先に離婚を打診すると負けなの?離婚紛争の都市伝説

弁護士

プロキオン法律事務所(https://rikon-procyon.com/)(横浜で離婚に特化した法律事務所として2015年に設立。翌年東京にも事務所開設。)の代表弁護士の青木です。離婚や男女問題に特化した弁護士として、年間200回以上の離婚調停や裁判に出席しています。
(弁護士 青木亮祐 /プロキオン法律事務所 代表弁護士)

今回は、離婚話を進める場合、「先に離婚を打診すると不利」といった、いわば都市伝説のようなものが広まっていますので、それについて解説をします。

1 先に離婚を打診すると不利?何年も話が進展しないことも

まず、離婚問題を進める際、離婚をしたい旨の意思を表示しなければ何も進みません。

法律相談を受けて時々あるのが、夫婦のどちらも「先に離婚を打診すると不利」という情報をネット上などで見つけ、お互いに離婚をしたい(少なくとも有利に離婚の話を進めたい)という気持ちなのに、離婚を切り出せず、そうした状況を何年も続けているといった例です。これはお互いの人生にとって損としか言えません。

結論から言うと、相手より先に離婚をしたい旨を述べても問題ありません。

2 なぜ「先に離婚を打診すると不利」と言われる?

なぜ、先に離婚を打診すると不利という考え方が出回っているのでしょうか。

それは、離婚の話し合いにおいて、離婚を希望する側と、離婚をしたくない側が離婚の交渉をすると、どうしても離婚を希望する側の方が、離婚条件で譲歩することになるとの考えがあるためです。

ただ、これはあくまでも心理戦で多少意味を持つものに過ぎません。交渉の優位さを決定づけるものは、実は他にあるのです。

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3 交渉力を決定づけるのは、「離婚ができないことでどちらが損をするか」

交渉学でも実証されていることですが、交渉力ないし交渉の優位さを決定づけるのは、今の状況が続くことで(もしくは他に残された代替手段では)、どちらがどの程度不利になるかという視点です。

離婚問題で言えば、今の状況が続くことで、夫と妻のどちらが損なのか、そしてその損を金額に換算するとどの程度のものになってしまうのか、という視点が重要になります。そうした長期目線だと不利になる側は、離婚の話し合いを進めていくうちに、離婚条件で譲歩をせざるを得なくなります。そのとき、どちらが先に離婚を打診したのかという点はもはや重要ではありません。

具体的な例で考えましょう。

例えば、すでに別居が開始しているケースであれば、今の状況が続くことで不利になるのは夫であることが多いでしょう。離婚に至るまでの間、収入が妻より高い夫は、妻に対して生活費(婚姻費用)を支払わなければならないからです。その場合、夫は妻に対して、生活費の永続的な支払いを免れたいとの思いで、相応の解決金を提示せざるを得ません。仮に自分に非がなくとも、生活費の1年間分から3年間分の金額(ケースによっては10年間分の金額)を、離婚に応じてもらうための解決金として提示することが良くあります。

※一般的に、離婚問題で女性側が有利とされているのは、この婚姻費用制度の存在が決定的に寄与していることがお分かりいただけると思います。

一方、婚姻費用の支払いが発生する場合でも、一般的に、妻が20代や30代前半で、子供もいなければ、妻にとっては次の人生(再婚)を獲得する時間が残されています。しかし、離婚問題が長引くと、そうしたチャンスを逃すことになりかねません。このような場合は、妻は婚姻費用をもらえるとしても、その交渉力はそれほど強くなく、夫婦は対等な立場で交渉を行うことになるでしょう。

このように、離婚協議の際の交渉力は、「すぐに離婚ができなければ、どちらがどの程度損してしまうか」ということに決定づけられます。また、自分から離婚を切り出したとしても、離婚条件で折り合えなければ、最終的には離婚に応じないという選択も可能です。したがって、どちらが先に離婚を切り出したかは、気持ちの優位性の問題にすぎず、ほとんど結果に影響を及ぼさないと言えるでしょう。

なお、交渉力に関しては、交渉学の見地からもう少し詳しく説明をした記事もありますので、参考になさってください。

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4 おまけ(双方に弁護士がついている場合のあるある)

ところで、双方に弁護士がついた交渉であっても、「こちらは離婚はしたくない。条件次第であれば考える。」という建前で交渉がなされるケースは見受けられます。

「条件次第であれば考える」というのは、大抵、本心では良い条件であれば離婚したいというケースが多いです。というのは、本当に心から離婚したくないケースでは、そもそもお金を払って弁護士をつける必要は必ずしもありませんし、離婚協議に応じる必要もないからです。

したがって、「離婚はしたくないが、条件次第では考える」という趣旨の発言を相手がしていれば、本心では離婚をしたい、もしくは離婚やむなしと考えているが、それだと交渉の優位さを保てないので、建前でそのように発言している、という風にひとまずは捉えておけば良いでしょう。心理的な交渉優位を目指す戦略は、それが見透かされてしまえば、機能しなくなります。

大事なのは、客観的に交渉力が強い状況にあるかどうか(すぐに離婚できない場合にどちらがどの程度損をするか)です。

今回の記事が皆様の離婚問題解決のお役に立てましたら幸いです。

今回の弁護士からのアドバイス

☑️「先に離婚を打診すると不利」という考えはあまり気にする必要ないでしょう。

☑️離婚を協議する際の優位さは、「すぐに離婚できない場合にどちらがどの程度損をするか」で決まります。どちらがどの程度不利益を受けるかを、具体的に想像してみましょう。

☑️「条件次第では考える」という表現も、心理的な交渉の優位さを目指すものであることが多いです。

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

交渉と聞くと、交渉相手の心理面の探り合いというふうに思われるかもしれません。しかし、実際にはそうした心理的な要素は、交渉においては二の次です。一番大事なのは、目下の交渉が決裂したら、どちらの方が不利なのか、そこを正確に見極めることです。

そこを見極めさせないために、本心を隠し、「離婚には応じない」という表現を前面に押し出す戦術がよく行われます。しかし、短期的で一時的な優位にしかなりませんし、相手に見透かされることもあるでしょう。

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