<2020/1/19更新>
不倫や浮気の慰謝料を請求する側も、請求を受けた方も、最も気になる点といたしましては、やはり金額ですよね。
実際に、法律相談の際には
上記のようなご質問は必ず受けております。
不貞行為の慰謝料は一般的には50〜300万円ほどと言われていますが、なるほど幅がありますよね。
不貞行為の慰謝料については、過去の裁判所の判例による相場というものが事実上存在し、裁判所も、過去の判例や様々な考慮要素をもとに金額を決めます。
そこで、本記事では
不倫、浮気の慰謝料の相場がどれくらいになるのか?
実際に慰謝料の金額が決まる際に、どのような要素が考慮されるのか?
についてご紹介いたします。
不倫、浮気の慰謝料を請求しようと考えている方も、実際に請求されてしまった方も、本記事が今後のお話し合いの参考になれば嬉しいです。
1.不倫慰謝料に相場なんてあるの?
(1) 慰謝料は心の痛みだが、相場が存在
そもそも、不倫、浮気の慰謝料って、心の痛み(精神的損害)を慰謝するものですよね。
不倫、浮気をされた人の心の痛みというのは、その人の性格や打たれ強さ、境遇など様々ですから、本当に人それぞれだと思います。
不倫慰謝料とは、簡単に言ってしまえば、不倫によって受けた精神的な損害(ショック)を金銭的に評価するといくらなのかというものになります。
精神的なショックの度合いを形式的に決めることは難しいですから、不倫慰謝料に相場が存在することに疑問を持たれるのも当然かと思います。
そうですから、不倫慰謝料に相場が存在するのかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。
ただし、不倫慰謝料にも相場というものが存在します。
(2) 裁判所は過去の判例、裁判例をもとに慰謝料の金額を決定
実際に裁判をする際には、裁判所は判決では具体的な金額を決めなければなりません。
そのため、不倫慰謝料がいくらになるかという判断の具体例は蓄積されています。
裁判所も、実際に審理する事件と似たパターンの事件、事案について過去に裁判所が示した判断(裁判例)を参考にして、金額を決定します。
今回ご紹介する不倫慰謝料の相場は、裁判所がどのような場合にいくらの不倫慰謝料を出してくるのかという、裁判所の相場ということになります。
なお、今回の記事でご紹介する相場は、不倫慰謝料についてのみになります。
裁判所が実際に判断をする際には、不倫慰謝料の他に、探偵の調査費用や弁護士費用が加算されていることもありますので、ご注意いただければと思います。
(もっとも、実際には探偵の調査費用が賠償額に組み込まれることは滅多にありませんし、弁護士費用についても認められる慰謝料額の10パーセント程度までと運用されています。)
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2.不倫慰謝料の裁判所の相場はいくらなの?
それでは、実際に裁判所の不倫慰謝料に関する相場はいくらなのか、ご紹介いたします。
(1) 不倫によって生じた結果が慰謝料の金額に強く影響
おおまかな相場は、不倫の結果がどうなっているのかによって分けられます。
具体的には、
- 不倫のあとも夫婦が同居を継続している場合、
- 不倫のあと、夫婦が別居した場合、
- 不倫のあと、夫婦が離婚した場合、
の3つの場合です。
(2) 不倫のあとも夫婦が同居を継続している場合
夫婦が同居を継続している場合(①の場合)の不倫慰謝料の相場は、50万円から150万円程度になります。
こちらに関しましては、以前は50万円から100万円程度の傾向がありましたが、私の経験上、最近は100万円から150万円の間で不倫慰謝料を認める裁判例も増えてきている印象がありますので、少々広めになっております。
(3) 不倫のあと、夫婦が別居した場合
夫婦が別居した場合(②の場合)の不倫慰謝料の相場としては、150万円から200万円程度になります。
夫婦が離婚に至った場合(③の場合)の不倫慰謝料の相場としては、200万円から300万円程度になります。
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3.実際に不倫慰謝料の金額を決めるときにはどうやって決めるの?
