既婚者専用のマッチングアプリを使うのは、有責行為か?【弁護士の解説】

今回は、既婚者でありながら、既婚者向けのマッチングアプリを利用することが、配偶者に対して違法な行為となってしまうのか、そのほかの注意点を含めて解説します。

1 昨今静かなブームになっている既婚者専用のマッチングアプリ

昨今、恋活や婚活で、マッチングアプリが盛んに利用されるようになりました。一昔前は、「出会い系サイト」というレッテルを貼られ、利用すること自体、敬遠されていました。しかし、スマートフォン上のアプリの形になったことで、利用者が爆発的に増え、一般的なものになったようです。もっとも、アプリの形ではなく、あえてWeb上のアプリとして使われているものも多く、これは特に利用を秘匿したい人には選ばれています。

こうしたマッチングアプリは、昨今は既婚者同士の出会いにも使われるようになりました。既婚者のみが登録でき、同じく既婚者である異性とマッチングした後、アプリ上でのやり取りが可能になるというものです。その後に実際に会うことも想定されています。

しかし、既婚者がこれを利用しても問題はないのでしょうか。

2 既婚者がマッチングアプリを利用する目的

既婚者が既婚者同士のマッチングアプリを利用する目的は様々です。

一般的には、

・異性の友達作り
・異性の飲み仲間探し
・セカンドパートナー探し
・異性との性交渉目的

などが挙げられます。

こうした目的次第により、マッチングアプリの利用が問題になります。

3 配偶者との間で違法な行為となる場合、ならない場合

たとえば、性交渉目的の利用や、それにより実際に性交渉に至った場合、配偶者に対しては違法行為となることは明らかです。この場合、その相手の方も慰謝料を支払う義務を負担することになります。

そもそもの話として、なぜ不貞行為が配偶者に対する違法行為になるかというと、配偶者は、婚姻共同生活を平穏に送るべき権利・利益が認められており、異性との性交渉(不貞行為)はこれを侵害するためです。

(最高裁第3小法廷平成8年3月26日判決 民集50巻4号993頁)

甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、・・・丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となる(後記判例参照)のは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであ(る)

したがって、逆にいえば、不貞行為にまで至らないケースでは、既婚者アプリの利用が、直ちに配偶者の利益を侵害するわけではありません。

例えば、既婚者同士で悩みや愚痴を吐露し合う友人関係、飲み仲間を作るという目的であれば、既婚者用のマッチングアプリを利用したとしても、違法性はありません。客観的に、配偶者の上記利益や権利を侵害するものとは見做されないためです。

一方で、心の通じ合うセカンドパートナーを探す目的で利用を開始し、実際に友人以上の関係性に至れば、たとえ肉体関係にまで至らなかったとしても、配偶者に対しては違法な行為になり得ます。具体的には、これが原因で離婚に至れば、離婚時に慰謝料を支払う必要が生じる可能性があります。

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4 そのほかの注意点(利用が発覚しやすい)

ところで、マッチングアプリの利用は、配偶者の目に留まりやすいという傾向があります。

アプリの登録の際は、メールアドレスや電話番号を登録する必要があります。それにより、マッチングアプリ上でマッチングができる度に、あるいは異性からメッセージを受ける度に、登録したアドレスにメールが届くことになります。

設定により多少の工夫はできると思われますが、いずれにせよ、マッチングアプリの利用により、婚姻生活を送りながら、ちょくちょくスマートフォンを気にするようになるでしょう。そうした不自然な動きを不審に思った配偶者が、携帯の中身やメールをチェックし、マッチングアプリの利用が発覚する、というケースが非常に多くあります。

本記事では、既婚者専用のマッチングアプリの利用を否定するわけでも、推奨するわけでもありません。しかし、その利用が配偶者に発覚すれば、夫婦関係に亀裂が生じることは避けられません。たとえ目的が友人や飲み仲間相手であっても、異性相手である以上、良く思う配偶者はいませんし、誤解を誤解と受け止めてはもらうのは困難と言えるでしょう。

以上の事実については理解した上で、利用に際しては慎重に判断をしていただければと思います。

まとめ

☑️既婚者専用のマッチングアプリの利用が静かに流行しているようです。

☑️既婚者向けのマッチングアプリの利用が、配偶者との関係で直ちに有責行為(違法行為)に当たるわけではありません。その目的や結果に左右されます。

☑️とはいえ、マッチングアプリの利用は、配偶者に発覚しやすいという特徴があります。

☑️マッチングアプリの利用が、たとえ友人や飲み友達を作る目的であったとしても、異性を相手とする以上、配偶者には受け入れ難いのが実情です。

弁護士の本音

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今回は、昨今静かに流行している既婚者専用のマッチングアプリの注意点について解説しました。本文にも書かせていただいたとおり、本記事は、そうしたアプリの利用を否定するわけでも、推奨するわけでもありません。ただ、そうした利用により起こりうる事態を、念の為理解しておいていただくのが良いと思っています。

なお、既婚者が独身と偽って、婚活用のマッチングアプリを利用するケースも多くあります。これにより交際に至った場合、独身である相手の方の貞操権を侵害したものとして、慰謝料を払わなければならなくなるケースがあります。過去の判例でも多く認められるところです。別の機会に記事にできればと思います。

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