プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
夫側、妻側、それぞれに立場に応じて弁護活動を行っています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)
今回は、別居をした後、子供に会うために面会交流調停を裁判所に申し立てた方が良いのか、それとも申し立てず、現状を維持した方が良いのかについて、解説します。
別居後、子供と会いたい場合に面会交流調停を申し立てる手段があることについては、ご存知の方も多いと思います。しかし、面会交流調停で子供に会える頻度の相場が月に1回程度にとどまることや、面会交流制度自体にも限界があることも良く知られています。そこで、面会交流調停を申し立てなくても良い場合や、申し立てた方が良い場合について、解説したいと思います。
1 1ヶ月に2回以上面会できているのであれば、申し立てる必要はない。
まず、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てたとしても、月に2回以上の面会交流の実施が決まることは極めて稀です。
したがって、別居後、現時点ですでに月に2回以上の面会ができているのであれば、家庭裁判所の力を借りる必要はないと言えます。
なぜ日本の家庭裁判所が月に1回のペースを面会交流の基準としているのか、その理由ははっきりしません。家庭裁判所が面会交流の頻度を判断するときは、子供の利益を中心として考える旨を述べつつ、子供を監護している親の負担にも言及しながら、現実的な頻度として月に1回と判断します。ただ、直前まで子供と同居をしていた親との触れ合いを月に1回で良いとする判断が妥当なのか、大いに議論があるところです。とはいえ、当面の間、事実上基準となってしまっているこの頻度が変更される見込みは薄いです。
なお、月に2回以上の面会ができている状況下で面会交流調停・審判を行えば、月に2回の面会交流が認められることがあります。ただ、面会交流調停・審判の申立てにより、夫婦間(または元夫婦間)の関係が対立的になることも多く、面会交流調停の途中から、月に2回の面会交流が行われなくなることもあります。その場合、結局、月に1回という水準に下がる可能性が高いです。
そのため、すでに月に2回以上の面会交流が実施できている方は、無理して面会交流調停を申し立てる必要は乏しいでしょう。
2 月に1回面会交流ができている場合も、申立てをする必要性は低い。
それでは、月に2回ではなく、家庭裁判所の相場である月に1回の面会交流しかできていない場合は、今後の面会交流の実施を確実にするために、申立てをしておいた方が良いでしょうか。
いえ、その必要性は低いというのが回答になります。
というのは、先ほども述べた通り、面会交流調停を申し立てることで、夫婦間は対立構造になります。とりわけ、離婚調停や婚姻費用(生活費)調停も併せて行われる場合がそうです。その結果、何らかの理由で、子供を監護している側に気に入らないことが生じると、監護親が面会交流の実施を拒否する行動に出る場合があります。監護親側は、「〜ということがあったので、現時点では信頼関係を維持できない」「〜ということが判明したので、裁判所のアドバイスを聞けるまでは一旦面会を中断したい」などと述べて面会を拒否することがあります。(もちろん、合理的かつ正当な理由のケースもありますが、そうした場合は非常に稀です。)
さらにひどい場合は、一切の面会交流の実施に拒否的になり、その後半永久的に子供と会えない事態になる場合もあります。拒否しようと思えば拒否できてしまう面会交流制度の実態については、以下の記事でも解説しています。
1 屈辱と悲しみに耐える夫たち別居や離婚をした後、子供のことで大きな問題になるのが、面会交流です。日本では、共同監護や共同親権が公式には認められていませんので、子供と離れ離れになった親がその後子供と会えるかどうかは、ひとえに監護親の意思[…]
加えて、面会交流調停が成立したり、審判に移行して確定するまでの間、数年単位で時間がかかることも多いです。その間に子供がどんどん大きくなって、面会交流を実施するのが現実的でない年齢に至ってしまうケースも良くあります。
