別居後や離婚後、子どもの塾や習い事は誰が決める?費用の負担はどうする?

1 はじめに

別居や離婚をしたご夫婦の中では、お子さまの塾や習い事を巡って争いになることが多くあります。

これは、別居後・離婚後に、両親の子どもに対する考え方や経済状況が変わることで、異なる価値観による対立が起こりやすくなるためです。

さらに、今後導入される共同親権(改正民法第824条の2等)により、親権・監護権のあり方が見直され、誰が塾や習い事を決めるのかということや、費用を誰が負担するのかということが、より争点になってくると考えられます。

本記事では、別居後・離婚後における塾や習い事の決定権、費用負担の整理およびトラブルを避けるための実務的なアドバイスを、離婚専門弁護士の視点で解説します。

2 塾や習い事はどのように決めるべきか

まず、子どもの塾や習い事について、別居後や離婚後おいて、両親はどのように決めるべきかという点から考えます。

結論から言えば、現行法での別居後や離婚後はもちろんのこと、共同親権導入後も、監護親(子どもとともに生活する親)が子供の塾や習い事について自由に決めることができると考えられます。

共同親権とは、離婚後に父母双方を親権者とするもので、これまで離婚後は父母のどちらか一方が単独で親権を持つ「単独親権」のみでしたが、改正法により「共同親権」を選択できるようになりました。この制度は、令和8年4月から導入が決定しています。

そして、もし共同親権を選んだとしても、子どもの日常の行為については、監護親が単独で決められることが明確化されています(改正民法第824条の2の2項)。

つまり、別居中であっても、離婚後共同親権を選択していても、お子さまの塾や習いごとといった日常的な教育活動は、監護親が自由に決定できるというのが法制度上の基本設計です。

ただし、塾や習い事とは異なりますが、学校の進学先や転居など、子どもの人生に大きな影響を与える「重要な事項」は別扱いとなり、共同行使が原則となります。

共同親権について詳しくは、「離婚後の「共同親権」導入で何が変わる?新しい民法が定める親の責任と養育のルール」をご覧下さい。

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3 費用負担はどうなるのか?

では、次に塾や習い事の費用をどちらが払うのかといった点や、非監護親(子どもと同居していない親)に対して費用の請求は可能かといった点について整理します。

・塾や習いごと

もし、別居後に監護親が塾や習い事の開始を決定した場合、その費用を非監護親に請求できるかは、相手の承諾があったかといった点や、別居前から通っていたかという点が重要な判断材料となります。

別居前から通っていた塾や習い事については当然に請求できますが、別居後に新たに始めた習い事であれば、非監護親の同意がなければ基本的に請求はできません

・学費、進学費用

塾や習い事ではなく、子どもの学費や進学費用についても、進学先の同意や、もともと同居中から在学していたかなどが請求可否の判断材料となります。

ただし、子どもの進学は、子どもの日常の行為ではなく(改正民法第824条の2の2項)、緊急性もないので(改正民法第824条の2の1項3号)、共同親権導入後は、そもそも共同で意思決定をする必要があると考えられます。

4 費用請求できる場合の金額の考え方

では、もし双方合意あるいは別居前からの継続など、費用請求が可能な条件が整った場合、いくらまで請求できるのでしょうか

まず、塾や習い事は、一般に子どもの教育費の一種とみなされます。そして、養育費・婚姻費用にはあらかじめ教育費分が一定程度含まれています。

したがって、養育費・婚姻費用にあらかじめ含まれている教育費の範囲内でまかなえる場合には、改めて請求するのは難しいでしょう。

しかし、養育費・婚姻費用にあらかじめ含まれている教育費を超えるような、塾や習い事であれば、その超過分は、両親の収入に応じた按分、または半額ずつの折半、といった方法で請求できることになります。

具体的には、子どもの学費と塾や習い事の費用を加算し、その合計が養育費・婚姻費用にあらかじめ含まれている教育費を超える場合は、その超過分を両親の収入に応じた按分、または半額ずつの折半とすることになります。

そのため、子どもが公立に行っているか私立に行っているかで、塾代や習い事を加算したときに超過分が発生するかも変わってくるでしょう。

養育費・婚姻費用にあらかじめ含まれている教育費の計算方法につきましては、様々な計算方法がありますが、以下のような計算式で出すことが一般的です。

 両親の基礎収入の合計×(子どもの生活費指数における教育費の指数の合計/両親と子どもの生活費指数の合計)

※基礎収入

年間の総収入に、基礎収入割合を掛け合わせることで算出します。
詳しくは、

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を参照ください。

※生活費指数

※生活費指数
大人1人:100
14歳以下の子:62
15歳以上の子:85

※教育費の指数

0〜14歳の教育費部分:7
15歳以上の教育費部分:16

このように、両親の基礎収入の合計が多いほど、あらかじめ婚姻費用や養育費費に含まれている教育費の金額は多くなるので、超過分も生じにくくなるといえます。

そして、上記の計算で算出できた金額を超える部分について、半額または収入按分によって負担し合うことになります。

婚姻費用や養育費の基本的な計算方法については、

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をご覧下さい。

超過分の収入按分または折半の考え方の違いについては、

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をご覧下さい。裁判所によって見解が分かれているところです。

5 トラブルを避けるためには

上記のような、塾や習い事の決定や費用負担をめぐる争いは、離婚・別居という新しい生活環境の中で起こりやすく、感情的にも深刻になりがちです。

そのため、離婚時の調停条項や離婚協議書に、合意の方法や費用の負担割合といったルールを具体的に定めておくことが争いを避ける上では重要です。

ただし、子どもが将来どんな習い事を希望するかということや、どのくらい学費がかかるかは予測が難しいため、加算がある場合は別途協議するなど柔軟な条項にすることが一般的となっています。

したがって、理想で言えばこのように、将来のあいまいな争点を残さないよう、できる限り事前に可能性を見越して枠組みを作っておくことが有効ですが、なかなか現実的には難しいため、法律上の見通しをしっかりと理解し、思わぬ費用負担が生じないようにすることが重要と言えるでしょう。

6 まとめ

・離婚後、別居後における子どもの習い事の決定は、原則として監護親(子どもとともに生活する親)が「日常の行為」として単独で決定できる。

・ただし、習い事の費用を非監護親に請求するには、同意や別居前からの継続など条件が必要で、安易な請求は認められにくい。

・費用請求が可能な場合でも、請求できるのは婚姻費用や養育費にあらかじめ含まれている教育費の範囲を超える分のみに限定される。

・将来のトラブルを避けるには、離婚協議書や調停条項でルールを定め、費用負担や決定手続の枠組みをあらかじめ合意しておくことが望ましいが、難しい場合は法律上の見通しを理解しておくことが重要。

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実務をしていると、塾や習い事の問題はどちらが正しいかではなく、親としての価値観の違いがそのまま衝突として現れてしまう場面が多いと感じます。

子どもの将来を思う気持ちは、どちらの親にもあるからこそ話し合いが難しくなるのです。

そのため、あらかじめ取り決めをしておくことは重要ですし、取り決めがなかったとしても、費用を支払ってしまう前の早い段階で法律の専門家に相談することをお勧めします。一度支払うと、合意したとみなされる点についても留意しておきましょう。

どう整理すべきかと迷われたら、一度ご相談ください。弁護士が最適な道筋をご提案します。

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