隠れて風俗店で勤務していた妻に慰謝料請求はできるか

プロキオン法律事務所の弁護士荒木です。
妻が自分に隠れて性風俗店勤務をしていたことを知ってしまった場合、離婚を考える方は多いと思います。
しかし、単に離婚するだけではなく、離婚についての慰謝料も請求することはできるのでしょうか。
以下、性交行為の存在が立証できる場合とできない場合に分けて解説します。

性交行為の存在が立証できる場合

一方配偶者が他人と性交行為をしていた場合、そのような行為は不貞行為(民法770条1項1号)にあたり、離婚原因(離婚請求が認められる事由)となります。
そして、離婚原因を作った=婚姻関係を破綻させたということになりますので、そのような配偶者に対しては離婚についての慰謝料を請求することができます。
ただし、不貞行為より前に既に婚姻関係が破綻していたという場合には慰謝料請求は認められませんので注意してください。
このように、妻が他人(客)と性交行為をしていたことが立証できれば、離婚請求もできるし、離婚についての慰謝料も請求できることになります。

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性交行為の存在が立証できない場合

しかし、性風俗店では、公式には性交行為(いわゆる「本番行為」)は禁止されており、接客中の密室で何が起こったかを外部から把握することは難しいという状況があります。
そのため、妻が、風俗店の勤務については認めても、客との性交行為は認めない場合、性交行為の存在を立証することは困難です。
そのような場合でも、離婚請求や離婚についての慰謝料請求は認められるのでしょうか。

この点、隠れて性風俗店に勤務していた妻に対して夫が慰謝料を請求したが、妻が風俗店への勤務を認めつつも性交行為の存在を否定して争ったという裁判において、東高地方裁判所は、大要以下のように述べて夫の請求を認めました(東京地裁平成28年3月28日判決)。

・夫婦間の婚姻共同生活の平和の維持という利益は、私法上の権利又は法的保護に値する利益であるから、これを 正当な理由なく侵害する行為は不法行為を構成するのであり、このことは夫婦の一方が第三者と肉体関係を持った場合(いわゆる不貞行為)にかぎられるものではない。

・妻は、夫に秘して、不特定多数の男性に性的サービスを提供する風俗店に勤務し、かかる行為が婚姻共同生活の平和を害するものであることは明らかであることから、その時点で既に婚姻関係が破綻していたという事情がない限り、不法行為を構成する。

つまり、性交行為の有無以前の問題として、夫に秘密で不特定多数の男性に性的サービスを提供する風俗店に勤務する行為自体が、婚姻共同生活の平和を害するものであり、不法行為にあたるということです。

このように、たとえ性交行為自体の立証ができなくても、性交類似行為を行う風俗店に一方配偶者に秘密で勤務していること自体が婚姻関係を破綻させる行為として考えられるため、慰謝料をすることは可能ですし、当然、離婚請求も可能であると考えられます。

まとめ

妻が他人(客)と性交行為をしていたことが立証できれば、離婚請求もできるし、離婚についての慰謝料も請求できます。
また、たとえ性交行為自体の立証ができなくても、性交類似行為を行う風俗店に一方配偶者に秘密で勤務していることが立証できれば、慰謝料をすることは可能ですし、当然、離婚請求も可能であると考えられます。

ただし、性風俗店と一口にいっても、その内容や形態は様々です。
性交類似行為を提供していると一概には評価できない場合や、店舗に在籍はしているものの出勤はしていないケースなども考えられます。
そのような場合には、当該店舗のサービス内容や、実際の出勤状況などをしっかりと検討する必要があることは注意してください。

弁護士荒木
弁護士のホンネ

 今回は妻が性風俗店に勤務していた場合の離婚や慰謝料についてお話ししましたが、これらは全て、夫がその事実を知らなかったという前提に立っています。
もし夫が妻の性風俗店勤務を知っており、それを容認していたのであれば、性風俗店に勤務していたとしても婚姻関係を破綻させたとは評価できないと考えられるので注意が必要です。

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