令和元年12月23日、最高裁判所が養育費・婚姻費用の新算定基準を公表しました。
これによって、養育費・婚姻費用が従前より増額化していると言われていますが、実際はどの程度増額したのでしょうか。
また、すでに金額について合意をしている夫婦間でも影響はあるのか、気になるところです。
そこで、今回は、
そもそも婚姻費用・養育費の「算定表」とは何か。
新たな「算定表」はどんな風に変わったのか。
すでに婚姻費用・養育費の金額が決まっている場合も影響はあるのか。
についてお話ししたいと思います。
婚姻費用・養育費の「算定表」とは
婚姻費用は、夫婦が婚姻関係を継続しながら別居をしている場合に、夫婦間の扶養義務に基づいて、収入の多い一方配偶者からもう一方の配偶者に対して支払われる生活費のことをいいます。
これに対し、養育費は、離婚後、夫婦に子供がいる場合に、非監護親(お子様と同居をしていない親)が監護親(お子様と同居し、お子様を養育している親)に対して支払うお子様のための生活費のことをいいます。
これらは生活費である以上、ご家庭によってどの程度の費用が必要になるかは異なるものとなります。
しかし、どの程度の生活費が必要となるか、事案ごとに算定することは困難です。
そのため、裁判所では、過去の統計(平均的な住居関連費、職業費、教育費など)を参照して作成された「算定表」を用いて、夫婦の収入額に応じてある程度一律に婚姻費用・養育費を算定するという運用がされています。
「算定表」を用いた婚姻費用・養育費の具体的な算定方法については、下記の記事をご参照下さい。
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新たな「算定表」とは
従来使用されていたものと異なる新たな「算定表」が、令和元年12月23日に最高裁判所によって公表されました。
これは、従来の算定表の基礎とされている統計が取られた時点から期間が経過していることや、社会情勢の変化を受けて(従来の婚姻費用・算定表では低額であるという批判もあったようです。)取られた対応となります。
今後、婚姻費用・養育費を算定する場合には、新たな「算定表」を使用することが一般的となっていくでしょう。
具体的にはどう変わったの?
婚姻費用・養育費の金額は、事例によって異なるものの、概ね金額が上がる方向か、あるいは現状を維持する形で変更されています。下記にいくつかモデルケースを示します。
例えば、夫の年収(給与収入)が500万円、妻の収入(給与収入)が200万円であり、15歳以下のお子様が1人いる場合、従来の「算定表」では、婚姻費用は月額6〜8万円の範囲、養育費は月額2〜4万円の範囲に該当していました。
これに対して、上記のケースは、新たな「算定表」では、婚姻費用は月額8〜10万円の範囲、養育費は月額4〜6万円の範囲に該当します。
別のモデルケースとして、夫の年収(給与収入)が2000万円(これは算定表の上限額です。)、妻の収入(給与収入)が120万円であり、お子様がいない場合、従来の「算定表」では婚姻費用は月額24万円〜26万円の範囲に該当します。
これに対して、上記のケースは、新たな「算定表」では、婚姻費用は月額28万円〜30万円の範囲に該当します。
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すでに婚姻費用・養育費をもらっている場合はどうなるの?
すでに婚姻費用・養育費を従来の「算定表」によって取り決め、支払いを受けている場合、新たな「算定表」となったことを理由に、婚姻費用の増額を求めることはできないとされています。
その理由としては、新たな「算定表」の公表は、あくまで婚姻費用・養育費の計算方法が変わっただけであり、客観的な「事情の変更」があったとはいえないことが挙げられています。
そのため、「事情の変更」、具体的には夫婦のいずれか、あるいは双方の収入が大幅に変わったなどの事情がある場合には、新たな「算定表」によって婚姻費用・養育費の計算を求めることが可能となりうるといえます。
このような場合は要注意!
現在すでに婚姻費用・養育費を支払っているものの、収入が大幅に下がるなどして、婚姻費用・養育費の減額の調停を行うような場合には、新たな「算定表」を元にして婚姻費用・養育費が算定されてしまう可能性が高いといえます。
仮に新たな「算定表」によって算定される金額が現在支払っている金額よりも高額となってしまう場合、相手から新たな「算定表」に基づく金額を支払うように要求されてしまうリスクがあります。
新しい「算定表」で、事前に金額を確認することが望ましいでしょう。
<まとめ>
・婚姻費用・養育費の金額は、概ね金額が上がる方向か、あるいは現状を維持する形で変更された。
・すでに婚姻費用・養育費が決まっている場合は、直ちに影響を受けることはない!
・しかし、婚姻費用・養育費を変更する事情がある場合は、新たな「算定表」に基づいて算定される可能性がある!
婚姻費用の算定にあたっては、今後は裁判所が作成した新たな「算定表」を使用することが一般的になるでしょう。
婚姻費用の金額は、離婚に向けた交渉でも大きな意味を持つものとなります。
この記事が皆様の離婚交渉の一助になれば幸いです。