はじめに 〜お子さんと一緒に暮らしたいと願うあなたへ〜
離婚を考えたとき、多くの男性が直面するのが「子供と一緒に暮らすことは不可能なのか?」という問題です。
- 「親権や監護権を取れなければ、子供と離ればなれになってしまう…」
- 「なぜ母親が監護者に指定されるケースが圧倒的に多いのか?」
- 「父親だって子供を愛しているのに、なぜ裁判所は母親ばかりを優遇するのか?」
こうした疑問や不安を抱える方は少なくありません。実際、日本では離婚後に母親が監護者として指定されるケースが圧倒的に多いのが現実です。
しかし、これは「男性は絶対に監護権を取れない」という意味ではありません。
この記事では、裁判所が監護者をどのように決定しているのか、その判断基準や実情を詳しく解説し、男性が監護権を取るためにできることについても考えていきます。
裁判所の監護者指定の判断基準
まず、監護者の指定(=子供をどちらの親が養育するのか)について、裁判所はどのように判断するのでしょうか?
裁判所が監護者を決定する際に考慮する主なポイントは以下のとおりです。
✅ 現在の監護状況(継続性の原則)
→ 現時点で誰が子供の世話をしているか
✅ 子供への愛情と養育の実績(従前の監護状況)
→ 誰が日常的に食事、着替え、学校の送り迎えなどを行ってきたか
✅ 子供の意思(年齢による)
→ 一定の年齢以上(おおむね10歳以上)であれば、子供の意向も考慮される
✅ 経済力・生活環境
→ 安定した収入や、子供が安心して暮らせる住環境が整っているか
この中でも特に重要視されるのが「現在の監護状況」と、「従前の監護状況」です。
つまり、別居前からメインで子供の世話をしていており、現在も世話を続けている場合は、よほどのことがない限りそのまま監護者として選ばれます。
成功例:父親が日常的に子供の世話をしていたケース
Aさん(42歳・会社員)は、奥様が多忙なため、日常的にお子さん(5歳)の世話をしていました。
保育園の送り迎え、食事の準備、寝かしつけなどをこなしていたため、監護者として指定されました。
ご自身も仕事をしていますが、自営業で比較的自由が利き、さらにご実家の手厚いサポートがあったため、Aさんの実績として認められました。
母親が監護者として指定されるケースが多い理由
監護者指定の判断基準を見ると、「母親でなければならない」というルールはありません。
にもかかわらず、実際には母親が監護者として指定されるケースが圧倒的に多いのが現実です。
その理由の一つが、「メインで子供の世話をしていたのが母親であることが多い」ためです。
例えば、こんな状況を思い浮かべてください。
✅ 毎日の保育園の送迎をしているのは母親
✅ 学校の連絡帳を書いているのも母親
✅ 食事の準備や掃除・洗濯も母親が担当
こうした良くある日常の積み重ねが、裁判所の判断に大きな影響を与えます。
つまり、「これまで母親が子供の世話を中心的に行ってきたのなら、今後もその環境を維持したほうが子供にとって良いのではないか」と判断されるのです。
男性からすると、自分が家族のために一生懸命仕事をして、プライベートの時間を犠牲にしてきた結果がこれかと、いたたまれない気持ちになるかもしれません。しかし、現在の裁判所は、そうした親側の心情や、配偶者間の公平性ではなく、子供の目線を優先する運用をしています。
Bさん(45歳・会社員)は、仕事が忙しく育児をすべて奥様に任せていました。それでも、家族のために一生懸命に仕事をし、お金を稼いできました。
別居後、監護者として指定されたいと主張しましたが、「育児実績が乏しい」「一定の育児参加は認められるが、サポート的なものにとどまる」と判断され、母親が監護者になりました。
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別居する際に子供と一緒に家を出た側が監護者になりやすい
離婚の話し合いが始まると、夫婦が別居するケースが多くなります。
このとき、配偶者の一方が子供を連れて家を出るケースが非常に多いです。
色々理由があると思われますが、昨今は法律家による情報発信も増え、監護者の指定において、「現在の監護状況」が重要視されることが知識として共有され始めていることも一因でしょう。
例えば、別居の際に母親が子供を連れて出ると、裁判所は「すでに母親のもとで子供が生活している」と判断します。その結果、監護者の指定でも母親が圧倒的に有利になるのです。
逆に、父親が子供と一緒に生活を続ける形で別居すれば、監護者として選ばれる可能性も出てきます。
ただし、これまでメインで監護をしてこなかった側の配偶者が子供を連れて別居することは、「違法な連れ去り」とみなされ、その後の手続きにおいて不利になる可能性もあるので、注意が必要です。以下の記事も参考にしてください。
プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(離婚に特化した法律事務所として東京と横浜に事務所を構えています。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の[…]
弁護士のひとこと
