【男性向け】妻から退職金の財産分与を求められた場合の対処法!離婚弁護士が解説

「妻から退職金も財産分与するよう求められたんだけど、退職金も財産分与の対象になるの?

「まだ30代で退職するのは20年以上先なのに、退職金を財産分与として妻に分けなければいけないの?」

「妻の代理人弁護士から財産分与のため退職金の資料の開示を求められた・・・」

プロキオン法律事務所弁護士の荒木雄平です。

以前リコネットでは、退職金も財産分与の対象となり得ることは記事にしました。

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ただし、まだ働き盛りの男性からすると、定年退職して退職金をもらえるのはまだまだ20年、30年先なんてことはザラ

それなのに、退職金が財産分与の対象になるというのは違和感がありますよね。

 

実際に、男性のお客様からも、上のように退職金が財産分与となるのは違和感を感じられるようで、様々な疑問や質問を受けます。

そこで、私の経験から、離婚を考えていたり今話し合い中の男性に向けて妻から退職金の財産分与を求められた場合の対処法についてご案内します。

 

家庭裁判所実務では、退職金も財産分与の対象とするのが一般的

 

まず前提として、現在の家庭裁判所実務では、未だ退職されていない方の退職金も夫婦の共有財産として、財産分与の対象とするのが一般的です。

と言うのも、退職金というのは給与の後払い的な性質があり、婚姻期間中に対応する部分は夫婦が共同で稼いだお金として共有財産として考えられているからです。

 

過去の裁判例では、一般的に、

 (退職金の受給がほぼ確実な)公務員や大企業

 退職までの期間が残り10年以下

の事案では、退職金が財産分与の対象になることが認められています。

 

ただし、44歳の男性(定年退職まで残り15年以上)の事案で名古屋高裁は、下記の通り、退職金が財産分与の対象となることを否定する判断を下しています。

「退職金及び確定拠出年金は、いずれも夫が60歳で定年退職する際になって現実化する財産であると考えられるところ、夫は口頭弁論終結時44歳で、定年までに15年以上あることを考慮すると、上記退職金・年金の受給の確実性は必ずしも明確でなく、またこれらの本件別居時の価額を算出することもかなり困難である。

したがって、本件では、上記退職金及び確定拠出年金については、直接清算的財産分与の 対象とはせず」(名古屋高裁平成21年5月28日判決・判時2069号50頁)

もっとも、こちらの名古屋高裁の裁判例は、退職金を清算的財産分与の対象とはしないまでも、扶養的財産分与を算定する事情として考慮しています。

 

調停や裁判実務でも、裁判官は少なくとも基準日(別居日が一般的です。)時点で自己都合退職した場合の退職金額は当然財産分与の対象として考える傾向があります。

そして、この傾向は30〜40代の方でも同様です。

そのため、仮に調停や裁判などで解決する場合には、未だ退職されていない方の退職金も夫婦の共有財産として財産分与の対象とされる可能性が高いと捉えた方が良いかもしれません。

 

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退職金の資料の開示を請求されたら拒否できる?→開示した方が無難!

 

それでは、妻から退職金の資料の開示を求められた場合、どうしたら良いのでしょうか?

退職金の金額を証明する資料としては、下記のようなものが考えられます。

 会社の退職金規定(年次や役職、係数、勤続年数などにより客観的に退職金額の計算が可能です。)

 基準日時点で自己都合で退職した場合の退職金証明書(発行してくれる会社の場合)

 

男性側からすると、妻からこれらの退職金の資料の開示を求められた場合、どうすれば良いのでしょうか。

訴訟(裁判)ですと、夫側が退職金の資料の開示を拒否した場合、妻の代理人弁護士は家庭裁判所に調査嘱託や文書提出命令を申し立て、夫の勤務先の会社に直接照会を試みることが多いです。

そして、裁判官は上記の通り退職金は財産分与の対象となると考えていることが多いので、男性側が退職金の資料開示を拒否した場合、これらの調査嘱託や文書提出命令などが認められる可能性はそれなりにあります。

 

もし裁判所が調査嘱託や文書提出命令を認めると、裁判所から勤務先会社に対して調査嘱託や文書提出命令が届き、勤務先会社が対応することになります。

そうすると勤務先会社には訴訟が係属している事実やそれなりに争っている事実が明らかになってしまうので、場合によっては社内での立場がまずくなったりするなどの事実上の不利益があり得ます。

 

さらに男性側が開示を拒否していたとしても、勤務先から回答することによって、結局、妻側に退職金の金額が知られてしまいます

そのため、妻から退職金の資料の開示を求められた場合、裁判所から勤務先に照会がいくなどの最悪のケースを避けることを最優先にするならば、ある程度素直に退職金の資料の開示に応じた方が無難と言えます。

 

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財産分与の対象となるのは、自己都合退職した場合の金額で、同居期間に対応するもののみ!

 

ここで注意して頂きたいのは、退職金が財産分与の対象になるとは言っても、将来受給できる退職金の全額ではありません。

あくまで、財産分与の対象となるのは、自己都合退職した場合の金額で、同居期間に対応するもののみになります!

 

一般的に自己都合退職の場合、もらえる退職金は定年退職の場合の6〜7割程度になります。

そして、裁判実務上はいまだに退職していない方の退職金を計算する場合、基準日(一般的には別居日。)に自己都合退職した退職金をベースに計算します。

そのため、間違って将来受給する定年退職の退職金をベースに計算されてしまうと、男性側に非常に不利になってしまいます。

そこで、間違えないよう、自己都合退職の場合の退職金を出しましょう。

 

また、財産分与の対象になるのは、原則として同居期間に対応するもののみになります。

例えば、35歳男性で、自己都合退職の場合の金額が300万円、勤続年数15年、同居期間5年のケースの場合

退職金額300万円×(同居5年/勤続15年)=100万円

と100万円が財産分与の対象になるに過ぎません。

こちらも見落としがちで自己都合退職の退職金額全額をもとに計算してしまうケースが散見されるので、きっちりと同居期間に対応するもののみを主張していきましょう!

 

まとめ

 

以上の通り、妻から退職金の財産分与を求められた場合

 家庭裁判所実務では、退職金も財産分与の対象とするのが一般的

なのである程度の損失は覚悟して

 退職金の資料の開示を請求されたら拒否できる?→開示した方が無難!

のため、妻側が退職金の開示にこだわるようであれば早期解決のために応じて

 財産分与の対象となるのは、自己都合退職した場合の金額で、同居期間に対応するものののみ!

ということをきっちり主張していくのが良いかと思います。

 

弁護士のホンネ  

退職金と財産分与の関係いかがでしたでしょうか。

以上のような対処法になるのですが、実務上、妻側の弁護士が退職金の存在を忘れていて開示を求められないケースもままあります。

その場合、妻側の弁護士が退職金について追及せず、妻が退職金の財産分与を取り損ねたとしても(特に弁護士の)自己責任。

特に、夫側から積極的に退職金の資料開示などに応じる必要はありません。

ただし、妻から退職金の資料開示を求められた場合、夫側が退職金が出ないと嘘をつくのはルール違反です。

代理人弁護士としても、嘘をことさらに主張することはできません。

万一、一度退職金がないと嘘をついて、その後それが嘘と判明した場合、裁判所に訴訟(裁判)では夫のいうことが全く信用されなくなってしまいます。(他にも嘘をついているのではと主張に信用性が一切なくなってしまいます。)。

そのため、嘘をつくのは本当にやめましょう。

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