おおまかな不倫慰謝料の裁判所の相場をご紹介いたしましたが、具体的な金額はどのように決まるのかにつきましても、要素の羅列になりますが、簡単にご紹介いたします。
(1) 当事者の学歴・職業・地位・収入・資産など
不倫、浮気をした側が社会的地位が高い職業であったり、高収入であったりする場合には、稀にではありますが、慰謝料の増額事由として考慮することがあります。
ただし、裁判所は、基本的に、これらの事情を慰謝料の増額、減額の事情として考慮することは稀です。
収入や資産にかかわらず慰謝料の金額が特に変わらないのであれば、高収入や資産家の方にとって慰謝料の支払いの負担は重くなく、不公平と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、慰謝料は懲罰的なものではなく、あくまで心の痛みを慰謝するものです。
そして、一般的には、不倫、浮気をされて夫婦関係が破壊されたことによる心の痛みは、相手方の収入や資産によって左右されるものではありません(と裁判所は考えています。)。
そのため、特別な事情がない限り(例えば、不倫、浮気相手と配偶者との関係が弁護士と依頼者や、医者と患者など、不倫相手が自分の地位を乱用して不貞関係を結んだと言える場合など。)、当事者のステータスが考慮されることはないです。
(2) 不倫が始まった時点での夫婦の関係
一般的に、婚姻期間が長い方が、婚姻期間が短い事案よりも、高額の慰謝料が認定されるケースが多いです。
ただし、婚姻直後は本来一番幸せな期間であるはずなので、婚姻直後に不貞に及んだことがかえって慰謝料の増額事由として考慮されることもあるので、婚姻期間の長短で単純に慰謝料の増額減額が決まるわけではありません。
また、夫婦の仲が良好であったりした場合には、不倫慰謝料の増額事由となります。
慰謝料を請求する側としては、夫婦の仲が良好であることを証明するために、不倫や浮気が発覚する前に、夫婦で食事や旅行に行った写真や、親密さを示すメールや手紙のやり取りなどを証拠として提出することがあります。
(3) 夫婦間に幼い子どもがいるか
夫婦間に幼い子どもがいる場合、不倫慰謝料が高額になります。
特に、不倫によって夫婦が別居や離婚した場合には尚更です。
(4) 不倫に対する積極性など
不倫、浮気相手が不倫に対して、積極的であった場合には、慰謝料増額事由として考慮されるケースがあります。
ただし、不倫相手に積極性があったとしても、特に増額要素としては考慮しない裁判例もあります。
と言うのも、不倫慰謝料や配偶者と不倫相手の両方に全額を請求することができます(どちらかから慰謝料が払われたら、払われた分は控除されます。)。
そのため、配偶者と不倫相手のどちらかが積極的であったとしても、それは配偶者・不倫相手の間の責任分担の割合をどうするかと言う問題に過ぎないと言う考えからです。
(5) 不倫の期間の長さ・回数・内容
当然ですが、不倫の期間が長く、回数が多いほど不倫慰謝料が高額になります。
逆に言えば、不倫の回数が1回きりの場合はもちろん、不倫関係が数ヶ月程度の短期間で終了している場合などは慰謝料の減額事由になります。
(6) 不倫がバレたあとの不倫慰謝料を請求した人と請求された人との関係
一般的に、不倫相手が不倫を認めて素直に謝罪をした場合には慰謝料の若干の減額事由になります。
逆に、不倫相手が、客観的証拠があるのに不倫をしていないと嘘をついたり、不合理な言い訳をした場合は、さらに不倫をされた側の心の傷が広がることになりますから、慰謝料の増額事由になります。
不倫がバレた後に謝るべきかどうか対応についてはこちらの記事をご参考にしてください。
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他方で、不倫発覚後に、慰謝料の請求者側が不倫相手に嫌がらせ的な行動をした場合には慰謝料の減額事由となります。
不倫相手からの嫌がらせ行動がどういうものか、どう防ぐかはこちらの記事を参考にしてください。
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今回ご紹介した要素は、代表的な要素になりますので、個別の事案ごとにより具体的に要素を考える必要があります。
不倫慰謝料の具体的な金額を決める場合には、今回ご紹介した裁判所の相場の中で、事案ごとの具体的な要素を検討していくということになります。
4.まとめ
裁判所は過去の判例、裁判例をもとに慰謝料の金額を50〜300万円の間から決定している。
不倫によって、夫婦が同居している場合50〜150万円、別居した場合150〜200万円、離婚した場合200〜300万円が不倫慰謝料の相場。
そのほかにも裁判所は、不倫が始まった時点での夫婦の関係、幼い子どもがいるかどうか、不倫の期間の長さ・回数・内容、不倫がバレたあとの不倫慰謝料を請求した人と請求された人との関係などの慰謝料の増額、減額事由を考慮して慰謝料の金額を決める。
今回ご紹介した不倫慰謝料の相場は、あくまでもおおまかなものになります。
実際には、裁判所の不倫慰謝料についての相場感覚は時代の流れとともに変わっていく可能性が否定できないと思います。
また、具体的にいくらになるかは事案ごとに変わりますし、相場よりも低額、または、高額になることもあり得ます。
個別具体的な事案ごとの裁判所の判断に関しましては、今後も分析を重ね、記事として作成することも考えておりますので、今後はそちらもご参考いただければと考えています。
実際の金額の見通しや、今回ご紹介した以外にも要素として検討することが可能かどうかについてのご相談も承っていますので、お気軽にご相談にいらしていただければと思います。