日本でも共働きの家庭が多数派になってかなりの期間が過ぎましたが、未だに家事や育児は妻が中心になって行なっていることが多いように思います。
そのため、正社員として働き夫と同程度の収入を得ながら、家事や育児についても全面的に行なっている妻も珍しくありません。
そのような妻の頑張りは、離婚の際にどのように評価されるのでしょうか。
今回は、財産分与における分与割合に焦点をあてて、ご説明をしたいと思います。
財産分与における分与割合は2分の1ずつが原則(2分の1ルール)
財産分与とは、離婚にあたって、婚姻期間中に築いた夫婦の共有財産を双方で分けることを言います。
原則は分与割合は2分の1ずつとされ、夫婦の共有財産は妻と夫で2分の1ずつ分けることになります。
財産分与について詳しく知りたい場合は下記の記事を参考にしてください。
離婚をする際に最も問題になるものは何でしょうか。それは子供の問題と、お金の問題です。 離婚弁護士として数百件の離婚に関わってきて確信したこと。それは、離婚すること自体でモメるということはあまりなく、ほとんどは、子供の親権をどちらが持[…]
2分の1ルールの例外
しかし、2分の1ルールにも例外はあり、一定の場合には分与割合が修正されることがあります。
例えば、夫婦の一方が特別な資格や能力によって高収入を得ており、これによって財産が形成されたような場合です(大阪高裁平成26年3月13日判決など。)。
具体的には夫婦の一方が医者、弁護士、スポーツ選手などであり、これによって高収入を得ていたような場合です。
この点について詳しく知りたい方は下記の記事を参照してください。
1 納得できない2分の1ルール? 財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で蓄積した財産を、離婚時に夫婦間で公平に分与し合うという制度です。この制度においては、よく「2分の1ルール」という言葉が使われたりします。つまり、[…]
働く妻の頑張りは評価される?
「2」で紹介したような例外が認められるのは、婚姻中の財産形成に対しての夫婦の一方の寄与度が、もう一方の寄与度よりも、明らかに大きいと認められるからです。
働きながら家事・育児全般を担う妻は、収入面でも財産形成に貢献するとともに、家事労働という面でも財産形成に貢献しており、総合すると夫よりも財産形成に対する寄与度が明らかに大きいとも評価できそうです。
実は、この点を評価し、財産分与における分与割合を妻に有利に修正した裁判例があります。
裁判例
東京家裁は、収入がほぼ等しく、妻のみがほぼ家事や育児を行なっていた事案において、次のように述べて、妻の分与割合を6割、夫の分与割合を4割と判断しました。
「本件清算的財産分与の清算割合は、本来、夫婦は基本的理念として対等な関係であり、財産分与は婚姻生活中の夫婦の協力によって形成された実質上の共有財産の清算と解するのが相当であるから、原則的に平等と解すべきである。しかし、前記認定の申立人と相手方の婚姻生活の実態によれば、申立人と相手方は芸術家としてそれぞれの活動に従事するとともに、申立人は家庭内別居の約9年間を除き約18年間専ら家事労働に従事してきたこと、及び、当事者双方の共同生活について費用の負担割合、収入等を総合考慮すると、前記の割合を修正し、申立人の寄与を6、相手方のそれを4とするのが相当である。」(東京家裁平成6年5月31日審判)
あくまで当該事案における諸事情を総合考慮した上での結論ですが、このように、収入面及び家事労働双方を総合的に考慮して妻が夫より明らかに寄与度が大きい場合には、財産分与の割合が修正されることがあります。
まとめ
財産分与の際の分与割合は原則として2分の1ですが、双方の収入状況や家事・育児の負担状況によってはそれが修正される可能性があります。
相手と同じくらい稼いで、家事・育児もほとんどやっているのに財産分与の割合が2分の1ずつなのは納得いかないという方は、一度弁護士に相談をしてみることをお勧めします。
例えば調停で話し合っている場合など、調停委員からは2分の1ルールは絶対であるかのような説明をされたりすることがあります。
しかし、裁判例などを調べてみると意外と例外が認められていたりするケースもあるので、簡単に諦めずに主張をすることが大切です。