
また、ご相談の予約をお受けする際に、弁護士から通知書が届いてしまったのですぐにでも相談に乗って欲しいと焦っている方々もいらっしゃいます。
特に、男女問題に関して言えば、不倫をしてしまい、不倫相手の夫や妻から、弁護士を通じて内容証明郵便にて通知書が来る場合が多いですね。
今回は、この内容証明郵便というものについて、そして内容証明郵便を利用した通知書によく記載されている内容について、丁寧に解説させていただきたいと思います。
内容証明郵便ってそもそも何?
弁護士がよく利用する内容証明郵便。これは、日本郵便株式会社が提供しているサービスで、差出人が受取人に対して出した手紙の内容を証明してくれるものです。
通常、郵便の内容は郵便局すら確認できないように封がなされ、郵便局側も断じて内容を確認することはありません(できません)。
しかし、この制度では、差出人の出した手紙の内容を、郵便局においても把握しておいてくれます。そうすると、後から何か裁判などになった場合、その手紙には確かにこうした内容が書かれていた、ということが証明できるわけですね。
そして、どうしてこうした内容を証明する必要があるかというと、最も大きなものは、時効です。
例えば、不倫であれば、慰謝料請求の時効は配偶者の夫(又は妻)が不倫を知った時から3年です(原則)。そして、3年経過間際に慰謝料の請求をすれば、その後6か月までは時効にならず、それまでに裁判を提起すれば良いとされます(民法153条)。
この「請求」を確実に行ったことを証明するために、こうした内容証明郵便が利用されています。
なお、ちゃんとそうした手紙が受取人に到達したことを証明するための制度として、配達証明というものがあり、これも日本郵便株式会社が提供しているサービスです。
通常、内容証明郵便で手紙を出すときは、この配達証明制度も利用して、①手紙の内容と、②その手紙が受取人の元に届いたこと、を郵便局に証明してもらいます。
そういうわけで、時効の成立がまだ数年先であり、時効を気にする必要がないケースでは、実際のところ内容証明郵便を利用する意味はほとんどありません。

ですが、手紙の形式にルールがあり、さらに電子内容証明であると封筒も郵便局側が用意してくれるので、なんとなく格式が高く見えます。
そのため、ほとんどの弁護士は、最初に相手方に送る通知書で、この内容証明郵便を利用しています(かくいう私もそうなのですが。。)。
「通知人本人に対する直接のご連絡はくれぐれもお控え下さい。」
弁護士からの内容証明郵便で届いた通知書には、題名として、「通知書」、「連絡書」、「受任通知」などと記載されていることがほとんどでしょう。こうした題名は、「通知」以上の意味はないので、早速内容を読んでいきましょう。
まずは、その弁護士がある人の代理人になった旨が記載されていると思います。その上で、何の問題について依頼を受けているのかが記載されているはずです。
例えば、不倫慰謝料のケースですと、「当職は、●●氏より貴殿に対する不倫慰謝料請求に関して依頼を受けました代理人弁護士です。」とか、「当職は●●氏の代理人として、以下の件についてご連絡いたします。」などと記載されています。
そして、よく皆さんが気にしているのは、次の文言です。
「今後は本件については当職が窓口になりますので、通知人本人に対する直接のご連絡はお控え下さい。」
弁護士から言われると、手紙を送ってきた弁護士を雇った本人と直接連絡をしてはならない法的な義務があるように思いがちですが、必ずしもそういうわけではありません。
ただ、弁護士が窓口になると言っている以上、本人に直接連絡をしても、全て弁護士に依頼しているので何も言えないと言われるだけだと思います。また、弁護士と本人の双方が窓口になってしまうと、話し合いの機会が混乱してしまうでしょう。代理人となった弁護士に連絡をするようにしましょう。
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「本書面到達後2週間以内に下記銀行口座に振り込む方法でお支払いください。」
不倫慰謝料に関する内容証明郵便では、不倫の事実があることが述べられた上で、金額として、300万円とか500万円の請求がされ、「2週間以内に下記銀行口座に振り込む方法によりお支払いください」などと記載されることが良くあります。高圧的で失礼な文ですよね(笑)。
しかし、実際のところ、弁護士は支払いが行われることは期待していません(さらに言ってしまうと、配偶者でもない不倫相手が、300万円以上の慰謝料を払わなければならないケースはめったにありません)。
弁護士としては、まずは請求をすることに意味があるのです。
特に時効が間近である場合は、正式に金銭の支払い請求をしたという事実を証明しなければならないことがありますので、なおさら意味を持ちます。
弁護士は、手紙の受取人がそれを見て素直に支払ってくれるとは思っていません。その手紙を受け取った人がそれに対してどのように対応をしてくるのかを待っているのです。
その弁護士宛に連絡をすれば、金額面や支払い方法の話し合いに応じてくれる余地は十分にあります(通常は応じてくれます。)。

「通知人の配偶者である●●氏には手段を問わず接触しないよう要請します。」
不倫慰謝料の事件では、通知書の後半で、通知人本人の配偶者に接触をせぬよう警告をする文が記載されることが多くあります。
もっとも、これも特に法的な意味はほとんどありません。少なくともこれによって何らかの法的な効果が発生するものではありません。
弁護士による警告文ということで、何らかの法的な意味があるように聞こえるものですが、そういうわけではないのです。
ただし、こうした通知書が届いたにもかかわらず、不貞関係を継続させたような場合には、慰謝料の増額事由になる可能性はあります。一方、単なる事務的な連絡のやりとりを継続させただけであれば、実際上の問題は少ないでしょう。
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「なんらご連絡なき場合は法的措置を執ることを検討せざるを得なくなります。」
通知書の最後には、法的措置を執る可能性を匂わせる文で締めくくられます。
まずは回答期限として2週間程度を設定する通知書が多いと思います。例えば、「本書面到達後、2週間以内に担当弁護士宛までご連絡くださいますようお願いします。」などというものです。
が、この文があることによってその期限内に連絡をしなければならない法的な義務が生じるわけではありません。期限を区切らなければ問題が宙ぶらりんになってしまうためにすぎません。
そして、期限の設定の上で、「なんらご連絡なき場合は法的措置を執ることを検討せざるを得なくなります。」と来ます。
これは、本気の場合ももちろんあります(そして、そうでない場合もあります。)。ですが、できれば話し合いで問題を解決させたいというのが弁護士側のホンネでしょう。

弁護士からの通知書といっても、それは単なる手紙ですから、裁判所から来る書類に対してほど身構える必要はないでしょう。
その通知書に記載された内容を読み、それを書いた弁護士が何をしたいのかを見極め、対処を考えれば良いと思います。
その後、実際にどのように行動すればよいかはケースによって全く変わってきますので、やはり弁護士への相談は必要になるでしょう。