護士に相談してください。)

養育費は算定表で計算された額になるのが原則

「1」で述べた養育費の額は、裁判所で用いている算定表に従って計算されます。

この算定表は、双方の年収にしたがって額が決定され、そこには未成熟子の生活費や公立学校の学費相当額などが含まれています。

算定表で決定される養育費額については以下の記事が詳しいので参照してください。

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算定表で計算される養育費額に大学の学費が加算される

子供が大学に通っている場合、算定表で計算される養育費額に、さらに大学の学費を加算して支払わなくてはならないことが多いです。

具体的には、実際にかかる学費から、算定表で既に考慮されている公立学校の学費相当額を差し引いた額を、双方の親で半々又は収入に応じて負担することになります。

学費加算については以下の記事が詳しいので参照してください。

私立の医学部の学費など極端に学費が高い場合には異なった扱いをされることも

以上からすれば、子供が大学生の場合、その学費の相当の部分について、算定表で計算された養育費に加算して負担しなければならないケースが多いでしょう。

しかし、私立の医学部の学費など極端に学費が高額な場合にはそれと異なった扱いがされることもあります。

私立の歯学部の学費負担が認められなかった裁判例

大阪高裁平成21年10月21日決定は、以下のように述べて私立の歯学部の学費負担を求められた父親の負担義務を否定しました。

これは、母親から父親への養育費請求ではなく子供から父親への扶養料請求の事例ですが、養育費の場合でも考え方は同様です。

「相手方(歯学部に進学した子供)が抗告人(父親)に対して負担を求める学費は年間483万円であり、これを月額に換算すれば月額40万円となり、(中略)、相手方の学費は抗告人の地位、収入に比して、不相応に高額であり、親が子に対して負う扶養義務の範囲を超えるものといわなければならない。

つまり、学費が親の地位や収入に対して不相応に高額な場合には、扶養義務の範囲を超えるため負担しなくてもよいということを言っています。

ただし、この決定は、父親が文系の4年制大学を卒業していることなどから、私立文系の4年制大学の学費相当分については父親に負担義務があるとしていることには注意が必要です。

また、この事案では、子供が歯学部に進学する時点において、子供の学費について母親の実家からの援助を当てにしていたという事情があり、その点も考慮された可能性があります。

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私立の医学部の学費負担が認められた裁判例

一方で、高額な学費の負担が認められた裁判例も存在します。

大阪高裁平成29年12月15日決定は、私立医学部に進学した子供から医師である父親に対してされた扶養料請求事件において、子供が現に進学した私立医学部の学費分について父親に負担義務があると判断しました。

この父親は医師であり収入も相当に高額であったことから、父親の地位や収入に照らして私立医学部の学費が高額に過ぎるとはいえないと判断されても仕方ない事例かもしれません。

ただ、この父親は、従前、子供に対し、私立の医学部に行くのであれば比較的学費の安いX大学に行くようにと具体的に薦めていたという事情があります。

それにもかかわらず、父親に対し、上記X大学の学費相当額にとどまらず、実際に子供が進学した大学の学費をまで負担させるのはやや酷であるということもできるかもしれません。

まとめと注意点

以上見てきたように、子供が大学生の場合、その学費の相当の部分について、算定表で計算された養育費に加算して負担しなければならないことが多いです。

そして、それは私立の医学部の学費など非常に高額な場合であっても基本は変わりません

ただし、その学費が当事者の地位や収入に対して不相応に高額な場合には、当事者の学歴や収入に応じて減額される可能性があります。

もっとも、従前の経緯や当事者の地位や収入によっては減額されない可能性も大いにあるため、減額を期待することは危険です。

そこで、最も大事なのは、そもそも子供が私立の医学部や歯学部など学費が高額な大学に進学することに同意しないこと、及び進学したとしても学費は負担しないとあらかじめ明確に意思表示をしておくことです。

たとえ子供の医師になりたいという夢を応援する場合であっても、私立の医学部の学費は負担できないことはしっかりと釘をさしておきましょう。

そのようにしておけば、学費を負担することになったとしても、国公立大学の学費相当分や一般的な私立大学の学費相当分で済む可能性が非常に高まります(この場合でも、あなた自身が私立の医学部を卒業し、収入も相当に高額である場合などは高額な学費であっても負担を命じられる可能性がある点は注意してください。)。

弁護士のホンネ

今回の記事では書ききれませんでしたが、学費加算分としてどの程度負担するべきかについては、進学についてどの程度の同意があったか、子供が奨学金を受け取っているか、子供のアルバイト収入があるか、親族からの援助を前提としていたかなどの様々な要素が絡んできます。

私立大学の医療系学部の学費となると非常に高額になるため、請求された場合には(請求する場合にも)一度弁護士に相談し、アドバイスをもらった方がよいでしょう。

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