【注意!】離婚後に不貞を知った場合、不貞相手に慰謝料は請求できない?

【注意!】離婚後に不貞を知った場合、不貞相手に慰謝料は請求できる?それともできない?

今回は、離婚後に元配偶者の不貞を知った場合、当然に不貞相手に慰謝料請求できるわけではないことについて解説をします

今回の弁護士からのアドバイス

離婚後に配偶者の不貞行為を知ったとしても、、、

☑️当然に不貞相手に慰謝料請求ができるわけではありません!

☑️婚姻生活の平穏が、不貞行為によって具体的に侵害されたかどうかがを事実レベルで検証して判断することになります!

1 不貞行為について慰謝料請求できる理由は?

一般的に、婚姻の当事者は、自分の配偶者と不貞をした第三者に対して、慰謝料請求をすることができます。

婚姻当事者は、婚姻により、「婚姻共同生活を平穏に送るべき権利・利益」を取得することになります。そして、この「婚姻生活を平穏に送るべき利益」が不貞行為により害された場合、その精神的苦痛を補填するために慰謝料請求ができることになります。

(最高裁第3小法廷平成8年3月26日判決 民集50巻4号993頁)

甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、・・・丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となる(後記判例参照)のは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであ(る)

それでは、離婚後に不貞を知った場合、元配偶者に対して慰謝料請求はできるのでしょうか?

婚姻中に不貞をされていることを知らなかった場合、「婚姻共同生活を平穏に送るべき利益」が実際上害されていないとも思えます。そのため、問題になるわけですが、裁判例は、一見、分かれているように読めます。

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2 慰謝料の請求を認めなかった裁判例

慰謝料の請求を認めなかった裁判例

まずは、慰謝料の請求を否定した裁判例を見てみましょう。

・東京地裁平成22年4月20日判決

この裁判例は、夫が妻の不貞行為を知ったのが、妻から離婚調停を申し立てられた後であり、その時点ではすでに婚姻関係が破綻していたという事案です。

時系列としては、以下の通りです。

・平成17年〜平成19年8月頃 妻の不貞行為

・平成19年11月 妻が自宅を出る形で別居(なお、夫の暴力が原因)

→この時点で婚姻関係は破綻

・平成20年4月 妻が離婚調停を申し立て

・平成20年7月 夫が妻の不貞行為を知る

・平成21年2月 夫が妻の不貞相手に慰謝料請求の訴訟提起

以上の時系列のもと、東京地裁は、以下の通り判断しました。

(東京地裁平成22年4月20日判決 ウエストロー・ジャパン搭載)

A(妻)が別居した平成19年11月13日ころにはAと原告(夫)の婚姻関係が破綻していたこと,・・・原告がAと被告(不貞相手)の間に関係があったことを知ったのはAから離婚調停を申し立てられた後であったことが認められ,これらの事実によれば,被告が,Aと不貞行為をして原告の夫としての権利ないし法律上保護される利益を害したものとは認められない

以上の通り、東京地裁は、夫が妻の不貞を知ったのが婚姻関係がすでに破綻した後であることを理由に、不法行為の成立を否定しています。これは、不貞を知った時点ですでに婚姻関係は破綻している以上、婚姻共同生活を平穏に送るべき利益が侵害された事実を観念できないことを理由としていると考えられます。

・東京地裁平成24年5月8日判決

この事案は、協議離婚をした夫が死去した後に、元夫が女性との間で不貞関係にあったことが判明し、その女性に対して妻が慰謝料請求を行ったものです。

東京地裁は以下のように、不貞行為と協議離婚の間に因果関係があるかを詳しく検討し、結論として、因果関係がないとしました。

(東京地裁平成24年5月8日判決 ウエストロー・ジャパン搭載)

被告とAは,遅くとも昭和62年10月ころから平成10年7月ころまで10年以上の長期間にわたり,親密でかつ経済的にも贅沢な不貞関係を継続していたことが認められる。そこで,上記のとおり10年以上の長期間にわたって続いた被告とAの不貞行為が原因となって,原告とAが平成20年10月20日に協議離婚するに至ったといえるか,すなわち,原告・Aの協議離婚と被告・Aの不貞関係との間に因果関係があるといえるかについて検討する。

・・・

上記認定事実によれば,原告・Aの協議離婚と被告・Aの不貞関係との間に因果関係があるとは認められない。

次に東京地裁は、不貞行為が婚姻共同生活に否定的な影響を与えたかどうかを検討しましたが、以下のように述べて、そうした負の影響があった事実を否定しました。

(続き)

原告とAは,多額の借財の問題はあったものの,協議離婚をするまでは,夫婦として婚姻実態のある家庭共同生活を営み,また,協議離婚後もAが死亡するまでは,原告が病弱なAを気遣いAの身の回りの世話を積極的に行うなど実質的に夫婦同然の生活を送り,さらに,原告は,A死亡後も平成23年10月ころまでは,かつてAと共同生活をしていた野毛の自宅に居住していたと認めることができるのであって,かかる原告とAの二人の生活状況あるいは原告の生活実態等に照らせば,被告とAとの不貞行為によって,原告の妻としての権利,原告のAとの婚姻共同生活平和維持の権利が大きく害されたとか,原告のAの元妻としての法的保護に値する利益が著しく害されたとは認められない。

