特有財産からの収入は婚姻費用の計算でどう扱われる!?

別居中の夫婦のうち、収入が多い方は、収入が少ない方に対して、生活費(婚姻費用)を支払う義務を負います。

そして、婚姻費用の金額は、双方当事者の収入の金額を基礎として算定されます。

・婚姻費用算定表(家庭裁判所公開のもの)

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

※婚姻費用について詳しくは、

・別居後の生活費を無駄なく受け取る方法!

別居後の生活費を無駄なく受け取る方法!婚姻費用調停の基礎知識。

・婚姻費用・養育費の「新算定表」とは? 婚姻費用、養育費はどう変わる?合意し直しの必要は?

婚姻費用・養育費の「新算定表」とは?婚姻費用、養育費はどう変わる?合意し直しの必要は?

では、あなたが婚姻関係とは無関係に得た財産(特有財産)から収入を得ている場合には、その特有財産から得た収入も婚姻費用の金額の算定に当たって考慮されるのでしょうか?

1 特有財産とは

まず、特有財産とは、結婚前に築いた財産や相続などによって得た財産など、婚姻関係とは無関係に得た財産を言います。

このような特有財産は、財産分与の対象にもなりません。

では、婚姻費用の計算においては考慮されるのでしょうか?

2 特有財産から収入を得ている場合の婚姻費用の計算

(1)法律の規定

婚姻費用分担義務は生活保持義務(自分の生活と同程度の生活を保持させる義務)と解されています。

婚姻費用について定めた民法760条も「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており、「収入」とだけ規定しており、なんらの制限を付していません。

そうだとすれば、婚姻費用の分担義務を負う者(婚姻費用を支払わなければならない者)の収入には制限がなく、特有財産からの収入であってもその者の収入である以上は、婚姻費用の金額の算定に当たって基礎とするべき収入に含まれると一般的には考えられています。

(2)特有財産からの収入で生活していなかった場合には算入されない!

しかし、特有財産からの収入が夫婦生活とは無関係のものとされ、夫婦の生活を維持する上で使用されていなかった場合はどうでしょうか?

このような場合であっても、同居中は夫婦の生活上無関係とされていた収入が、別居して婚姻費用という形に変貌した途端に別居生活を送る上での婚姻費用の金額の算定上考慮されるべきこととなれば、それはいかにも奇妙です。

裁判例も、古い裁判例には特有財産からの収入も制限なく婚姻費用の金額の算定に当たって基礎とするべきと判断したものもあります(東京高裁昭和42年5月23日決定)。

しかし、その後、当該特有財産からの収入が婚姻中の生活費の原資となっているかどうかを問題とし、原資となっている場合に限り婚姻費用の金額の算定の基礎とするべき収入に含まれるとの裁判例が出され(東京高裁昭和57年7月26日決定)、その考え方はその後の裁判例でも踏襲されています(大阪高裁平成30年7月12日決定)。

(3)「特有財産からの収入で生活していなかった」と言えるかどうかの判断

ア 特有財産からの収入が生活費の原資となっていないことが明白な場合

この場合は、特有財産からの収入で生活していなかったと言えることは明白です。

上記の東京高裁昭和57年7月26日決定の事案でも、特有財産からの収入が夫婦の生活を維持する上で全く使用されていなかったことが明白な事案でした。

裁判所も「申立人と相手方は、婚姻から別居に至るまでの間、就中○○区のマンションに住んでいた当時、専ら相手方が勤務先から得る給与所得によつて家庭生活を営み、相手方の相続財産またはこれを貸与して得た賃料収入は、直接生計の資とはされていなかつた」と断定した上、「婚姻費用の分担額を決定するに際し考慮すべき収入は、主として相手方の給与所得であるということになる」と判断し、特有財産からの収入は一切考慮しませんでした。

イ 特有財産からの収入が生活費の原資となっていないことが明白ではない場合

例えば、特有財産からの収入と会社からの給与収入などを明確に区別することなく生活のために支出していた場合は、どのように考えるべきでしょうか

上記の大阪高裁平成30年7月12日決定の事案は、夫(婚姻費用の支払義務者)は、会社からの役員報酬の他、婚姻前から所有していた株式からの配当金や不動産の賃料収入などの特有財産からの収入を得ていました。

しかし、夫婦の生活費の原資が夫の会社からの役員報酬のみに明確に限定されていたわけではありませんでした。

この場合、裁判所は、以下のように判断しました。

① 妻(婚姻費用の請求者)が同居中消費することができた金額を認定。

② ①の金額が、夫の全収入を基礎とした上で婚姻費用算定表に当てはめて算定した金額に近似していることを認定。

③ ②である以上、同居中の双方の生活費の原資が夫の役員報酬に限られていたとみることはできない(夫婦の生活費の原資には夫の特有財産からの収入も含まれる)と判断。

このように、この事案の場合は、結局、夫の特有財産からの収入も含めて婚姻費用の金額が算定されています。

<まとめ>

・特有財産からの収入も婚姻費用算定の際の収入に含まれるのが原則!

・ただし、同居期間中に特有財産からの収入が生計に利用されていなかったことが明確である場合は、その収入は計算から除かれる可能性がある!

弁護士青木
弁護士のホンネ

婚姻費用の金額の算定には、実は多くの未解決問題が含まれています。

上記の例でも、特有財産からの収入とその他の収入が渾然一体となって生活費の原資とされていた場合に、本当に上記の裁判例のように同居中に消費できた金額を基準に判断して良いのか極めて疑問です。

例えば、同居中に生活費として妻が消費することができた金額は、いわば夫婦の同居生活を維持することを想定した金額であって、それがそのまま別居後の生活費の取り決めに投影されて良いのでしょうか。

しかし、家庭裁判実務、特に婚姻費用分担請求調停実務では、調停員は、その事案ごとの特殊性には目を瞑り、極めて大雑把に「通常そうなる」という原則的な考え方に基づいて算定した金額に合意するよう圧力をかけてきます(調停員の仕事は合意させることですから。)。

その一方で、調停委員の誤った知識によって合意してしまうと、損をするのは当然にあなたです。

合意した後に、それが不相当であると気がついたとしても、原則として後から減額はできませんし、後から調停員や裁判所に責任追及することもできません

婚姻費用のような継続的な支払義務は、たった1万円の違いが数百万の損になってしまいかねませんので、少しでも不安がある場合は、弁護士への相談をお勧めします。

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