不倫夫から離婚を請求されている!応じるか、拒否するか、どのように判断すれば良い?

感情的になるのは当然!でも、少し時間が経ったら冷静に判断を

突然、夫から「離婚したい」と告げられた。そしてその理由が「他に好きな人ができた」「気持ちが離れた」という、いわゆる“不倫”。これほど衝撃的な出来事はありません。長年の信頼を裏切られたと感じ、悲しみや怒りで心が張り裂けそうになるのは当然です。

しかし、ここでひとつだけ意識していただきたいことがあります。それは、「感情に任せて即座に判断しないこと」。

怒りにまかせて「そんな人とはすぐにでも別れる」と突き放すのも、逆に「夫が戻ってくるかもしれないから」と曖昧な態度を取り続けるのも、どちらも危うい対応です。大切なのは、「今の状況で、自分にとって一番得になる選択は何か」を冷静に分析し、見通しを持って動くことです。

たとえば、当事務所に相談に来られた50代の女性は、当初は怒りのあまり即座に離婚届を書こうとされていましたが、弁護士と話す中で「今離婚するよりも、まずは情報を整理し、経済的な見通しを立ててから判断しよう」と思い直され、結果として冷静な選択ができました。

離婚を受け入れるべきか、拒否すべきか。その判断には、法律的な観点、経済的な観点、そして今後の人生設計を踏まえた冷静な分析が欠かせません。感情の整理がついたら、ぜひ一度、立ち止まって状況を見直してみましょう。

※今回は、主に女性側の視点に立った記事となりますので、ご了承ください。

慰謝料は「思ったほど高額ではない」現実を知っておこう

不倫と聞けば、多くの方が「高額な慰謝料を請求できるはず」と思いがちです。しかし、実際の慰謝料額は、多くのケースで100万円〜300万円程度にとどまります。

もちろん、不貞行為が長期にわたっていたり、婚姻関係に深刻な影響を与えていた場合など、状況によって増額されることはありますが、それでも「人生を立て直すための資金」としては必ずしも十分とは言えません。

最近の裁判例で、離婚時の慰謝料額が300万円を超えるケースは滅多にありません。200万円の慰謝料が認められれば良い方、というのが、現在の現場感覚です。

例えば、最近でも、夫の不倫が証明され、明確で露骨な証拠(不倫相手との行為中の写真)もあったにもかかわらず、慰謝料は100万円にとどまったケースがありました。「これだけ苦しんだのに…」というお気持ちはもっともですが、裁判所の判断基準は必ずしも感情と一致するものではありません。

慰謝料に過度な期待を寄せるのではなく、全体として自分が経済的にどのような基盤を築けるか、という視点で対応を考える必要があります。

不倫した夫からの離婚請求は、原則として認められない

法律の世界では「有責配偶者」からの離婚請求は原則として認められないというルールがあります。つまり、不倫という明確な違法行為をした側(=夫)からの離婚請求は、たとえ本人が「別れたい」と望んでも、裁判では認められない可能性が高いということです。

これは最高裁昭和62年9月2日判決でも確認されており、現在でも家庭裁判所での判断に大きな影響を与えています。

(最高裁昭和62年9月2日判決 民集41巻6号1423頁)

①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、②その間に未成熟の子が存在しない場合には、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできないものと解するのが相当である。

つまり、離婚を希望する側が有責配偶者の場合は、①長期間の別居期間(一般的には10年程度)があること、②未成熟の子がいないこと、③離婚により相手が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれないこと、が必要とされています。

有責配偶者からの離婚請求だとして、夫の請求を棄却する実例は豊富にあり、現在の離婚制度の根幹を占めていると言っても良いでしょう。そのため、夫が不倫をしている場合は、妻は、離婚をしない限り、長期に渡って法的婚姻関係のもとで生活費の支援(婚姻費用の受給)を受けることができます。

