子どもが奨学金を借りている場合、学費分を養育費や婚姻費用で支払う必要はある?

 子どもが大学へ進学している場合、婚姻費用や養育費を支払う側が、子どもの大学の学費分も支払うというケースは多いと思います。しかし、子供が奨学金を借りている場合、婚姻費用や養育費を受け取る側は実質的に学費を支払っていないのにも関わらず、支払う側から学費分を受け取っていることになります

 このような場合、婚姻費用や養育費を受け取る側は、その分丸々得をしていることになるわけですから、支払う側からすると不公平であると感じるのではないでしょうか。

 では、子どもが奨学金を借りている場合、婚姻費用や養育費を支払う側は学費分を支払う必要がなくなるのでしょうか。以下、解説していきます。

 なお、一度決まった養育費を減額できる他の条件については、「一度決まった養育費の金額を下げる方法をご案内!」で紹介しいます。

また、大学の学費の負担割合については「【実務に変化】学費負担は収入按分か?それとも半額負担か?婚姻費用の最前線を解説!」で詳しく紹介しておりますので、ご参考ください。

1 なぜ、奨学金を考慮しないと不公平なのか

 具体的な例として、離婚した元夫側が、元妻側に子どもの大学の学費も養育費として支払っている場合を考えます。このとき、子どもは奨学金を借りているとします。そうすると、元妻側は大学の学費を支払っていないのにも関わらず、元夫側から学費分の金額を受け取っていることになります。そして、奨学金は子自身が将来的に返していくことが前提となっているため、結果的に元妻側は学費分得をすることになるのです。

 そのため、元夫側からしたら、養育費を減額してもらわないと不公平だと感じるのは当然でしょう。

2 婚姻費用の減額を認めた判例について

 東京家庭裁判所平成27年8月13日審判は、以下の通り判断しました。

 「申立人は,長男及び長女が奨学金の貸与を受けていることは,相手方の婚姻費用の分担義務を軽減させるべき事情とはならないと主張する。しかしながら,貸与とはいえ,これらの奨学金により長男及び長女の教育にかかる学費等が賄われていることは事実であり,しかも,これらの奨学金で賄われる部分については,基本的には,長男及び長女が,将来,奨学金の返済という形で負担するものであって,当事者双方が婚姻費用として分担するものではない・・・のであるから,奨学金の貸与の事実が,相手方の婚姻費用の分担義務を軽減させるべき事情にならないということはできない。」

 つまり、この判例では、貸与型であったとしても奨学金により子の学費が賄われている場合、婚姻費用(本件ではまだ婚姻中であるため)を減額できると判断しています。

3 婚姻費用や養育費を減額するために必要な条件

 この判例から、奨学金の存在によって婚姻費用や養育費を減額するためには、

奨学金によって大学の学費がまかなわれていること
奨学金の返済が、子によって行われる予定であること

の2点が少なくとも必要になることが分かります。

 まず、婚姻費用や養育費の算定においては、標準的な教育費がすでに含まれています。具体的には、26万円程度とされていますが、その金額を超えた部分について、二人で分担することになります。そのため、これを超えた分が奨学金でまかなえていれば良いということになります。

 また、奨学金は子名義で借りるものであるため、基本的には子が返すものと認められるでしょう。しかし、親が返済するという合意が元夫と元妻の間でされていた場合は、子が返すものとは認められないと思われます。

<まとめ>

以下のいずれも該当する場合は、算定において考慮されている額以上の学費を養育費や婚姻費用で支払う必要がなくなる可能性がある!

  • 奨学金によって大学の学費がまかなわれていること

  • 奨学金の返済が子によって行われる予定であること

弁護士の本音

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弁護士のホンネ

 子供の私立学費については、そもそも進学について同意をしているか否かも重要な点です。

 しかし、明確な同意をしていなくても、親の学歴などから当然同意があったとみなされることもありますし、同意がなくとも、客観的な事情により負担が相当と認められれば、負担を命じられるケースもあります。

 そのため、少なくとも、学費の支払いをしたくない場合は、明確に(少なくとも私立大学への)進学は認めないと意思表示しておく必要があるでしょう。
 なお、上記判例では、奨学金を借りることを条件に大学進学を同意していたという事情があるので、そのような同意しておくことも考えられます。

 また、婚姻費用や養育費については、一度決めてしまっても、申し立てによって減額することができます。そのため、後から子供が奨学金を借りていることが分かった場合でも、減額の申し立てをすることができます。一方で、減額できる額と、申し立てにかかる労力や費用を比較して、申立てをするメリットがあるかを判断していくことも必要でしょう。

 どのような行動を行うべきか、ぜひ専門家に相談をされると良いと思います。

 婚姻費用や養育費に関して、学費の扱いは、裁判所においてもホットな議題です。最前線の情報をお伝えできるよう、情報を更新していきたいと思います。

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