別居中の配偶者がいる人と交際をしても大丈夫?その判断基準とは?

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として2015年に設立。翌年東京にも事務所開設。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回の記事では、交際相手として考えている人がいるが、その人が配偶者と別居はしているものの、まだ婚姻中である場合に、交際をしても大丈夫なのかを解説します。

1 婚姻関係が破綻していれば、交際をしても問題なし

日本では、他の先進諸国とは異なり、離婚に高いハードルがあります(別居期間として3年から5年が要求されるなど)。そのため、夫婦のどちらかが離婚に応じない場合、別居後も数年単位の期間が続くことがあります。そうした状況にある既婚者に対して、恋心を抱いてしまうこともあるでしょう。

そうした既婚者を好きになってしまった場合、交際に至っても良いのでしょうか?

結論としては、形式的には婚姻中であっても、すでにその方の婚姻関係が破綻していれば、交際をしても責任を問われることはありません(最高裁平成8年6月26日判決)。

ただ、相手の「婚姻関係が破綻しているかどうか」の判断は難しいのも事実です。すでに別居をしていれば良いというわけでもありません。別居をしてから一定の期間が必要ですし、別居に至る経緯や、その後の経過も重要です。

そこで、以下、最近の裁判所の判断をいくつかご紹介して、裁判所の判断基準をご紹介したいと思います。

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2 裁判所はどんな風に判断してる?

(1)別居後数ヶ月後だと破綻は認められない傾向

まず、別居してから数ヶ月程度の時期は、未だ婚姻関係は破綻していないと判断する裁判例が多数派です。

最近の裁判例で言うと、

・令和4年12月15日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)

別居後1ヶ月半後の時点について、婚姻関係の破綻を否定

・令和4年1月17日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)

別居後1ヶ月の時点について、婚姻関係の破綻を否定

・令和3年11月26日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)

別居後2ヶ月の時点について、婚姻関係の破綻を否定

といった例が挙げられます。いずれも、別居直後の時期にあたり、その段階で不貞が開始すれば、不貞相手も慰謝料の支払い義務を負うことになります。

また、令和3年5月10日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)は、別居後1年を経過した事案ですが、婚姻関係の破綻が否定され、やはりその時に不貞があった点について、慰謝料の支払責任が認められています。

(2)別居後3年以上経過していれば、破綻は認められやすい

一方で、別居後3年以上を経過している事案では、婚姻関係の破綻が認められやすいです。最近の例でも、令和4年8月5日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)は、別居後3年が経過した事案で、婚姻関係の破綻を認めています。

実際、不貞行為の慰謝料事件ではなく、離婚請求事件であっても、別居してから3年以上経過していれば、婚姻関係の破綻が認められ、離婚も認容される傾向にあります。

ただ、離婚請求の場合は、別居期間が3年経過していても、まだ婚姻関係は破綻していないとされるケースもそれなりに多くみます。裁判所側は厳密には意識していないと思いますが、不貞相手に対する慰謝料請求事件の方が、婚姻関係の破綻を認めてくれやすいように思われます。

(3)別居1年〜3年未満はグレーゾーン

一方で、別居してから1年以上、3年未満の間については、かなりグレーゾーンと言えるでしょう。婚姻関係が破綻しているかどうか、裁判所または裁判官によって判断が変わります。

最近の例で言うと、令和3年5月10日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)は、別居後1年を経過した事案で、婚姻関係の破綻が否定されました。一方で、令和4年3月29日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)は、別居後2年経過後の出来事について、婚姻関係破綻後の事情としています。

こうしたケースでは、別居の経緯や、別居後に夫婦の交流があったかどうかなど、別居期間以外の具体的な事情が重要になってきます。

(4)双方離婚を希望している場合は破綻が認められやすい

一方、別居期間が短い場合でも、夫婦の双方が離婚を希望している場合は、破綻が認められやすいと言えるでしょう。

令和3年6月17日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン搭載)は、別居後1ヶ月の時期について、婚姻関係の破綻を認めています。この事案では、妻が子供を連れて別居を行った後、夫もその1ヶ月後に調停を申し立てた事案です。双方が婚姻関係を否定する行動に出ているため、別居後わずか1ヶ月後(調停の申立をした時点)で、婚姻関係は破綻したと判断されました。

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3 裁判所の考え方

婚姻関係が破綻しているかどうかは、婚姻関係が修復不可能な状況に至っているかどうかによります。

その判断にとって、客観的な指標となるのが別居期間です。これは客観的に明瞭なものなので、判断の基準となりやすいものと言えます。

一方、別居期間がなくても、「婚姻関係が修復不可能な状況に至っている」のであれば、婚姻関係は破綻したとみなされます。

例えば、東京高裁令和3年11月4日判決(ウエストロー・ジャパン)は、夫婦の別居日時点で婚姻関係は破綻したものとみなしています。別居の数ヶ月前から離婚を考えている旨打診をしていた経緯などがあり、そのほか判決文に現れていない事情が考慮されたものと思われます。

ただ、これは多くの裁判例と比較して見ると、特異な例といえます。上に見た各裁判例を見ると、一般的な傾向としては以下のようにまとめることができるでしょう。

☑️別居後数ヶ月以内は婚姻関係は破綻してないとされる可能性が高いです!

☑️別居後3年以上であれば、婚姻関係は破綻しているとされる可能性が高いと言えます!

☑️別居後1年以上、3年未満はグレーゾーンで、別居期間以外の他の具体的な事情(別居の経緯や別居後の関係性)が重要と言えます!

別居期間以外の具体的な事情としては、①別居前から断続的な離婚の話し合いがなされていたとか、②同居期間中、相手からモラハラまがいな言動が頻繁に行われていたとか、③別居後に夫婦のやり取りは皆無であった、などといったものが考えられます。

今回の記事が、すでに別居をしている既婚者との交際を真剣に検討している方のお役に立てましたら幸いです。

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

本文で紹介した、令和3年11月4日の東京高裁判決は、別居日には婚姻関係が破綻していたとする、極めて特異な例です。判決文を読んでも、他の同種事件と殊更異なる部分も見当たりません。判決文には現れていない特別な事情が、証拠類などには出ているのかもしれませんが、気になるところです。

基本的には、すでに別居中とはいえ、既婚者との交際は、慰謝料請求をされるリスクを伴います。法的に問題がないかを判断することは非常に難しいかもしれません。しかし、それぞれの人生の責任は、その人しか取ることはできません。そうした人生の岐路にある方に、今回の記事が少しでもお役に立てましたら幸いです。

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