裁判所は、離婚に至るまでの間、婚姻共同生活平和維持の権利が侵害されたかどうかを抽象的にではなく、具体的な事実関係として審理したのです。結果として、妻の権利が具体的に侵害された事実はないとしました。

さらに、裁判所は、離婚後に不貞を知ったことによる精神的損害を検討しました。そして、離婚後はすでに婚姻共同生活を平穏に送るべき利益を喪失しているため、そのような状況下で精神的な損害が生じたとしても、それは法的に保護されるものではないとしました。

(続き)

本件において,原告は,Aの死亡後に,原告とAが婚姻中に,被告とAが長期間にわたり不貞関係にあったことを知ったこと自体によって精神的苦痛を被ったとして,かかる精神的損害に対する慰謝料を被告に対して請求する趣旨であると考えることもできる。しかしながら,この場合に,原告のいかなる権利が侵害されたといえるのかが明らかではなく,また,原告の精神的苦痛の具体的な内容も明らかではなく,かかる精神的苦痛を法的保護に値する損害として位置付けることも困難というべきである。

以上の二つの判決を前提にするのであれば、不貞関係と離婚との間に因果関係がない限り、離婚後に不貞を知ったとしても、慰謝料請求は認められないことになります。

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3 慰謝料の請求を認めた裁判例

慰謝料の請求を認めた裁判例

一方で、慰謝料の請求を認めているケースもありますので、ご紹介します。ただし、途中で説明する通り、注意が必要です。

・東京地裁平成28年2月18日判決

この事案は、夫婦が離婚した後、元妻が元夫が不貞をしていたことを知ったため、不貞相手女性に対して慰謝料請求をしたものです。

この裁判では、妻が離婚の際に元夫と不貞相手が不貞関係にあったことを知らなかったことが認定されています。その上で、慰謝料としては70万円が認められました。

この裁判の結論だけを見ると、不貞行為を離婚後に知ったとしても、慰謝料請求はできるともいえそうです。

しかしながら、この事案の判決文を読む限り、この事案では、不貞相手女性側が、不貞行為が発覚したのが離婚後であったことを、主要な論点として取り上げていなかった可能性があるように読めます。

裁判所の判断でも、70万円の慰謝料額を認定する際の事情の一つとして、元妻が不貞行為を離婚後に知ったことに触れているのみです。

したがって、この裁判の内容を一般化するのは危険かもしれません。

・東京地裁令和4年10月31日判決

比較的最近の例も見てみましょう。

令和4年の東京地裁の判断です。こちらの事案は、夫の死後に妻が不貞を知ったという事例です。

(東京地裁令和4年10月31日判決 ウエストロー・ジャパン搭載)

原告が上記不貞関係を明確に知ったのは、Aの死後であることが認められるが、原告はAが亡くなる前に不貞を疑わせる被告とのメッセージを見ていたこと、Aは生前に外泊を伴う不貞行為をしていたことなどが認められることからすれば、このような不貞関係があったこと自体により、原告の妻としての権利、家庭生活の平穏は侵害されていたと評価するのが相当であり、原告がAの生前に上記不貞関係を明確には知らなかったということだけをもって被告の不法行為責任を直ちに否定することにはならない。

東京地裁は、妻が不貞関係を知ったのが夫の死後であることを指摘しつつも、不貞相手の責任を認めています。ただし、それは、妻の婚姻共同生活を平穏に送るべき利益が侵害されたことを、具体的に審理した上で判断をしています。単に不貞行為があったのみで、それが婚姻共同生活に負の影響を与えなかった場合は、責任を認めなかった可能性が十分にあります。

以上の通りであり、本判例を前提とした場合でも、不貞行為があれば、必ず慰謝料請求ができるわけではないと言えます。あくまでも、不貞行為によって、配偶者の婚姻共同生活を平穏に送るべき利益が、具体的に(事実レベルで)侵害されたということが必要になると言えます。

今回の弁護士からのアドバイス

離婚後に配偶者の不貞行為を知ったとしても、、、

☑️当然に不貞相手に慰謝料請求ができるわけではありません!

☑️婚姻生活の平穏が、不貞行為によって具体的に侵害されたかどうかがを事実レベルで検証して判断することになります!

弁護士の本音

プロキオン法律事務所
弁護士のホンネ

ネットの記事では、離婚後に不貞行為の事実が発覚した場合でも慰謝料請求を当然にできるかのように書かれています。
しかし、裁判例を見れば全くそういうわけでないことは、本文をご覧いただければすぐにお分かりいただけると思います。

より正確な知識と理解が広まることを期待したいと思います。

本記事が皆様の男女問題解決のためにお役に立てましたら幸いです。
当事務所では無料相談も承っているので、どうぞお気軽にお問い合わせいただければと思います。

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