この原則を理解することで、相手のペースに飲まれず、自分にとって有利なタイミングで交渉を進めることが可能になります。

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別居しながら婚姻費用を受け取るという選択肢

「今すぐ離婚するかどうか迷っている」という方にとって、有力な選択肢のひとつが「別居しながら婚姻費用を請求する」という方法です。

夫婦が別居状態にあっても、法律上は婚姻関係が継続している限り、収入の多い配偶者から収入の少ない配偶者へ生活費を分担する義務があります。これが「婚姻費用」です。

仮に夫が高収入で、自分がパート勤務や専業主婦であれば、婚姻費用として毎月10万円〜20万円程度を受け取れる可能性があります。

実際に、専業主婦だった妻が別居後に婚姻費用の申し立てを行い、毎月10万円以上の婚姻費用を受け取りながら、自立に向けた職業訓練を受け、離婚後を見据えた生活基盤を作れたというケースもあります。この制度を活用すれば、経済的に自立する準備を進めながら、冷静に離婚の判断をする時間的余裕も生まれます。

なお、具体的な婚姻費用額は夫と妻の収入額や、子供の有無によります。以下の裁判所が公表している婚姻費用の算定表で金額を確認してください。

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

財産分与を活かして、新たな人生をスタートさせる道もある

長年の婚姻生活の中で形成された財産は、原則として2分の1ずつ分けるのが基本です。これが「財産分与」です。

仮に共有の不動産、預貯金、株式などがある場合、離婚に応じることでその一部または半分を手に入れることができます。

たとえば、夫婦で2000万円の資産を持っていたとすれば、原則1000万円を分与されることになります。このまとまった資金を活用すれば、住居の確保、再就職、老後資金の準備など、今後の人生設計が大きく変わる可能性もあります。

ある女性は、離婚に応じることの条件として通常よりも多めの財産分与を受け取り、それを基にNISA口座や特定口座を活用して資産運用を開始しました。現在では年間50万円程度の配当収入を得て、精神的にも経済的にも自立した生活を築いています。

最近は新NISAの開始や優良な投資信託も増えていますので、早期に財産分与をもらって資産運用をした方が得、という考え方も強くなって行くでしょう。下記の記事もぜひ参考にしてください:

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判断の鍵は「情報の精度と分析力」

離婚を受け入れるかどうかを決めるためには、いくつかの重要な視点を正確に押さえる必要があります。

  1. 相手が本当に有責配偶者であるかどうか(自分にも落ち度がないか)
  2. 財産分与でどの程度の金額が見込めるのか
  3. 婚姻費用としてどの程度の支援を受けられるのか

これらの見通しを正確に立てるためには、やはり専門家である弁護士の力が必要不可欠です。

たとえば、相手の資産をきちんと把握していなかったケースです。10年近く婚姻費用をもらい続け、いざ離婚する段階となったとき、財産分与額が想像していたよりも遥かに少なく、それであれば早い段階で離婚条件の交渉をして多めの財産分与を受けていた方が良かった、と後悔するケースがあります。

また、そもそも自分自身にも落ち度があり、夫からの離婚請求が思いがけず裁判で認められてしまったというケースもあります。

だからこそ、最初の段階でしっかりと情報を集め、法的な見通しをつけることが何より大切なのです。

弁護士のホンネ:あなたにとって本当に幸せな選択を

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ここまで、法律的・経済的な視点から、離婚をめぐる判断のポイントをお伝えしてきました。しかし、人によって、どういう視点が大事なのかは異なります。

仕事をしている方も多い現在、経済的にはある程度自立しているという方も少なくありません。そのような方にとっては、わずかな婚姻費用にこだわるよりも、早期に離婚を成立させ、財産分与を受けてそれを資産運用に活かしながら、新たな人生を切り拓いていく方が、長い目で見れば有利になるケースもあるでしょう。

また、夫との戸籍上の関係性を続けるより、新しい人間関係や可能性に目を向けた方が、人生の幸福度が高まることもあります。

とはいえ、全ての人に「離婚を急いだ方がいい」と言いたいわけではありません。大切なのは、あなた自身の価値観、生活状況、希望に寄り添いながら、最善の選択を見つけることです。

そのためにも、信頼できる弁護士とじっくり話をしながら、一つ一つ丁寧に選択肢を検討することをおすすめします。

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なお、本文に挙げた相談例は、実際の実例やありうるケースを融合したものです。

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