別居中の妻から過大な婚姻費用・生活費を請求された場合の対処法

別居中の妻から過大な婚姻費用・生活費を要求されたら?3つの対処方法!

別居中の妻が多額の生活費を請求してくるんです!

横浜の弁護士の青木です。このような相談をなされる方が時々いらっしゃいます。

別居中の妻に婚姻費用という名称の生活費を渡さなければならないことは、現在の法律上は事実です。しかし、どうしても払えないという場合もあるでしょう。

私がこれまでご相談を受けた方の中には、一方的に別居をされてしまった後、調停・審判において、妻、3人の子の分の婚姻費用・生活費を支払わなければならなくなったあげく、それに基づいて強制執行をされてしまった人もいらっしゃいました。

そうして、給与の半分を持って行かれ、さらに住宅ローンを差し引かれた後は、数千円程度しか手元に残らず、深刻な状況に陥っていました。生きていくために、会社を辞めて強制執行を免れることすら考えていらっしゃいました。

もう少し早くに、遅くとも婚姻費用・生活費に関する調停を申し立てられた時に相談してくれれば、、、、と思うのですが、とにかく、別居中の妻からの生活費・婚姻費用の要求は、時として甚大な「被害」に至ることもあります

そうした、妻から多額の生活費を請求された、働く方のために、3つの対処方法を述べてみたいと思います。

とりあえず婚姻費用の支払いを渋る

別居直後の、調停の前に生活費を請求される場合、本来払わなければならない金額を大幅に上回った額を要求されていることが多いでしょう。

そうした場合は、適正な金額がはっきりと分からないのでしたら、とりあえず支払いをするのを拒絶するか、あるいは少額の提案をして、調停を申し立てられるのを待つというのも一つの方法です。(婚姻費用を支払う義務があるあなたから調停を申し立てることは不自然ですので。)

このとき、以下の2つのメリットが挙げられます。

調停を申し立てられるまでの婚姻費用・生活費については、支払いを免れることができる

裁判所の運用では、婚姻費用・生活費を支払わなければならないのは、調停を申し立てられた月からの分とされています。そうですから、それまでの間はひとまずご自身の生活を立て直す猶予期間が与えられるといえるでしょう。

特に、別居直後は新しい生活のために多額の出費をしていることも多くあります。そうした中、貯蓄が底をつきかけることもあるでしょう。そのとき、こうした猶予期間が生活を立てなおしてくれるチャンスとなる場合があります。

もっとも、別居から調停を申し立てられるまでの間の生活費分は、後から財産分与の一種として支払うことになる場合があります。(あまり多くはありませんが。)

調停での話し合いなら、「養育費・婚姻費用算定表」を基準にして話を進めてもらえる

調停前であると、普通、別居中の妻は「生活に必要な金額の全て」を自分なりに計算して要求してくることがほとんどです。別居先の賃貸住宅の賃料、子供の学費、塾代、食費、電気光熱費、生命保険の保険料などなど。これらを全部足し合わせると、あなた自身の給与手取りのほとんどを占めてしまいます。

もともと、こうした出費は同居を前提として、その中で捻出できるものだったはずです。しかし別居によって、二世帯分の基本生活費を負担しなくてはならなくなった今、普通に必要額を足し合わせると、あなたの手取りを超えてしまいます。

そうしたこともありますので、裁判所においては、「養育費・婚姻費用算定表」なるものが利用されています。その詳しい利用方法については、「基本の基本!算定表を使った養育費の計算を弁護士が解説!」をご覧ください。

この表に基づくと、あなたが実際に妻に支払わなければならない金額は、妻が予想していたものよりも相当に下回るのが通常です。さらに、本来婚姻費用はその収入力によって平等に負担しなければならないものです。