以前、監護実績としては、父親の実家の援助も考慮すれば、父親側に分がある場合で、別居時に母親が子供を連れて別居した例がありました。裁判所は、現在の監護状況を最優先し、母親に監護者の地位を認めました。こうしたケースでは、もし父親が先に子供を連れて別居をしていれば、父親側に監護者の地位が認められた可能性が高いと思わざるを得ません。
このような運用が良いのかは大いに議論があるところで、子供の連れ去り合戦の発生を避けるために、何らかの法制度または法運用の構築を検討すべきと言えるでしょう。
男性が監護者になれるケースもある
「母親が監護者になりやすい」とはいえ、絶対ではありません。
例えば、次のようなケースでは、男性が監護者に指定される可能性もあります。
✅ 父親がメインで子供の世話をしていた場合
✅ 母親が育児放棄や虐待をしている場合
✅ 母親が仕事などの都合で子供の面倒を十分に見られない場合
多くの場合は、父親がメインで子供の世話をしていたと言えるかどうかが争われるでしょう。
そのため、もし監護権を取りたいと希望するのであれば、実際に子供の監護を担う必要があります。少なくとも別居前の半年〜1年以上はその状態を続ける必要があります。
その上で、上記に挙げた継続性の原則を踏まえると、もし別居をする場合は、必ず子供を自分の側に連れて行くことも必要です。
また仕事をしている場合は、ご両親などの監護補助者の協力を得て、充実した監護態勢を構築する必要があるでしょう。
具体的な方法は、以下の記事も参考にしてください。
弁護士の荒木です。 妻にはもう愛着はないから離婚したい!けれど離婚したら子どもは妻に取られてしまうから離婚に踏み出せない・・・。という父親は世の中にたくさんいます。確かに、子供がいる夫婦が離婚した場合、8割以上は母親が親権者となる[…]
不貞行為などの夫婦問題は監護者の指定で重要視されない
時々見かける事例として、「妻の浮気が発覚し、それをきっかけに妻が子供を連れて別居を強行する」というケースがあります。
この場合、多くの男性が「妻が不貞をしていたのだから、自分が監護者に指定されるべきでは?」と考えます。確かに、夫婦関係の破綻の原因が妻にある以上、倫理的な観点からも父親が監護者になるべきだと感じるのは自然でしょう。
しかし、裁判所の判断基準は「子供の福祉が最優先」というものであり、不貞行為などの夫婦間の問題は監護者の決定には直接的な影響を与えません。
裁判所が重視するのは、「どちらが子供の生活環境を安定させられるか」という点です。
したがって、以下の点をお伝えしなければなりません。
✅ 母親が不貞をしていたとしても、日常的に育児をしていれば監護者として指定される可能性が高い
✅ 夫婦の問題と、子供にとって適切な養育環境の問題は切り離して考えられる
例えば、母親が不貞行為をしていたとしても、これまでの育児実績があり、子供との関係が良好であれば、裁判所は「母親が監護者として適切である」と判断するケースがほとんどです。
失敗例:母親の不貞を理由に監護者を求めたケース
Cさん(48歳・会社員)は、奥様の不貞を理由に「母親の元での監護は不適切である」と主張し、監護者の指定を求めました。
しかし、裁判所は「母親がこれまで日常的に育児をしており、子供の生活が安定している」と判断し、結果的に母親が監護者となりました。
不貞行為があった場合でも、父親側が監護者を目指すなら、「相手の不貞を指摘する」よりも、「自分がどれだけ子供の世話をしてきたか、今後も世話をしていけるか」を証明することの方が重要なのです。
まとめ 〜男性が監護権を取るためにできること〜
1️⃣ 裁判所は「現在の監護状況」を最も重視する → 日頃から育児に積極的に関わることが重要
2️⃣ 母親がメインで育児をしている場合、監護者指定は母親になることが多い
3️⃣ 別居時に子供を連れて出ると、そのまま監護者に指定されやすい
4️⃣ 父親がメインで育児をしているケースなら、監護者に指定される可能性がある
5️⃣ 夫婦関係の問題は、監護者の指定において重要視されない
弁護士のホンネ

法律事務所
弁護士として数多くの監護権に関するご相談を受けてきましたが、その中で感じるのは、「父親だから監護権が取れない」というわけではないが、「現実的には母親が有利になりやすい」ということです。
裁判所は「子供の福祉」を最優先するため、これまでの養育実績や生活環境の安定性を重視します。そのため、「離婚を決意してから動き出す」のではなく、「離婚を意識し始めた段階で、すでに監護者争いを見据えて準備を始める」ことが非常に重要です。
📌 父親が監護権を取るために今からできること
- 日常的に育児を主体的に担当し、その記録を残す(送り迎えの履歴、食事の準備、学校行事の参加など)
- 別居後に子供と一緒に生活するための計画を立てる(サポートしてくれる親族へのお願いなどもあらかじめ行う)
監護権をめぐる争いは感情的になりやすく、冷静な判断を欠くことで不利な状況に陥るケースも少なくありません。ご自身とお子さんの未来を守るためにも、できる限り早い段階での準備が重要です。
当事務所では、監護権や離婚問題についてのご相談を承っております。ぜひ、お気軽にご相談ください。
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