プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として2015年に設立。翌年東京にも事務所開設。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)
今回は、離婚裁判でかかる時間について解説します。
現在離婚について交渉や調停を行っている方で、裁判に持ち込むとどの程度期間がかかってしまうのか気になっている方は、ぜひ最後までお読みください。
1 なぜ離婚裁判でかかる時間が重要なの?
離婚裁判が長くなることで、もっとも利害に直結するのは、婚姻費用の累計額です。
基本的に、夫婦の関係がいかに破綻している場合であっても、収入が高い配偶者は低い方に婚姻費用を支払わなければなりません。そして、婚姻費用の支払いは、実際に離婚に至るまで続きます。離婚が裁判で争われている場合も、婚姻費用の支払いが続くことになります。
そのため、特に、婚姻費用を支払っている側の方は、離婚裁判がどのくらいの期間続くのか、極めて重要な関心事になります。それによって、交渉や調停で解決をさせた方が良いのか、それとも離婚裁判に持ち込んで納得できる条件で離婚すべきか、判断することになるからです。現在提示されている条件が多少納得できない場合であっても、離婚裁判が続く限り払わなければならない婚姻費用を考えると、我慢して応じるという判断もありうるわけです。
したがって、離婚裁判がどの程度続く見込みなのか、できるだけ正確に見通せられれば、正しい判断に近づくことができます。
2 実際のデータ
それでは実際のデータを見てみましょう。
『令和4年司法統計年報家事編』によれば、令和4年の人事訴訟事件(離婚が89.3パーセントを占めます。)の平均審理期間は、14.3ヶ月でした。
つまり、1年2ヶ月といったところです。
上記司法統計によれば、訴訟は判決で終わるのが40パーセント、和解で終わるのが34.8パーセント、取り下げで終了するのが22.2パーセントとなっています。判決にまで至るのは全体の半分以下であることがわかります。
そして、上記の平均審理期間である1年2ヶ月というのは、和解での解決も含んでいます。和解は、判決に至るまでのどこかの時期に、裁判官の采配で当事者を合意に至らせる手続きです。逆に言えば、判決は、和解では解決にならない場合に行われますので、判決で終わるケースでは和解の場合よりも長期になります。
そのため、判決での解決を想定するのであれば、裁判は、平均でも1年6ヶ月程度続くものと理解しておいた方が良いでしょう。
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3 弁護士としての現場感覚
それでは、私が実際に担当した裁判の審理期間と、その原因をいくつかご紹介します。
・Aさん
こちらの方は、中年のご夫婦ですが、婚姻期間が短く、子供なし・財産ほぼなしという状況でした。離婚自体が争いになった事案です。
裁判の期間は1年4ヶ月でした。
最終的には和解で解決に至りましたが、尋問手続まで進んでいます。尋問手続は、裁判官が、当事者から直接話を聞く手続きです。裁判手続の終盤、判決の直前に行われます。
したがって、この件は最終的には和解で終了しましたが、実質的には判決での解決の場合と期間の点では差がないものと言えるでしょう。
子供もおらず、財産関係でそれほど揉めなくとも、フルコース(尋問手続を経て判決まで)で行けばこの程度の時間はかかるということです。
・Bさん
こちらの方も、中年夫婦、子供なし・財産なしで、離婚自体争いとなったケースです。
期間は1年2ヶ月でした。
このケースは、判決まで行きました。
子供もおらず、財産分与の話もなく、ただ離婚が認められるかどうかが争われました。
和解の話し合いもほとんどない中、尋問手続きを経て判決に至りました。争点がほとんどない場合でも、判決に至る場合は、やはり1年以上かかることがわかります。
・Cさん
こちらの方は、AさんやBさんとは異なり、お子様もおられ、財産分与の金額でも争いがあったパターンです。
しかし、離婚自体についてはお互いに合意をしているため、早期の段階で、裁判官仲裁のもと条件交渉に入れました。
そのため、尋問手続きに至ることなく、和解で終了しました。
裁判期間は11ヶ月です。
離婚自体に争いがないパターンでは、1年未満で離婚に至れる可能性が高いことが見て取れると思います。
・Dさん
こちらの方は、離婚自体争いがあることに加え、子供もおり、さらに財産分与の条件でも主張に隔たりがあった事案です。
最終的には和解で解決となりましたが、とにかく時間がかかりました。
裁判期間はちょうど3年間(36ヶ月)です。
尋問手続きには至りませんでしたが、離婚自体に争いがあり、子供との面会の条件や財産分与の条件でも隔たりがあるケースでした。こうしたケースでは審理に時間がかかります。
したがって、離婚・子供・財産など、争点が多いケースでは、裁判期間が長期化するリスクがあることを覚悟する必要があると言えるでしょう。
・Eさん
こちらの方は、財産の調査に時間がかかったケースです。
裁判期間は2年3ヶ月でした。
形式的には離婚自体も争いになりましたが、実際上は被告側も離婚やむなしとのスタンスでした。また、子供もいましたが、親権争いはありませんでした。
むしろ、財産分与の対象となる財産が十分に開示されていないとして、裁判が長期化したケースです。
財産資料が他方から十分に開示されてない場合には、その相手側が、文書送付嘱託の申立や調査嘱託の申立など、証拠を収集するための手続きを申し立てるケースが多いです。
そのため、裁判期間の相当部分が、財産資料の収集に費やされることになります。
このような場合では、財産資料が全て開示された後に、初めて具体的な離婚条件の話し合いに進むことになります。したがって、財産資料が適切に開示されているかどうかで争いになるケースでは、時間がかかることになります。
今回の弁護士のアドバイス
離婚裁判でかかる期間は、、、
☑️統計上、平均で1年2ヶ月です!
☑️判決に至る場合は、平均でも1年6ヶ月程度を見込んでおく必要があります!
☑️離婚自体に争いがなければ、1年以内に和解で解決することもあります!
☑️離婚、子供、財産分与など、争点が多いほど審理が長期化する傾向にあります!
☑️財産資料の開示を適切にしないと、裁判が長期化する可能性があります!
弁護士の本音
以上、裁判での争いの内容によって、裁判の期間が短く済んだり、逆に長期化することがおわかりいただけたのではないかと思います。
婚姻期間が長くなれば、それだけ財産資料も多くなります。特に、婚姻費用をもらっている側は、裁判が長期化したとしても経済的な損にはなりませんので、財産資料の収集活動を時間をかけて行う傾向にあります。
財産を分与する側としては、適切に資料を開示することが、早期の解決、ひいては経済的な負担の軽減につながると言えると思います。
今回の記事が皆様の離婚問題の解決のご参考になりましたら幸いです。
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