住宅ローンと婚姻費用のダブル負担を可能な限り避ける方法3つ!

別居中の妻に対して婚姻費用を負担するご相談者様の中には、住宅ローンの負担もあるなかでキャッシュが回らなくなってしまっている方も多くいます。

どういうことかというと、夫が別居しながらも、妻が住んでいる自宅不動産の住宅ローンを負担していて、さらに妻に対して生活費も渡しているパターンです。

婚姻費用(別居期間中に支払う生活費)は、収入が高い方が低い方に同じ生活水準を確保させるために支払うもので、住宅ローンより優先度が高いとされてます。そのため、妻に生活費を支払いつつ、妻が住んでいる不動産の住宅ローンも負担するという、キャッシュフローとしては極めてしんどい事態に陥ることになります。

こうした事態を少しでも回避するためにはどのようにすれば良いでしょうか?
説明します。

1 婚姻費用の金額自体を低くする

婚姻費用の金額は、裁判所の公表している算定基準(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)に沿って、夫婦それぞれの収入に基づいて決められます。

例えば、夫の年収700万円、妻の年収300万円、子供1人という家族構成で考えてみましょう。
この場合、裁判所の算定基準によれば、月額10万円程度を子供と同居している妻に支払わなければなりません。
これに加えて、もし、住宅ローンを月額12万円程度を負担している場合、合わせて22万円の負担になります。

しかし、年収700万年だと、平均的な手取りは500万円ちょっとですので、月々40万円程度ですね。しかもこれはボーナスも入れて平均化したものですので、ボーナス月でない場合の平均的な手取りは30万円ちょっとの可能性が高いです。

するとどうでしょうか。30万円から妻と子への生活費、そして住宅ローンを差し引くと、8万円しか手元に残りません。この中から自分自身の家賃や交通費、水道光熱費に通信料、交際費に食費を捻出しなければならなくなりません。

さすがにこれだと夫が生活できません。
そこで、婚姻費用を決める際は、妻が住居関係の費用を負担していないことを理由に、一定額を婚姻費用から差し引くべき旨を主張しましょう。
裁判所の一般的な運用では、夫側からそのような主張があれば、婚姻費用から一定額を差し引いてもらえます。
その一定額というのは、家計調査年報に基づく住居関連費のことを差し、妻の収入額に応じます。おおよそ2万円から5万円で、妻の収入が300万円の場合は、3万5000円程度です。

したがって、妻が住んでいる不動産の住宅ローンを負担している夫は、この住居関連費を婚姻費用額から差し引くよう主張しましょう。

2 住宅を売却する

とはいえ、1で差し引けるのは、わずかに3万円程度です。それを差し引けたところで、夫の生活水準の劣悪さは変わりません。
婚姻費用が3万円程度少なくなったところで抜本的な解決にならない場合は、妻に対して、自宅の売却を打診することも一つの方法です。

ただし、妻が居住している場合に妻の意思に反して売却することは事実上できませんので、妻の了解と協力も必要です。
相互の信頼関係が残っていれば良いのですが、離婚の話し合いになり、対立が先鋭化してしまった後だと、「夫の都合のために協力をする」ということを感情的に拒否する妻も多くいます。

生活が困窮化してしまうことを、手取り額を示しながら丁寧に説明するほかありません。調停手続を利用すしている場合は、弁護士や調停委員にも協力してもらい、話を進めてみましょう。

3 住宅ローンの支払いを諦める

自宅の売却もできず、本当に生活ができなくなってしまう場合は、住宅ローンの支払いを止める(引き落としの場合は、当該口座を空にする。)ことも検討せざるを得なくなるでしょう。なぜかというと、婚姻費用の支払いを止めるわけにはいかないからです。婚姻費用は、破産をしたとしても支払い続けなければならない強力な義務であり、法律上も優遇されているのです。

ただし、住宅ローンの支払いを止める場合、当然の事ながら、以下のようなデメリットもありますので、理解しておきましょう。

  • 支払いの停止が数ヶ月続く場合、自宅不動産の抵当権が実行され、競売等になるリスクがある。
  • 信用情報機関に債務不履行の情報が記録され、経済的な信用が悪化する(クレジットカードを作れなくなるなど。)。
  • 自宅不動産に住んでいる妻との関係はより一層悪化し、対立の先鋭化は深刻になる。

もっとも、妻が自宅での居住に固執している場合、最終的には妻が住宅ローンを負担する流れになることも多くあります

弁護士の本音

弁護士青木
弁護士のホンネ

住宅ローンと婚姻費用のダブル負担は本当に深刻です。
裁判所はこの辺り、かなり厳し目で、住宅ローン額をまるまる婚姻費用額から減らしてくれることはありません。これが賃貸不動産であれば、夫が負担している賃料額を丸々控除してくれるのとは大きな差です。

住宅ローンの支払いを止めた結果、妻側が住宅ローン分を通常の婚姻費用に上乗せして請求してくる場合がありますが、これも一般的には認められていません。住宅ローンは破産すれば「チャラ」になる一方で、住宅ローン額の婚姻費用への上乗せを認めると、婚姻費用の名によって、破産してもチャラにならない債務になってしまうためです。

なお、婚姻費用と住宅ローンのダブル負担が可能であるにもかかわらず、一方の負担を止めてしまうと、「悪意の遺棄」と見做されてしまう可能性がありますので、注意してください。

以上、三つの方法をご紹介しましたが、それぞれのキャッシュフロー状況によって、できれば専門家のアドバイスを聞きつつ、対策を考えましょう。

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