プロキオン法律事務所弁護士の青木亮祐です。
宝くじの当選金や競馬・競輪などの賞金は、当てた人個人の運で獲得したお金であり、たとえ夫婦であっても、当然にそれを分け与えなくてはいけないようなものではないような気がします。
一方で、しばしば高額になることもあるこれらの当選金や賞金を、一切妻や夫に分けなくてもいいということになると、財産分与の際に非常に不公平な結論になってしまう可能性もあります。
それでは、離婚の際には、当選金や賞金はいったいどうやって処理すれば良いのでしょうか。
そこで今回は、宝くじの当選金や競馬・競輪などの賞金が財産分与の対象になるのかどうか、
もし対象になるのであればどのように分与させるのかについて解説します。
宝くじの当選金や競馬・競輪などの賞金は夫婦の共有財産
結論からいうと、法的には、宝くじの当選金や競馬・競輪などの賞金は夫婦の共有財産と評価されます。
したがって、財産分与の対象となります。
これは、夫婦間では相互に同等の生活を維持するための生活保持義務があることや、夫婦間の公平に照らせば、偶然に得られた利益を夫婦の一方が独占することは許されず、その利益は夫婦の生計のために使われるべきであるからと言われています。
そして、たとえ宝くじや馬券を自分の特有財産から購入していたとしても、当選金や賞金は夫婦の共有財産になると考えられています。
これは、宝くじや馬券の購入資金は、一般的に当選金や賞金に比べてごく少額であり、そこに対価性はないとみなされるためです。
なお、当選金や賞金で購入された不動産などの財物についても同様に共有財産とされます。
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分与割合は半分ずつではない
共有財産ということになると、財産分与の際には、原則として5対5の割合で分与されることになります。
しかし、宝くじや馬券などを当てたのは個人の運が貢献するところが大きく、配偶者がそれに何らかの貢献をしたというところは通常あまり考えられません。
そのため、財産分与の際の分与割合は、実際に宝くじや馬券などを当てた個人の寄与が大きいことに鑑み、7対3や6対4など当てた方に有利に修正されることがあります。
たとえば、奈良家裁平成13年7月24日審判は、夫が当てた万馬券で購入した不動産について「万馬券という射倖性の高い臨時の収入については相手方(夫)の運によりところが大きい」として、夫の分与割合を3分の2、妻の分与割合を3分の1としています。
また、東京高裁平成29年3月2日決定は、夫が当てた宝くじの当選金で形成された資産について「原審申立人(妻)より原審相手方(夫)の寄与が大きかったというべきであり」と述べ、夫の分与割合を6、妻の分与割合を4としています。
このように、宝くじや馬券を当てた個人の寄与度を考慮し、分与割合を修正するのが判例の考え方です。
まとめ
宝くじの当選金や競馬・競輪などの賞金(又は賞金を原資として形成された資産)は夫婦の共有財産となるため、離婚の際には財産分与の対象となります。
ただし、宝くじや馬券を当てた個人の寄与度を考慮し、当てた方に有利に分与割合を修正するのが判例の考え方です。
分与割合をどの程度修正するのかは、宝くじや馬券の購入にあたっての資金の出所や金額、当選後の生活状況や資産の管理状況など様々な事情に左右されます。
高額の当選金や賞金があり、財産分与で揉めそうな場合には、弁護士に相談することが必須となるでしょう。