裁判にするか?話し合い継続か?判断する基準は何?【離婚・不倫慰謝料】

このまま話し合いを続けるべきか、それとも裁判にするのか、とても迷っています。何を基準に判断すれば良いんでしょうか?

このような悩みを抱えている当事者の方は多いと思います。
離婚や、不倫の慰謝料請求の問題では、しばしば話し合いに途中に壁に当たります。つまり、このまま交渉を継続して妥協していくか、それとも、思いきいって裁判に持っていくかという悩みです。

そこで今回は、普段から交渉や裁判を行っている弁護士が、どのようにそれを判断するのかの基準を説明します。

1 裁判にした方が経済的に有利か

まずは、裁判にした方が経済的に有利かどうかです。これが基本的な判断基準になります。

あらゆる交渉に通ずるものとして、BATNA(バトナ)というものがあります。これは、交渉学上の用語で、Best Alternative to Non-Agreement合意できない場合の他の最善の代替案)の略ですが、要するに、他の代替措置の強さによって、交渉力が決まってくるということです。

例えば、妻が夫の不貞相手に対して慰謝料請求をする場合を考えましょう。

妻は200万円を請求しているけど、夫の不貞相手が50万円くらいしか支払い額を提案をしてこないということがあります。もし裁判になった場合、相場からすれば150万円程度の解決が見込めるのであれば、妻の方はより強気で金額を上げるよう圧力をかけることが可能でしょう。なぜなら、話し合いで解決できなければ、妻としては裁判を提起するという有力な選択肢があるからです。妻のBATNA(バトナ)が強い状況ですね。相手女性も、裁判になれば結局は150万円程度を払わなければならないとわかれば、金額として大幅な譲歩を行わざるを得なくなります。したがって、妻は引き続き、交渉で強気な交渉をして、ダメだったら裁判に移行すれば良いわけです。

一方で、その女性の経済力が乏しく、もし裁判で支払いが命じられても、支払いができなければ、意味がありません。強制執行しようにも、財産がなかったり、正社員として勤めている先がなければ、強制執行ができません。

そうした場合は、裁判を提起するという妻の選択肢は弱くなります。これは、妻のBATNA(バトナ)が弱い状況ですね。そうした場合は、むしろ不貞相手女性の交渉力が強く、妻は金額を下げる方向で譲歩せざるを得なくなるかもしれません。裁判を提起することも、できるだけ避けるべきという判断になるでしょう。

離婚も、慰謝料の額や財産分与の額で揉める場合は同様ですね。それに加えて、離婚では、夫が妻に婚姻費用を支払わなくてはならないケースが多いですので(離婚すれば払わなくて良くなるもの)、妻は、離婚問題を長引かせるという選択肢も有力になります

妻としては、交渉で安易に妥結する必要はなくなります。慰謝料や財産分与額を考えると、裁判で解決を図っても良いのですが、離婚自体を積極的には望んでいないのであれは、裁判を提起する必要すらありません。現状維持(それによって婚姻費用をもらい続ける)という選択肢も十分に考えられます(それが道徳的に良いかどうかは別として。)。

離婚問題においては、妻のBATNA(バトナ)は破格の力を持っているわけですね。

このように、交渉を続けるか、裁判を提起するかは、裁判をした場合にどれくらいの経済的メリットがあるのかというのが、重要な判断基準になります。

2 証拠は十分か

裁判は必ずしも正義が通用するわけではありません。

裁判所はあくまでも証拠に基づいて判断をせざるを得ないという限界があります。そのため、どのような証拠を持っているのか、その証拠でこちらの言い分が裁判で通用しそうかという観点も大事です。

特に、モラハラや暴言については、証拠に残りにくいです。例えば、結婚してから10年間妻のモラハラに苦しんでいて、必死に家計のために仕事をしてきた夫がいるとします。その夫が離婚をしたいと思い、さらに妻に慰謝料請求をしたいと思ったとしても、録音などの証拠がなければ認めらないのが普通です。

一方で、その夫が、妻からの10年来の暴言に精神を削られた結果、職場にいた女性の優しさに惹かれてその女性と恋に落ち、男女関係に至った場合、どうなるでしょうか。
不貞の証拠は、ラインや電話履歴、調査会社による調査などで、取得をしやすいという性質があります。もし、妻が調査会社を雇って調査をし、その証拠を取得できれば、裁判では、夫婦関係が破綻した責任は、全て夫にあるとされる可能性が高いです。

これほどまでに証拠は重要です。
したがって、上の「1」で裁判になった場合に有利かどうかを説明しましたが、裁判になった場合に本当に自分の想定通りになりそうかは、しっかりと手元の証拠を元に判断する必要があるでしょう。

3 お金よりも重視すべきことはないか

さて、これまで経済的利益を判断基準とすることを述べてきましたが、経済的な利益よりも優先すべきものがあるケースも少なくありません。

裁判にして大ごとにして社会的評価を下げたくないとか(有名人などのパターン)、揉めているこの心労から早く解放されたいとか、再婚したい相手がいるとか、子供を巻き込みたくないとか、親や関係者がすでにお金を用意してくれているのでお金の心配はないとか、さまざまです。

したがって、経済的損得といった定量的な事情と、上記のような個々人の定性的な事情を天秤にかけて判断していくことになります。
そうなると、裁判で決着を図るべきかを、自分一人で判断していくのは難しいかもしれません。専門家に相談をして、納得いく形で、裁判にするべきかを検討する必要があるでしょう。

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

裁判になった場合の結果の見通しについては、難しいケースもあります。それは、個々の事情によって裁判結果が大きく変わることもありますし、個々の裁判官の考え方によって、判断が分かれる場合もあるからです。

したがって、裁判になった場合の見通しというのも、一定の振れ幅があります。そうした中で、裁判になった場合の見通しと、現在の交渉状況を比べざるを得ません。裁判に通じていない方がそれを行って、最適な選択を行うことは極めて困難です。交渉段階から弁護士などの専門家と相談する意味は、まさにここにあると言えるでしょう。

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