「夫から暴力を受けている。保護命令を出してもらいたいけどどういう場合に申し立てをすればいいのかわからない。」
「保護命令の種類ってどういうのがあるのかわからない。」
など、保護命令という言葉は聞くけど、どういうものなのか良く分からないという方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、
・保護命令の申し立てはどんなときにできるの?
・保護命令が出されるまでの流れは?
・保護命令の種類ってどういうのがあるの?
についてお話させていただきます。
1 保護命令の申し立てってどんなときにできる?
このような場合、すぐに保護命令を申し立てることができるのでしょうか。
いいえ。単に、暴力や暴言があったというだけでは足りません。
保護命令を申し立てるためには、
①配偶者から暴行罪又は傷害罪にあたるような暴力や、生命身体に対して害を与える旨の脅迫を受けたことがあり、
かつ、
②今後、配偶者からの身体に対する暴力によりその生命身体に危害を受ける可能性が大きいとき、
あなたは保護命令の申し立てをすることができます。
2 保護命令の申し立ての流れ!
保護命令の申し立てをするにあたっての流れは概ね以下のとおりとなります。
- 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に相談し保護を求める
↓ - 裁判所に保護命令の申し立てをする
↓ - 裁判所から、センター職員又は警察に対し書面の提出を求め、必要があれば説明を求める
↓ - 申立人が審尋を受ける(申立人が依頼した弁護士も同席できます)
↓ - 相手方が審尋を受ける(相手方が依頼した弁護士も同席できます)
↓ - 申立てに対する決定が出される
上記の①ではなく、公証人面前宣誓供述書の作成する方法もありますが、手数料がかかったり、予約に時間を要したりするため、センターの職員や警察職員に相談をした方が簡便かと思います。
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3 保護命令の種類って何がある?
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下では「DV防止法」と言います。)に定められている保護命令の種類は、以下のものになります。
なお、保護命令に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑罰を負います(DV防止法29条)。
接近禁止命令(DV防止法10条1項1号)
これは、6ヶ月間の間、夫があなたの身辺につきまとったり、あなたの居住する家(同居している家は除きます。)や勤務先をうろついたりすることを禁止する命令です。
退去命令(DV防止法10条1項2号)
これは、同居している場合に、あなたが引越しをする準備等のために夫に対して2ヶ月間家を出て行くこと、及びその期間夫に家をうろつくことを禁止する命令になります。
子への接近禁止命令(DV防止法10条3項)
これは、夫が、子供を保育園から連れ去る可能性があるなど、子供に関してあなたが夫と会わざるを得なくなる状況が生じることを防止するため必要があると認められたときに、6ヶ月間、あなたと同居している子供につきまとったり、住居や学校など子供がいる場所の付近をうろつくことを禁止する命令になります。
親族等への接近禁止命令(DV防止法10条4項)
これは、夫があなたの親族等の住居に押しかけるなど親族等に関してあなたが夫と会わざるを得ない状況が生じることを防止するため必要があると認められたときに、6ヶ月間、親族等の身辺につきまとったり、住居や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令になります。
電話等禁止命令(DV防止法10条2項)
これは、夫からあなたに対する面会の要求や深夜の電話・メール送信など一定の迷惑行為を禁止する命令になります。
これらの命令が下されたにもかかわらず、違反をすると、1年以下の懲役または1000万円以下の罰金という刑罰を負う可能性が出てくるわけです。
私自身の経験からすると、裁判所の判断は少し緩めで、それなりの状況証拠があり、妻側の言い分がそれなりに辻褄があっていれば、認められる傾向にあると思います。
もっとも、それは良い部分も悪い部分もあり、例えば、保護命令が発令されれば、夫と子供の面会交流が事実上難しくなります。影響が大きいため、裁判所側の舵取りも難しいことと思います。
まとめ
・保護命令の申し立ては、単に暴力を受けたことがあるというだけでは足りず、今後、配偶者からの身体に対する暴力によりその生命身体に危害を受ける可能性が大きいという事情が必要!
・保護命令の申し立ての前には、配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に相談する必要がある!
・保護命令には複数の種類があり、相手がそれに違反すると刑罰が科せられる。
弁護士のホンネ
本文でお話ししたとおり、保護命令が出されるとそれに違反した場合、相手は刑罰が科され重大な不利益を負うことになります。
保護命令の申し立ての際には、裁判所に認めてもらえるように、暴力や脅迫の証拠を揃えた上で申し立てるようにしましょう。
証拠としては、相手の暴力により怪我をした部位の写真や診断書、相手が物を破壊した場合にはその破壊された物の写真、相手からの脅迫のメールなどが有用です。また、当時から書き溜めていた日記などがあれば証拠として重要になります。