【諦めないで!】「婚姻関係が破綻している」との理由で婚姻費用の支払金額を減額できる場合がある!

ネット上の記事を色々と調べるうちに、あなたはこのような結論に至っているかもしれません。

「自分は婚姻費用を支払わなければならないようだ」

果たして、本当にそうでしょうか。

そもそも婚姻関係が破綻している場合でも、婚姻費用の支払いを延々と続けなければならないのでしょうか?

以下で説明しましょう。

※なお、婚姻費用についてはこちらも参考にしてください。

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1 家庭裁判実務の状況

婚姻費用は調停ではなく審判で決めよう!

家庭裁判実務では、なかば盲信的に、「婚姻費用は相場通り支払わなければならない!」ことが言われています。

調停でも、調停員は、どれほど婚姻関係が破綻していたとしても、その回復見込みが全くなかったとしても、調停員は「婚姻費用は相場通り支払わなければならない」と言ってきます。

婚姻費用分担請求調停でも、「婚姻費用を支払いたくない!」「婚姻費用を支払うのはおかしい!」と主張しても、全く取り合ってくれないことが多いです。

2 「婚姻関係が破綻している」との理由で婚姻費用の支払金額を減額することができる場合がある!

(1)裁判例の紹介

まず、以下の裁判例を見てください。

① 東京家審昭和47年9月14日

「一般に夫婦間の婚姻費用分担の程度は、いわゆる生活保持義務であつて、自己と同程度の生活を家族にさせる義務があるといわれているが、婚姻が破綻状態になり、当事者双方に円満な夫婦の協同関係の回復への期待と努力が欠如している場合には、その分担額もある程度軽減されると解される。このような婚姻破綻についてどちらの配偶者に責任があるかという有責性については離婚の際の慰謝料あるいは財産分与において考慮されることはありうるとしても、婚姻費用分担義務は本来婚姻継続のための夫婦の協力扶助義務と共通の基盤に立つものであるから、その原因の如何にかかわらず、夫婦間にこのような基本的協同関係を欠くに至り将来回復の見込もないときは、夫婦の協同関係の稀薄化に伴ないある程度分担責任も影響を受けることはやむを得ないところであろう。」

② 長崎家審昭和54年6月4日

「婚姻費用分担義務が、夫婦の婚姻共同生活を維持する上で必要な費用を分担することを旨とする点に鑑み、その破綻の程度に応じてその分担義務が軽減(縮少)されることがあり得るものと解すべきである。」

「申立人及び相手方は、共に将来夫婦共同生活を回復維持する意図は全くなく、その婚姻共同生活は完全に破綻していると認められるから、本来相手方が負担すべき分担額のうち、申立人の生活費に関する部分の五割は、その限度で縮少されるものというべきである。」¥

③ 東京高決昭和57年12月27日

「婚姻費用の分担義務は、本来婚姻継続のための夫婦の協力扶助義務を基礎とするものであるから、婚姻が破綻状態となつて夫婦の協力関係を欠くに至り、双方に本来あるべき円満な夫婦の協力関係の回復への意欲がみられなくなつている場合には、その分担額をある程度軽減することも許されるものと解するのが相当である。」

④ 前橋家審平成4年11月19日

「法律上の婚姻関係が継続している以上、婚姻関係が破綻しているからといって、そのことだけで、一方が他方の婚姻費用を負担することを要しないとはいえないが、本件のように、婚姻後約3年間同居しただけで以後十数年にわたり別居して、婚姻関係は回復不可能な状態に立ちいたった場合には、その状態になったことについて、婚姻費用を分担する側の当事者にもっぱら責任があるときは格別、そうでなければ、婚姻費用の分担に当たって、社会的に見て相当と認められるだけの婚姻費用を分担している限り、常に必ずしも自己とまったく同一の生活を保持するに足りるだけの婚姻費用を分担しなければならないものではない。上記(4)のいわゆる労研方式による生活費按分の試算は、基本的には同一生活保持を前提とする方式で、以上の見地から、本件ではこれをそのまま採用するのは相当ではない。」

⑤ 岡山家裁玉島出張所審平成4年9月21日

既に夫婦間は回復しがたいまでに破綻しているものといえる(このことは申立人も認めているところである)。また現に相手方から離婚調停の申立てもなされており、申立人も婚姻費用分担額如何によっては離婚も考えると述べている。

従って、このような場合婚姻費用として子の生活費のかかわる部分のみを義務として課するのが相当であり、申立人の生活費にかかわる部分は認めないこととする。」

(2)婚姻費用を減額する戦略

ア 相手からなんと言われようが養育費相当額しか支払わない!

