【噂は概ねその通り】離婚制度の不都合な真実(親族・監護編)

1 「なぜこんなことが罷り通る?」という叫び

 どのような分野においても、これって本当?こんなことが罷り通ってるの?と驚くことがありますが、離婚制度も例に漏れません。

 これまで、おびただしい数の依頼者の離婚問題に携わってきましたが(私自身は常に70名ほどの方の離婚・男女問題と対峙しています。)、多くの方々から、「こんなことが罷り通ってるの!?」と驚かれることが多々あります。しかも、それによって子供と離れ離れになったり、一財産を失うことにもつながり得ますので、事態は深刻です。

 特に離婚制度は、かつての家制度の名残があったり、一方で、進歩的な考えが行きすぎたりしがちな面があったりするなど、さまざまな要素に翻弄されています。そのため、一方当事者から見ると、どう考えても納得できないという部分もあることは否定できません。

 今回のシリーズでは、それを皆さんに知ってもらい、離婚制度がこのような形のままで良いのか、ぜひ考えるきっかけにしていただければと思い、記述しました。また、実際に離婚問題の当事者の方には、制度のあり方を知ってもらい、それを前提にどのような行動を取るべきか検討する機会にしてくださればと思います。
 今回は、親権・監護編です。

2 不都合な真実(親権・監護編)

(1)不貞をした妻に親権も取られる

 まずは結論から言いましょう。妻に不貞されて離婚することになっても、親権は普通に妻に取られる可能性が極めて高いです(妻がメインで育児を担っていた場合)。

 多くの夫の方は、離婚する原因を作ったのは妻なのに、なぜ自分が子供とも離れ離れになってしまうのかと憤ります。
 もっともな思いかと思いますが、裁判所は、夫婦問題と親子問題は別、という考えを根底に持っています。
 不貞というのは、夫婦の婚姻契約に基づく貞操義務違反であり、夫婦の問題ですので、親子問題には関係ありません。
 そのため、妻の不貞により離婚になる場合、どちらが子供の親権を持つべきかという判断をする際、妻の不貞の事実はほとんど判断材料にはなりません。もちろん、不貞行為にのめり込んで育児が疎かになる場合は別ですが、その場合はまさに子供への関わり方の問題であり、親子問題です。

 しかし、浮気されて被害者である夫にとっては、結果として、子供とも離れ離れにならざるを得なくなるという、究極的なダメージを追加して受けるわけですので、夫からしてみればとんでもないことと言えるでしょう。しかも、後述する通り、面会交流は、子供を監護している妻が任意で協力しないと、実際には実現できません。

 そのため、場合によっては、

①妻に不貞されて離婚になった挙句、
②子供の親権は妻に取られ、
③子供との面会交流も実現できず、子供と半永久的に会えなくなった上で、
④子供の養育費については支払う義務を負い続ける

という、いわば地獄のような事態に陥ることも、決して珍しくありません。

 昨今、元アイドルの方が不貞をしたにも関わらず監護者の地位を勝ち取ったといったワイドショー的な報道がありますが、上記裁判所の考え方からすれば、とても自然な結論といえます。夫が愛する子供とその後も会えるかどうかは、もっぱら不貞をしたとされる妻の意思一つにかかっています(後述します)。
 これは制度的な問題ですが、そこにメスが入る兆しはありません。この事態をどう評価するかは、皆さんの考えに委ねたいと思います。

(2)先に連れ去りをした者が親権を取れる傾向

 もし、同居中、夫婦のどちらも子供の監護を担っていて、その割合も半々程度であれば、子供を先に連れ去った側が親権を取れる可能性が高まることは否定できません。

 なぜなら、他の条件が同じであれば、現在どちらが子供を監護しているのかという点で連れ去った側が勝ってしまうからです。しかも、子供は生存本能がありますから、自分を監護している親の方に迎合する傾向を強く持っています。子供の意思という要素においても、連れ去った側に有利に働いてしまうのです。
 親権争いにおける最もダークな側面だと思いますが、皆さんにはこうした現状を知っていただく必要もあろうかと思います。

