
「離婚したくない」 「でも、配偶者の子どもへの暴力が激しい…」
あなたは今、葛藤の真っただ中にいるのではないでしょうか。愛する子どもが配偶者から暴力を受けているのを見るのは、耐えがたい苦しみです。一方で、配偶者への愛情や、家族がバラバラになることへの不安から、離婚という選択肢をすぐに選べない気持ちもあるかもしれません。
この記事では、そんなあなたが今すぐできる行動について、具体的な方法を交えながらお伝えします。特に、お子さんの安全を守るために知っておくべき児童相談所の制度について詳しく解説します。
1. まずは「児童相談所」に相談を
「児童相談所」と聞くと、身構えてしまうかもしれません。でも、お子さんの命や安全を守るためには、今すぐにでも専門家の力を借りるべきです。
児童相談所の役割と業務
児童相談所の役割と業務(根拠法令に基づく詳細)
児童相談所は、児童福祉法に基づき、18歳未満の子どもに関するあらゆる問題について、専門的な知識と技術を用いて、子どもと家庭の福祉を支援するための専門機関です。その主な役割と業務は、以下のとおり法律で定められています。
- 相談対応(児童福祉法第25条) 子どもやその保護者、学校の教職員、近隣住民などからの相談に応じ、子どもに関する問題の解決に向けた情報提供、助言、指導を行います。特に、児童虐待の通告があった際には、速やかに事実確認と必要な調査を開始します。
- 調査・診断(児童福祉法第26条) 子どもの心身に問題がある、または児童虐待の疑いがある場合、その状況や原因を詳しく調査します。児童心理司や医師などの専門家が、子どもの心身の状態を専門的に診断し、適切な支援方針を立てるための基礎資料を作成します。
- 指導・援助等の措置(児童福祉法第27条) 子どもの状況に応じて、以下のいずれかの措置を講じます。これは、児童相談所長が専門的な判断に基づいて行う重要な権限です。
- 在宅指導: 保護者に対して、子どもの養育に関する指導を行います。
- 一時保護: 児童の安全を確保するため、一時的に児童相談所や指定された施設で保護します。
- 施設入所等: 子どもを児童養護施設や乳児院などの児童福祉施設に入所させたり、里親に委託したりします。
相談はあなたの身を守る第一歩
「でも、相談したら配偶者に知られて、さらに暴力がエスカレートするのでは?」
ご安心ください。児童相談所への相談は、あなたの身元を明かさずに行うことが可能です。通告者(相談者)のプライバシーは保護されます。児童相談所は、通告によって知り得た情報について守秘義務を負っており(児童福祉法第61条)、通告者が特定されないよう安全に配慮した対応がなされます。
「私が通告者だと知られたら、離婚になる可能性が高いです。なので、第三者からの通告ということで夫(または妻)には言ってもらえませんか?」と伝えれば、児童相談所の担当者は適切に対処してくれるでしょう。
2.児童相談所への相談がもたらすメリット
児童相談所に相談することで、あなたとお子さんにとって、いくつかの大きなメリットがあります。
暴力の抑止になる可能性がある
児童相談所へ相談すると、担当者が配偶者へ「あなたの行動について通報があった」と連絡を入れることがあります。この通報をきっかけに、配偶者は自身の行いを客観的に見つめ直すかもしれません。「第三者から見ても、自分の行いは問題なんだ」と認識することで、暴力が止まるケースも少なくありません。あなたの目的が「離婚」ではなく「家族の再生」にある場合でも、児童相談所への相談は、家族の状況を客観的に見つめ直すきっかけとなります。
もしもの時に備える
万が一、配偶者の暴力が改善されず、最終的に離婚という道を選ばざるを得なくなったとしても、児童相談所への相談はあなたとお子さんにとって大きな味方になります。
児童相談所が虐待の事実を認定し、介入した記録は、裁判において親権を判断する際の重要な要素となります。配偶者の「監護の問題性」を客観的に示す証拠となり、あなたが親権者として認められる可能性を高める一助となるでしょう。
- いつ、どのような相談をしたのか
- どのような経緯で子どもが暴力を受けたのか
- 児童相談所がどのように対応したのか
こうした記録はすべて残ります。そして、後からその記録のコピーを取得することが可能です。
3.子どもの「一時保護」について
児童相談所の重要な役割の一つが、子どもの安全を守るための「一時保護」です。
一時保護の目的と判断基準
一時保護は、児童福祉法第33条に基づき、虐待を受けている、または受けている可能性のある子どもを、安全な場所(一時保護施設など)で一時的に保護する措置です。児童相談所が一時保護を行うのは、以下のような状況です。
- 緊急性の高い場合: 子どもの生命や身体に危険が及ぶ恐れがある場合。
- 安全確認が必要な場合: 家庭内で安全な生活を送ることが難しいと判断される場合。
- 調査や診断が必要な場合: 虐待の事実関係を詳しく調査したり、子どもの心身の状態を専門的に診断したりする必要がある場合。
一時保護の流れと期間
一時保護が決定すると、お子さんは一時保護施設などで生活することになります。この期間、児童相談所の担当者は子どもからゆっくりと事情を聴取し、今後の生活改善策を検討します。保護者であるあなたに対しても、暴力の原因や今後の対応について話し合いを行います。一時保護の期間は、原則として2ヶ月以内と定められています。
「子どもと離れるのは辛い…」そう思うかもしれません。しかし、配偶者による激しい暴力からお子さんを守るためには、一時保護が必要な場合もあります。この期間は、お子さんが心身ともに安全な環境で落ち着きを取り戻すための大切な時間です。
4.あなた自身も「被害者」です
子どもが暴力を受けているのを見て、心を痛めているあなたもまた、配偶者による精神的な虐待を受けていると言えます。
「私がもっとしっかりしていれば…」 「私が配偶者を止められていれば…」
自分を責める必要はありません。あなたは、愛する子どもを守るために、今この瞬間も苦しんでいます。その苦しみは、配偶者の暴力によって引き起こされたものです。あなたは一人ではありません。児童相談所や、さまざまな相談窓口があなたの味方です。もちろん、弁護士も強い味方になれます。
注意が必要なのは、配偶者の暴力に対してあなた自身もストレスを感じ続け、そのストレスから、あなた自身もまた子供に八つ当たりをするなどして暴力を振るってしまうことです。こうした事例も現によく見られるので、十分に注意してください。
5.相談窓口
最後に、あなたが今すぐ行動を起こせるように、具体的な相談窓口をご紹介します。
- 児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」 全国共通の電話番号で、最寄りの児童相談所に繋がります。通話料は無料で、24時間365日対応しており、匿名での相談も可能です。
- 配偶者暴力相談支援センター DV(ドメスティック・バイオレンス)に関する相談窓口です。配偶者からの暴力に悩むすべての人を対象にしています。お住まいの地域の相談窓口については、お近くの都道府県・市町村にお問い合わせください。
- 子ども家庭支援センター 子育てに関する相談を専門に受け付けています。地域によっては、「子育て世代包括支援センター」などの名称の場合もあります。お住まいの地域の相談窓口については、お近くの市町村にお問い合わせください。
弁護士のホンネ

法律事務所
「離婚はしたくない」というあなたの気持ちを否定するつもりは全くありません。しかし、その一方で、愛する子どもが暴力に晒され続けることは、決してあってはならないことです。まずは、あなたの心の内を誰かに話すことから始めてみましょう。
専門家はあなたの味方です。どうか一人で抱え込まず、一歩踏み出して、子どもの、そしてあなた自身の安全を確保していただきたいと思います。
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