弁護士の荒木です。
今回は、財産分与についてお話しさせていただきます。

離婚を考えている妻の中にはこのような人は結構いると思います。
しかし、ちょっと待ってください。
夫名義の預貯金、保険、株式などがなかったとしても、実は意外に夫婦の共有財産はあったりします。
知らないと見落としがちですが、離婚前に最低限チェックしておきたいポイントを3つご紹介します。
財産分与の請求を諦めてしまう前に、ぜひ参考にしてください。
ちなみに、財産分与は、離婚した後でも請求は可能です。
ただし、離婚後2年経ってしまった場合には請求ができなくなってしまうので注意してください。
また、離婚時に、清算条項などで財産分与を請求しないことを取り決めてしまった場合も請求はできません。
1 婚姻中の住宅ローンの支払分
マイホームを買う場合は、家は夫名義にして住宅ローンも夫名義にすることが多いと思います。
婚姻期間中に支払った住宅ローンに対応する部分は夫婦の共有財産となります。
つまり、夫だけではなく妻にも権利があるので、場合によっては夫に財産分与として不動産の一部を金銭に変えて請求をすることができます。
ただし、それには次のようないくつかの条件があります。
- 家の現在の価値が住宅ローンの残高を上回っている。
- 家は夫が取得する。
請求できる場合は、家の現在価値から住宅ローン残高を引いた額の一部を支払うよう夫に求めることができます。
ただし、その金額の算出方法には様々な考え方があり、夫婦どちらかの親の援助などがあった場合なども金額は変わってきます。
具体的な分与金額がいくらぐらいになりそうかは、弁護士などの専門家にご相談されるとよいでしょう。
2 夫の退職金
夫の勤務先に退職金がある場合、退職金のうち婚姻期間中に増えた部分は夫婦の共有財産になります。
したがって、財産分与としてその半額を請求することができます(夫が実際に退職する必要はありませんし、退職まで待つ必要もありません。)。
計算方法の一例を挙げると、基準日(別居した日など)に夫が自主退職したとしたらもらえるであろう退職金額に、夫の会社在籍期間のうち婚姻していた期間の割合を掛けた額を夫婦の共有財産とするといったものがあります。
しかし、退職金についてもその扱い方には様々な考え方があり、具体的な金額はそれぞれのケースによってかなり異なります。
また、定年退職まで相当に年数がある場合(数十年先など)や、会社の業績などから将来の支給が不確実な場合には、そもそも退職金が財産分与として考慮されない可能性もないわけではありません。
こちらも、請求をする場合には一度専門家に相談するとよいでしょう。
3 確定拠出年金
夫に退職金がない場合でも、確定拠出年金は運用していることは結構あります。
確定拠出年金は、企業が拠出した資金を元に運用するものなので、退職金の前払い的性質があり、退職金同様財産分与の対象とされる場合が多いと言えます。
具体的には、拠出金のうち婚姻中に増えた部分を夫婦の共有財産とする扱いが多いです。
確定挙手年金を運用している場合、定期的に夫宛に運用成果を報告する書類が届いているはずですのでチェックしてみましょう。
いかがでしたでしょうか。
このように、預貯金などわかりやすい形ではないですが、夫婦の共有財産は調べてみると結構あったりします。
今回紹介しきれなかった項目もまだまだありますので、財産分与を諦める前に、一度しっかり検討してみることが大切です。

今回紹介したような資産を財産分与として請求する場合、まずは資料を集めなくてはいけません。
しかし、当事者同士での交渉では、夫が中々資料を開示してくれないこともよくあります。
それに困って当事務所に相談に来られる方も珍しくありません。
夫に財産がありそうなのに資料を開示してくれない場合は、裁判所に調停(離婚調停や離婚後であれば財産分与調停)を申し立ててしまうのが近道です。
間に入る調停委員や裁判官が説得してくれますし、調停になると弁護士が入ることが多いので早期解決につながります。