 ちなみに、弁護士が相談を受ける際、迷うのはこういう時です。連れ去りが違法とみなされることもあるため、連れ去りを推奨することはできません。一方で、先に連れ去った方が親権を取れる可能性が高いという事実は、裁判所の運用の問題として、情報提供せざるを得ないかもしれません。先に相手から連れ去られるリスクもあり、もしそうなった場合、親権獲得という意味では、ジ・エンド(終わり)だからです。弁護士によってその時のアドバイス内容は異なるでしょう。このようなジレンマを生じさせないためにも、裁判所においては連れ去りは原則NG(連れ去った側は親権を取得できない)という法則を打ち立ててもらいたいと切に願います。

(3)監護親の協力がなければ面会交流は実施できない

 最後に、面会交流についてです。

 別居や離婚をしても、月に1回程度は面会交流をして子供に会える、というのがこれまでは基本でした。
 しかし、最近は、月1回面会交流が実施できれば、とても良い方、というのが、我々実務家の肌感覚になってきています。

 かつて平成の終わりに、千葉家裁松戸支部が、面会交流に寛容(妻に子供と会う権利を極めて多く認める姿勢)である夫に親権を認めるという、画期的な判断を下したことがありました。面会交流の重要性を考慮したものとして、多くの実務家からは称賛されていたのですが、控訴審である東京高裁に覆されてしまいました(平成29年1月26日東京高裁決定。内容については、こちらをご参照ください。https://riko-net.com/trial-information/2018-1-26)。東京高裁は、親権を判断するに当たって、面会交流に寛容かどうかは、他の諸事情よりも重要性が高いとはいえないという位置付けをしたのです。
 この平成29年の判決後、実務においては、子供を連れ去った妻側が、面会交流に対してとても消極的になった傾向があるように感じます。それまでの事件は、相談をしたり依頼をしている弁護士から、面会交流を実施することが親権獲得のためにも重要であることを教示されており、そのために面会交流が実施されていたのでしょう。しかしこの判決をきっかけに、面会交流の実施は親権判断において補足的なものにすぎないことが決まりましたので、背後にいる弁護士のアドバイス内容も変化したと思われます。

 そのためか、別居後、妻側の報復措置として子供に会わせないという態度を取られることが、むしろ普通のことになったと思います。私自身も、男性側からも多く離婚事件の依頼を受けておりますので、これといった理由もなしに面会交流を拒絶されることも多く、悔しい思いをする日々を送っています。

 面会交流調停や審判制度があるはず、とお考えの方もいるかもしれませんが、それが十分に機能しているとは到底いえません。こちらの記事もぜひお読みいただきたいのですが(https://riko-net.com/divorce-children/arbitration-not-progressing)、面会交流をあくまでも拒否され続けた場合、審判で解決をすることになりますが、調停から審判に移行するまでも時間がかかり、審判に移行した後もすぐに判断が下るわけではありません。3年以上月日が経過してしまうケースも稀ではないです。その間に子供は成長して、もはや面会交流を行うような年齢では無くなってしまったり、監護親による子供への言い含みが完遂し、子供自身が面会交流を拒否するようになるのですね。

 こうした悲劇が起こらぬよう、裁判所(もしくは立法府)においては抜本的な制度改革を行なってほしと切に思います。

弁護士のホンネ

弁護士 青木
弁護士のホンネ

 いかがでしたでしょうか。婚姻制度や離婚制度のダークな部分を感じ取られたのではないでしょうか。残念ながら、以上は実際に実務に携わっている我々が感じているものであり、近い将来に抜本的な改革がなされる見通しもありません。
 こうした制度を前に、何ができるのか、何をすべきかということを考えて行かざるを得ないのです。
 今後も、常に情報をアップデートしながら、離婚問題の最前線の状況をお届けできればと思います。

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