プロキオン法律事務所の弁護士の荒木です。
離婚にあたっては、財産分与を行うことが一般的です。
そして、自宅不動産であっても、それが特有財産(相続でもらったものや結婚前に持っていたもの)でない限りは、財産分与の対象となります。
今回は、自宅不動産が夫婦の共有名義となっている場合の財産分与の方法について、以下の3つのポイントに分けてお話をします。
・自宅不動産の価値はどうやって調べるの?
・自宅不動産の「分け方」について
・忘れてはいけない登記手続
それでは、それぞれ見ていきましょう。
自宅不動産の価値はどうやって調べるの?
自宅の価値は、一般的には大手の不動産会社に簡易査定を行なっていただき、その結果を元にして判断します(査定結果は書類でもらいましょう。)。
複数の会社に査定を依頼して、自分にとって最も有利な査定結果を元に、自宅の価値を提示することがよく行われています。
「査定」や査定結果の選び方については、下記の記事を参考にしてください。
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自宅不動産の「分け方」について
夫婦共有名義の自宅の「分け方」について、注意しなければならない点は、たとえ夫婦の一方が所有している自宅の持分の割合が2分の1以下であっても、夫婦双方が2分の1ずつ権利を有することになる点です。
つまり、持分の登記の内容は、財産分与においては全く関係ありません。
自宅に住宅ローンが残っている場合には、前述の不動産査定で算定した自宅の価値から、別居時点、もしくは離婚時点(同居を続けている場合)の住宅ローンの金額を差し引くことが一般的です。
自宅の価値がローンの残額よりも大きい場合には、住宅ローンを差し引いた金額を夫婦で分けます。
自宅の価値が住宅ローンの残高よりも少ない場合には、他の財産の総額からマイナスとなった金額を差し引いた上で財産分与を行います。
なお、住宅ローンのある自宅を分ける際に注意しなければならないのは、自宅の名義人を住宅ローンの名義人と異なる人物にすることで、銀行の規約に違反し、銀行から残っているローンの全額返済を求められてしまう可能性があることです。
そこで、住宅ローンがある場合には、
- 住宅ローンの名義人が自宅を引き継ぐ形で財産分与を行う
- 銀行と相談の上、住宅ローンの名義を書き換える(ただし書き換えが認められない場合も多い)
- 自宅を売却して、ローン弁済後の売却益を分配する形で財産分与を行う
のいずれかの方法が望ましいでしょう。
住宅ローンの名義人が自宅を引き継ぐ場合は、自宅の現在価値と住宅ローンの差額が共有部分ですので(現在の価値より住宅ローンの残高の方が大きい場合)、その半分の価値を金銭で相手に支払う必要があります。
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忘れてはいけない登記手続
自宅不動産が登記上共有名義になっている場合、対外的には、夫婦の双方が自宅の持分を有していることになります。
そのため、離婚した後も登記上双方が自宅の持分を有している状況を維持していると、持分を無断で売却されるなどして、トラブルの原因となってしまいます。
そのため、離婚とあわせて、持分の移転登記を行うようにしましょう。
登記の移転には費用が掛かるため、夫婦のどちらが費用を負担するのかについても忘れずに取り決めるにしましょう。
一般的には、持分を取得する方が、登記の移転費用も負担するのが通常です。
<まとめ>
・まずは自宅の「査定」を依頼してみよう!
・自宅を誰が取得するかを決めた上で、分与方法を検討しよう。
・登記の移転も忘れずに!
自宅は一般的に大きな価値を有するものであり、これをどのように分けるかということは、「財産分与」の中でも大切なポイントになります。
自宅の財産分与は離婚手続きにおいて一番揉めやすいところです。ぜひ、いろいろな機関や弁護士などと相談をしながら進めていきましょう。
この記事が、みなさんにとっての一助となれば幸いです。