不貞をして自宅を出て行った場合、婚姻費用の算定で住宅ローンは考慮できない!重要判例解説:令和5年5月19日東京家裁立川支部決定

今回紹介する判例は、夫が不貞をして自宅を出た場合、婚姻費用の算定において、夫が自宅の住宅ローンを負担している事実を考慮することは認められないとした東京家裁立川支部の決定です。

1 婚姻費用の算定で考慮される住宅ローン(通常の場合)

最近の家庭裁判所の調停・審判実務では、別居した夫が、妻の住んでいる自宅不動産の住宅ローンを負担している場合、婚姻費用額から妻の住居費関係費を差し引くという扱いをします。婚姻費用の本来の計算では、夫と妻双方が自分の収入額に応じた住居関係費を負担していることが前提になっているからです。

具体的には、妻の収入に応じた住居関係費(平成25年から平成29年にかけて行われた国の家計調査の平均値に基づきます。)を、婚姻費用の計算結果から差し引きます。

例えば、妻の年間収入に応じた住居関係費は以下のとおりです(『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』資料2 法曹会)。

200万円未満→2万2247円
250万円未満→2万6630円
300万円未満→3万5586円
350万円未満→3万4812円
400万円未満→3万7455円
450万円未満→4万5284円
500万円未満→4万6562円

夫の立場からすると、例えば、婚姻費用の計算上、月額10万円を妻に支払わないといけないとしても、住宅ローンも負担している場合は、その負担は過酷です。そのため、上記のように、妻の住居関連費が婚姻費用から差し引かれることは、夫にとってはありがたく感じられるでしょう。

ところが、夫が不貞をして自宅を出る形で別居に至った場合、その扱いは変わってきます。

2 東京家裁立川支部令和5年11月19日決定(ウエストロー・ジャパン搭載)

夫が不貞をするなどして自宅を出た場合も、住宅ローンを負担している場合に妻の住居関係費を差し引くことができるのかについては、これまでも議論がありました。

妻の住居関連費の控除は、公平の観点からなされる例外的な調整であるため、別居に至った責任がある夫の利益になる形で調整をすることに対しては、疑問の声があったわけです。

そして、東京家裁立川支部は、令和5年11月19日の決定で、以下のように判断をして、妻の住居関連費を控除することを認めない決定を下しました。

(東京家庭裁判所立川支部令和5年11月19日決定)

相手方は、相手方が申立人が居住する自宅の住宅ローンを負担していることを婚姻費用分担額の算定おいて考慮すべきであると主張する。この点、住宅ローンについては、公平の観点から権利者に留保されている住居関係費の限度で調整をすることは考えられる。しかしながら、義務者が不貞関係を生じて自宅を出て行った場合、これによって権利者に不利益を負わせるのは疑問であり、信義則上、分担額を減じないのが相当というべきである。

公平の観点」で考えると、別居の原因を作り出した夫に対して有利に婚姻費用額を調整をすることは相当でないという判断です。

最近の裁判例は、上記と同様な判断を下す傾向にあるようです。

他の裁判例も以下にご紹介します。

3 横浜家裁令和5年11月30日決定(令和5年(家)第907号婚姻費用分担申立事件)(公刊物未搭載)

令和5年11月30日の横浜家裁の決定においても、以下のとおり、別居した夫が住宅ローンを負担しているとしても、別居の原因を作り出した夫に有利に婚姻費用額を調整することを否定しています。

(横浜家庭裁判所令和5年11月30日決定)

申立人が、別居前に相手方と不仲になっていたとしても、相手方の暴力により右鎖骨遠位端骨折等の傷害を負い、警察の介入により、相手方が自宅を出て別居を余儀なくされたのであるから、別居の主たる原因は相手方にあるといえ、信義則に照らし、上記住居関係費を相手方が分担すべき婚姻費用の額から控除するのは相当ではない

別居した夫が住宅ローンを負担している場合に、妻の住居関連費を差し引く形で婚姻費用を調整するという方法は、調停実務において広く行われています。そのため、これらの裁判例は、今後の調停実務における指針として存在価値を発揮する可能性があります。注視していきたいところです。

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