不貞をしてしまっても、配偶者から「宥恕」されれば有責配偶者にはならない?

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として2015年に設立。翌年東京にも事務所開設。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回の記事では、もしあなたが不貞(不倫)をしてしまっても、その後配偶者から「宥恕(ゆうじょ)」されれば、その後、婚姻関係が悪化した場合に離婚請求が認められることについて解説したいと思います。なお、宥恕とは、「許された」ということを意味します。

1 一般論として、有責配偶者からの離婚請求は認められない

有責配偶者(多くの場合は不貞をした側の配偶者)からの離婚請求は、原則として認められないというのが現在の日本の裁判所の運用です(最高裁昭和62年9月2日判決)。

離婚が認められるためには、夫婦の年齢や同居期間と比較して別居期間が長期に及び(一般的には8年から10年程度)、未成熟の子がおらず、さらに離婚をしても相手配偶者が貧困などに陥らないことが必要です。

こうした厳しい要件をクリアすることは容易ではありません。そのため、不貞行為が存在すると、配偶者と離婚をしたい気持ちがあっても、極めて厳しい状況に置かれることになります。

ちなみに、諸外国ではこのような取り決めをしているケースは乏しく、1年ないし2年程度の別居期間があれば離婚請求を認めるなど(関係悪化の原因は問わない)、離婚の自由を尊重した運用がなされています。我が国でも、いずれは運用が変わるものと期待されます(関連記事:https://riko-net.com/divorce-column/change-in-precedent)。

2 配偶者から「宥恕」されれば、かつての不貞行為を問題にすることは許されなくなる

このように、不貞行為は「離婚ができなくなる」という甚大な効果を生みます
一方で、裁判所の運用では、一度不貞行為が宥恕(許されること)されれば、その後は不貞行為を問題にすることはできないとされています。

なお、この見慣れない「宥恕」(ゆうじょ)という単語は、明治民法814条2項で使われていたため、現在も法律用語として利用されています。

宥恕した場合、その後不貞行為を問題にすることはできない点については、東京高裁平成4年12月24日判決が、以下のように述べています。

(東京高裁平成4年12月24日判決 判時1446号65頁)

ところで、旧民法八一四条二項、八一三条二号は、妻に不貞行為があつた場合において、夫がこれを宥恕したときは離婚の請求を許さない旨を定めていたが、これは宥恕があつた以上、再びその非行に対する非難をむし返し、有責性を主張することを許さないとする趣旨に解される。この理は、現民法の下において、不貞行為を犯した配偶者から離婚請求があつた場合についても妥当するものというべきであり、相手方配偶者が右不貞行為を宥恕したときは、その不貞行為を理由に有責性を主張することは宥恕と矛盾し、信義則上許されないというべきであり、裁判所も有責配偶者からの離婚請求とすることはできないものと解すべきである。本件において、既に認定したところによれば、被控訴人は、控訴人の丙川との不貞行為について宥恕し、その後四、五か月間は通常の夫婦関係をもつたのであるから、その後夫婦関係が破綻するに至つたとき、一旦宥恕した過去の不貞行為を理由として、有責配偶者からの離婚請求と主張することは許されず、裁判所もこれを理由として、本訴請求を有責配偶者からの離婚請求とすることは許されないというべきである。

つまり、不貞をした配偶者を一度は許した以上、その後関係が悪化して離婚問題になったとしても、前の不貞問題をぶり返すことは信義に反するとして認めないということです。

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3 「宥恕」されたと言えるかどうかが問題となる!

とはいえ、不貞行為を許した、すなわち宥恕したかどうかは、簡単に判断できるものではありません。

(1)書面で不貞行為を許している場合

相手配偶者が、「不貞行為のことはもう許します今後問題にはしません」と書面で一筆記載するなどすれば、宥恕したと判断されると思われます。これが一番わかりやすいパターンです。しかし、そのように明確な形で「許す行為」が残されるケースは少ないでしょう。

(2)しっかりと話し合いの機会を持ち、関係を修復できた場合

不貞行為が発覚した後、しっかりと夫婦で話し合いの機会をもち、婚姻の継続に向けて努力をしていくことでお互いに合意し、実際に関係が修復されたと評価できる関係になれば、不貞行為は宥恕されたものとみなされるでしょう。

逆に、話し合いの機会を持ったが、その後やはり夫婦関係が修復できなかった場合は、宥恕とは認められません。

(3)以前の不貞が話題にされなくなっただけの場合

また、不貞行為が話題にされなくなったというだけでは、宥恕されたとはみなされないと思われます。

明確な形で宥恕行為や確かな話し合いの記録が残っていない場合は、少なくとも、不貞行為が話題にされなくなってから長期間にわたり平穏な婚姻生活が継続していたことは必要と言えるでしょう。

このようなケースであれば、宥恕されたと評価される可能性が出てくるでしょう。

今回の弁護士からのアドバイス

☑️有責配偶者からの離婚請求は、別居期間が8年〜10年ないと認められません!

☑️相手配偶者が不貞を許してくれた場合(宥恕してくれた場合)は、その後婚姻関係が悪化した場合、かつて不貞をしていた側も離婚請求が可能です!

☑️とはいえ、相手が許してくれたかどうか(宥恕してくれたかどうか)は簡単に判断できるわけではありません。少なくとも、許してくれた後、平穏な婚姻生活に戻ったことが必要と言えるでしょう!

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

宥恕(ゆうじょ)の存在を裁判所が認めてくれるかどうかは、相手の配偶者がその事実を争わないかどうか、宥恕の事実を示す証拠や状況があるかどうかによります。しかし、実際には宥恕の存在が全面的に争われて判断が下された事例は乏しいのが通常です。本文では、宥恕が認められる場合について記載をしましたが、過去の裁判例や、当事務所の裁判での経験を踏まえたものになります。

今回の記事が皆様の離婚問題解決のお役に立てましたら幸いです。

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