あなたの妻は、これまではあなたの稼ぎに全面的に依存してきたかもしれません。でも、本来は妻も仕事はできるはずです。

「養育費・婚姻費用算定表」をご覧いただくと、横軸に妻の収入額を当てはめるようになっていることが分かると思います。

通常、これまで専業主婦としてやってきて、別居している現在も無職であったとしても、120万円程度の収入があるものとみなされることが多いです。実際の収入というよりも、どのくらいの収入力があるか、ということを見るからですね。

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加えて、調停になった段階で、弁護士を入れて婚姻費用・生活費の額を争うということも考えられるでしょう。

子供がいれば学費分も請求されることが多いですが、当然、全額負担しなければならないわけではありません(これについては、私立学校の費用は、公立学校の学費を上回る部分の、さらに半分の負担で良いとした大阪高等裁判所の判断があります)。

住宅ローンが残っている住宅に住み続けているという場合も、負担しているローン額は一定の範囲内で考慮されます。

弁護士がついていれば、その点を法律や裁判例、あるいは運用例を根拠に主張していくことができますので、裁判所での運用を重んじる調停では、より有利に話をすすめることが可能になるでしょう。

以上のようなメリットを利用するため、調停になるのを待つというのが一つの手段です。

直ちに離婚調停を申し立てる

同居を裁判所に求めることはできるの?

あなたが離婚やむなしとお考えであれば、婚姻費用の調停を申し立てられた段階で、直ちに離婚調停の申し立てをすべきです。

婚姻費用・生活費というものは、正式に離婚が成立するまでは支払い続けなければならないことが原則です。ですので、離婚を早めるために、離婚調停を直ちに申し立てることが先決です。

協議で離婚できない場合は、調停・裁判で離婚をすることになりますが、裁判をするには必ず調停を経ていなければなりません(調停前置主義といわれます)。また、すでに婚姻費用の調停を申し立てられたのであれば、その場を利用して離婚自体の話し合いをすることで労力と時間を有効活用できるでしょう。

婚姻費用の調停を申し立てられたら、離婚を念頭にしている場合は、反対に離婚調停の申し立てをしましょう。

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強制執行をあえて受ける?

時には、裁判所が公平と考えて算出した婚姻費用額でも、住宅ローンの負担をあまり見てくれなかったり、あるいはその後の事情の変化で、支払いができなくなる場合もあります。調停で成立させた場合でも、調停委員や裁判官の説得に押し切られて応じてしまったり、もともとの考慮が甘かった場合にも同じことが生じ得ます。

そうした場合は、給与の差し押さえという強制執行をあえて受けるということがあり得るかもしれません。

強制執行で給与の差し押さえができる限度は、基本的に、あなたの手取りの2分の1です(ただし、一定額を超える部分については、差し押さえの対象になります。)。したがって、手取りの2分の1については、あなたの生活のために使うことが可能です。止むに止まれぬ事情があれば、こうした手段を取るのも考えざるを得ないでしょう。

もっとも、これは最後の手段です。婚姻費用の負担は法律上要求される義務ですので、その事自体は理解しておく必要があります。

また、前提の事情が変わった場合は、婚姻費用や養育費の減額の申立というものが可能ですので、まずはそれを考えるべきです。

それに、支払わなかった部分は、あとからいずれにせよ払わねばなりません。婚姻費用については、できるだけその金額を決めるときに慎重になるべきでしょう。最近の離婚調停では、妻側はほぼ間違いなく婚姻費用の申し立てをします。

弁護士のホンネ

生活のためというのも一つの理由ですが、最近は妻側にも弁護士がついていることが多いですので、より戦略的な理由から婚姻費用の申し立てをしているのです。

つまり、「調停が長引けば長引くだけそっちは損をするぞ」「早く終わらせたければこちらの言う条件を飲め」、という妻側のホンネと戦略です。

これに対しては、こちらとしてもしっかりと法的な主張をして、金額を抑えるよう行動する必要があるでしょう。

そして、離婚について決心がついていらっしゃれば、同時に離婚調停をすぐに提起をし、早期妥結によってコストを抑えることを考えましょう。

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