
横浜駅の弁護士の青木です。
このような相談も多く受けています。
日本では配偶者のいる異性と男女関係をもってしまった場合、相手の配偶者に対して、慰謝料を払わなければならないという義務があります。
もちろん、その異性に配偶者がいることを知らなかったという場合は別ですが、そうでないかぎり、法的には慰謝料の支払い義務を負うわけです。
もっとも、不倫をしてしまったとしても、こちらとしても言い分があることも多いでしょう。
例えば、「もはや夫婦関係は破綻していたと思っていた」、「関係をもったといっても数回程度で、そんな何百万も払わなければならないなんて。。」「夫の気持ちを保たせる努力をしなかったくせに、なぜ私に対して?」などなど、挙げればきりがないかもしれませんね。
そうした、不倫をしたけれども、不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされている方としては、どのように対処すれば良いのでしょうか。
以下に述べてみたいと思います。
1 まずはどのような証拠を握られているのか確認する!
不倫を証明する証拠というのは数多くあります。詳しくは、「不倫を証明するため知っておくべき証拠ベスト5!ここに紹介!」や、「こんなのが証拠に使われる!?不倫・浮気の「意外な証拠」ベスト3!」にて紹介しておりますので、ご参照ください。
どのような証拠を相手に握られてしまっているかによって、こちらの「交渉力」の強さが変わってきます。
例えば、最近ではスマートフォンのコミュニケーションアプリ「ライン」のやりとりが証拠として出されることが多くあります。
しかし、そのような単なる文章が、直ちに不倫(つまり肉体関係)があったことを証明できるとは限りません。
「あなたが本当に好き」
「愛してるよ」
「死ぬまでずっと好きでい続けるよ」
「このあいだの夜は最高だったね!」
といった言葉は、確かに、その男女間に親密な関係があることを伺わせますが、慰謝料が発生するような不倫というのは、あくまでも肉体関係が存在することが必要です。
ところが、「このあいだの夜は最高だったね!」という言葉でさえ、直接肉体関係を意味するものではありません。
常識的にはセックス行為があった可能性が高いとは思われますが、「常識的に可能性が高い」といっても、裁判所がその事実の存在を認定してくれるとは限りません。
裁判所は、「その他の可能性は考えられない」と判断できなければ、肉体関係の事実を認めないのです。
「最高だった夜」というのは、もしかしたら花火を一緒に見たことかもしれません。
あるいは、好きなロックミュージシャンのライブに行ったことかもしれませんね。
はたまた観覧車に一緒に乗ったことでしょうか。
こうした、「他の可能性」が入る余地がある限りは、裁判所は肉体関係の存在を認めることはできないわけです。
このように、相手が握っている証拠では、裁判所は肉体関係を認定出来ないという場合、こちらの「交渉力」は非常に強くなります。
具体的には、支払う金額を控えめにできたり、場合によっては支払い自体を拒むこともありうるでしょう。
ところで、不倫相手の配偶者がどのような証拠を持っているのかについては、主に2つの方法で知ることができます。
一つは、不倫相手から聞くことです。
不倫についてどのような証拠を握られてしまったか、具体的に予想できるのは、配偶者と一緒に生活をしている不倫相手だけだからですね。
もうひとつの方法は、不倫相手の配偶者から直接聞く方法です。
での直接対面や、電話口で直接話しをするといった機会があると思います。
このような時に、例えば、「肉体関係まではもっていません!」と事実関係を否定すると、「こういう証拠を握ってるんですよ!」と、不倫相手の配偶者がその場で証拠を示してくることがあります。
なお、そういうとき、「まだまだ証拠はあるんですよ!」と述べられることがありますが、代理人としての経験からいえば、実際はそれ以上の有力な証拠を握られていないことが多いですね。
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2 弁護士に対応をすべて依頼してしまう!
不倫に関する慰謝料請求をされた場合、それの対応をすることも弁護士の仕事の一つです。
弁護士に依頼することのメリットとしては、
- 弁護士の経験に基づく勘で、相手の持っている証拠の力やそのほかの交渉力を使って、払うべき金額を一定程度抑えられること
- 煩わしい相手とのやりとりを回避できること
が挙げられるでしょう。
弁護士がどういうことを意識しながら交渉というものをしているのかについては、「離婚に向けた交渉をする際に守るべき7つのルール」をご参照いただければと思います。
もう一つのメリットである、煩わしいやり取りを回避できることというのは、実のところ非常に重要です。
どうしてもこのような不倫・男女問題は、不安がつきものです。
「いったいいつになったら解決するんだろう。」「他の人達にもこの事実が知れ渡ってしまうんだろうか。」などなど。
また、電話口で不倫相手の配偶者と話し合いをしていると、時に感情的なやりとりになりがちです。
誰しも、本当に自分が悪いとは思いませんし、おそらく、思えないようにできています。
それが一層感情を高ぶらせます。
さらに、当事者同士の話し合いですと、埒が明かず一向に解決に至らないことも多いでしょう。
そして同じ職場の同僚との不倫の場合だと、問題が長引く間に、会社をやめざるを得なくなるということもありうるでしょう。
不倫相手の配偶者から度々入る電話や連絡が、そうした負の気持ちを増幅させます。
こうした負の気持ちから免れる方法として、「弁護士に対応を全てお願いしてしまう」というのは、悪いものではないと思います。
3 そもそも払えるだけのお金がないことを告げる!
実際、お金がないと、どうにも責任を果たすことができません。
不倫・不貞に関する慰謝料は、その相場が100万円から200万円といったもので、決して安い金額ではありません。
こうした不倫慰謝料を支払うには、それだけの資力が必要になるわけですね。
しかし、格差社会の現在、必ずしもこうしたお金を用意できるわけではないでしょう。
そうした場合は、お金を用意できない旨を正直に述べることが、実は効果的であったりします。
相手としては、
「払ってもらいたいけど、そもそも払えないのであれば、裁判で勝っても、差し押さえができる財産もないだろう。そしたら裁判をした意味が無い、それどころか裁判費用の分だけ無駄に終わってしまう。。」
などと考えることでしょう。
そうしたならば、相場より相当に安い金額でも、応じざるを得ないということがよくあります。
そういうわけですから、もし、100万円、200万円を準備できる余裕がないのであれば、素直にその旨を相手に伝えてみると良いでしょう。

不倫をした場合に、相手の配偶者に慰謝料を払わなければならないというのは、決して世界共通のことではありません。
アメリカではわずかな州を除いて、不倫相手に対する慰謝料請求を認めません。
日本でも、不倫相手に対する慰謝料請求は「些かお門違い」などと痛烈に述べる裁判例があったりします。
もっとも、当面の間は、慰謝料の支払い義務があるという運用は続くことでしょう。
なお、本文では肉体関係のある不倫について述べましたが、肉体関係までは至らない、例えば頻繁なデートやキスを重ねていたような場合、数十万円と少額ですが、慰謝料が認められるケースもあります。