時間が極めて長期化する面会交流手続の実態については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、参考にしてください。
1 遅々として進まない面会交流手続別居中の配偶者が子供に会わせてくれないという被害は、無数に存在します。それに対応するために存在する手続きが、面会交流調停の申立手続になるのですが、調停は大変な時間がかかり、しかも、相手が最終的に任意で[…]
以上をまとめると、面会交流調停を申し立てるリスクは以下の通りです。
・面会交流調停を申し立てることにより、夫婦が対立構造になり、相手が面会交流に対して消極的な姿勢になる場合がある。
・対立が激しくなり、面会交流を完全に拒否された場合、最悪、半永久的に子供と会えなくなる事態もある。
・面会交流調停の成立、面会交流審判の確定まで、数年単位の時間がかかる(子供と会えない期間が続く)ケースも多い。
そのため、面会交流調停の相場である、月に1回の交流が実施できている状況であれば、あえて面会交流調停を申し立てる必要性は乏しいということになります。
当サイト運営・プロキオン法律事務所では、相談室(渋谷駅徒歩5分・横浜駅徒歩6分)またはオンラインにて、無料相談を実施しています。
3 習い事の送り迎えや保育園への訪問などで会えている場合も、申し立てる必要性は低い。
別居後、習い事の送り迎えを一部負担していたり、学校や地域の行事に一緒に参加できていたり、保育園に訪問するなどして子供と会えている状況の方も時々いらっしゃいます。そうした方は、面会交流調停を申し立てる必要があるでしょうか。
この点は、非常に悩ましいところです。もしあなたが、子供と、月に1回、数時間みっちり面会交流をすることの方が、習い事の送り迎えなどでちょこちょこ会えるより良い、と考えている場合は、申立てをしてみても良いかもしれません。
一方で、ある程度頻度高く会えている現状で、それなりに満足できているのであれば、あえて申し立てをしなくても良いでしょう。
面会交流調停では、裁判所の関与の下、子供との触れ合い方が明確な形で決定されてしまいます。つまり、調停や審判で決まる場合は、月に1回、何時間という、ある程度明確な取り決めになり、それ以外の子供との不明瞭な関わり合いは予定されません。
そのため、面会交流調停を経て条件が決まると、ぶらっと保育園に立ち寄って子供の様子をみたり、習い事の送り迎えを担ったりなど、取り決めのない不明瞭な関わり合いはできなくなる可能性が高いです。
また、調停の申立てにより、夫婦間は対立構造になりますので、そもそも取り決めのない不明瞭な関わり合いを拒否される可能性も高いと言えます。
4 面会交流調停は最後の手段
以上、1〜3で述べたことを踏まえると、面会交流調停の申立ては、いわば最後の手段と位置付けられるでしょう。
そのため、
①別居後、子供との関わり合いを一切拒否されているケース。
②現時点で月に1回も会えていないケースで、少なくとも月に1回は会いたいと強く希望している場合。
こうしたケースであれば、面会交流調停を申し立てて解決を計っても良いと思います。
もちろん、夫婦の関係性はさまざまです。①や②に当たらない場合でも、面会交流調停を申し立てる価値がある場合はあるでしょう。そのため、具体的にどのような行動を取るべきかは、きちんと弁護士と相談をして決断するようにしましょう。
弁護士のホンネ
今回は、面会交流調停を申し立てるべき場合や、申し立てるべきでない場合について解説をしました。多くの弁護士や専門家が指摘しているところですが、現在の家庭裁判所の面会交流手続は、限界があります。それに関しては、他の記事でも書かせていただいていますが、おそらく、立法府による法整備がない限り、抜本的な改善は難しいだろうと思います。
そのため、家庭裁判所が用意している手続を利用した方が、子供との関係性を維持するために良いのか、その判断はとても難しいところです。
ぜひ、弁護士に相談をして、戦略的な見地から今後の方針を検討していただければと思います。
当事務所では、離婚や面会交流に関して、無料相談を実施しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。
当サイト運営・プロキオン法律事務所では、相談室(渋谷駅徒歩5分・横浜駅徒歩6分)またはオンラインにて、無料相談を実施しています。