あなたには上記の裁判例という強い味方がいます。

実際に「婚姻関係が破綻している」との理由で減額が認められている裁判例が存在している以上、相手に対して、「婚姻関係が破綻している以上は婚姻費用の相場通りの金額を支払う義務はない!」との主張は、法的に見当違いなものではありません。

イ 相手から婚姻費用分担請求調停を申し立てられた場合

調停員は、婚姻関係の破綻によって婚姻費用が影響を受けることを全面的に否定する考え方に基づいて話を進めてくる場合が多いです。

ただ、調停員の多くは法律の専門家ではなく、上記の裁判例をそもそも知らない人も多いです。

相手や調停員は、上記の裁判例を知らないまま、あなたに「婚姻費用は相場通り支払わなければならないものである!」「たとえ婚姻関係が破綻していてもそのことは変わらない!」と言ってきているのです。

調停員の仕事は合意をさせることであるので、あなたに相場通りの金額で合意するよう圧力をかけてくることが想定されます。

しかし、現実に、「婚姻関係が破綻している」との理由で婚姻費用の金額を減額している裁判例が数多く存在していますので、調停員の言うことに素直に従って相場通りの婚姻費用の金額を支払う合意をする必要はありません。

あなたが強い意思で相場通りの金額での合意を拒否しているうちに、調停員が相場金額以下の金額での合意を進めてくることもあります。

ウ 最終的には審判で裁判官が婚姻費用の金額を決定する

婚姻費用の金額をめぐる争いは、話し合いがつかなければ、最終的には裁判官が金額を審判で判断することになります。

こうなった場合は、担当の裁判官が、「婚姻関係の破綻」を婚姻費用の減額事由と考える裁判官であるかどうかで、結論が変わります。

そして、裁判官が上記の裁判例を書いた裁判官と同様に「婚姻関係の破綻」を婚姻費用の減額事由と考える裁判官である場合には、相場金額以下の金額が審判で示されることとなるでしょう。

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婚姻費用は調停ではなく審判で決めよう!
弁護士山崎
弁護士のホンネ

そもそも、婚姻費用の支払いや、その金額が問題となる場面を考えると、それは夫婦関係が悪化して別居に至っている場合が大多数です。
つまり、婚姻費用の金額が問題となる場合には、そもそも夫婦関係は破綻しているか、破綻に瀕している状況に至っている場合が多いです。
このような背景もありますので、調停では、婚姻関係の破綻のみを理由として婚姻費用の減額を認める例は極めて少ないです。

調停で話し合っている場合にも、調停員からは「婚姻関係が破綻していようが婚姻費用は支払わなければならないものである!」などといった説明をされたりすることがあります。
しかし、上記の裁判例の存在が示しているように、「婚姻関係の破綻」が婚姻費用の減額事由として判断される場合もありますので、簡単に諦める必要はありません。

また、仮に請求してきている相手が離婚を望んでいる場合は、相手は離婚の請求においては「もう婚姻関係は破綻している!」と主張しつつ、婚姻費用の請求においては「婚姻費用を支払え!」と請求してくるものと考えられます。

そこで、あなたから「婚姻関係が破綻している以上は婚姻費用の支払金額は相場金額以下となるべきである」と主張した場合、それに対して相手は「婚姻関係は破綻していない!」と反論することはできません。

相手は、「婚姻関係が破綻していようが婚姻費用は満額認められる」といった上記裁判例の見解と相容れない反論をするしかありません。

調停での話し合いがそのようなこじれ方をした場合、調停員から、妥協案として、相場金額よりも一定程度減額した金額での合意を打診される場合があります。
調停員は合意をさせることが仕事ですから、当事者の見解が真っ向から対立する場合には、双方当事者に妥協案を提示して、それで合意するように圧力をかけてくる場合も多くあります。

調停員からこのような妥協案が示された場合には、その妥協案の金額は相場金額以下の金額でしょうから、あなたはそれに合意して「相場金額以下の金額での合意」を勝ち取ることができます。
もちろん、より減額された婚姻費用の支払金額を勝ち取るべく、審判まで徹底的に戦うことも考えられます。

しかし、担当の裁判官が「婚姻関係の破綻は婚姻費用の減額事由ではない」との考え方に基づいて審判を出す可能性もありますので、それよりも「相場金額以下の金額での合意」を勝ち取った方が良い可能性もあります。

婚姻費用のような継続的な支払義務は、たった1万円の違いが数百万の損になってしまいかねませんので、いわば損切りとして、そのような判断も積極的に考えてみるもの良いかもしれません。

このような微妙な判断を独力でするのはリスクがありますので、最終的な結論を出す前に、弁護士への相談をお勧めします。


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