子供の引渡しを求めたい!考慮される事情は?弁護士が徹底解説

妻が子供を連れて出て行ってしまった!
夫とこれ以上生活できないと思って出てきたけれど、子供を連れて来ることができなかった!

こんなとき、法的に子供を引き取る方法がないのか検討されるかもしれません。
今回は、子供の引渡しに関する考慮事項についてご説明します。

1 法律的に、どんな方法があるの?

 子供の引渡しを相手に求めたいとき、法的手段として取られることが多いのが、「子の監護者指定の審判」、「子の引渡しの審判」、そして、これらを本案とする「審判前の保全処分」(上記2つの事件が判断されるまで時間がかかるため、暫定的に引き渡しを求めるもの)です。

子の監護者指定と子の引渡しは、まずは調停手続きを申し立てることもできますが、最初から審判申立てがされることも多いです。

もし、法的手段をとってでも子供を引き取りたいと考えた場合は、直ちにこれらの手続きを、管轄の裁判所に申し立てる必要があります。

2 裁判所のチェックポイント

 子の監護者指定、子の引渡しについて、裁判所が判断するときの考慮事由がわかれば、申立てが認められるのか、どのような事情を主張したらいいのか分かるはずです。

 そこで、裁判所が考慮される事情を説明します!

(1)子の福祉

 裁判所が、どちらの親が監護者としてふさわしいかを判断するとき、基準となるのは、「子の福祉」です。

子の福祉とは、子供の監護の状況や、事案ごとの色々な事情を考慮したときに、子供にとってどちらを監護者とするのがよいか、ということです。あくまでも、子供の目線で、子供の利益のために判断をするということです。したがって、夫婦仲が悪くなった原因がどちらにあるのか、という点はほとんど考慮されないことに注意しましょう。

以下、具体的な考慮要素を見ていきます。 

(2)従前の監護実績

 まず、一つ目のチェックポイントは、「従前の監護実績」、つまり、今まで子供のお世話にどれだけ携わっていたかということです。考慮要素の中で、1番重視される事情になります。

具体的には、どちらが「主たる監護者」であったか、つまり、子供のお世話を主としてどちらが行っていたかがポイントになります。

これは、別居のときだけではなく、子供がご出生されてから現在までの間の事情が考慮されます。

例えば、子供のお食事を用意していたのはどちらか、学校との連絡をとっていたのはどちらか、病気のときに看病をしたり病院に連れて行っていたのはどちらか、福祉施設との連絡をとっていたのはどちらか、といった事情が考慮されます。

経済的な事情(どちらが稼いでいるか)は、行政からの支援や養育費などである程度カバーが可能なので、そこまで重視されていません。この点は驚かれる方も多いと思います。

(3)監護環境の継続性

 監護環境の継続性とは、子供にとって、従前の生活環境はあまり変化させない方がよいのではないか、という観点からの考慮要素です。

ただ、子供の年齢にもよりますし、事案ごとの個別事情が見られます。

また、(1)の主たる監護者と関連付けて検討されます。

 例えば、子供が小さい場合は、主たる監護者と生活するためには、子供の引っ越しが必要になる場合でも、子供と主たる監護者の精神的なつながりの方を重視して、監護環境の継続性が劣後することもあります。

 また、就学後は、就学環境や、医療福祉などの状況が変わらないことが尊重される傾向がありますが、就学環境が変わっても、子供を連れ出した方が就学環境を整えることができます。

そのため、主たる監護者が子供と遠方に引っ越しして、子供の転校手続きを行って就学環境を整えた場合は、主たる監護者の元に子供がいることが認められる可能性が高いです。

逆に、主たる監護者ではなかった配偶者が、子供とともに遠方に引っ越し、就学環境を整えた場合は、微妙なところになります。

(4)子供の意思

 子供が小学校高学年くらいだと、子供の意思が聞かれることになります。両親との愛着関係の調査で、調査官という専門家が、子供の表面的なお答えだけでなく、本音を聞き取り調査することがあります。

 有能な調査官であれば、子供の発言それ自体ではなく、なぜそうした発言をするのか、別居に至った経緯を丁寧に分析し、親からの刷り込みやマインドコントロールがないかを観察します。

 もっとも、子供の意思が強ければ、親からの刷り込みの可能性があっても、無下にできないというのも事実です。

(5)面会交流の許容性

 他の考慮要素と比べて、優先されるものではありませんが、どれだけ配偶者に対して寛容に面会交流を行うつもりであるかという基準です。

 かつては重視されていた要素ですが、昨今の高裁判決(平成29年1月26日付東京高等裁判所判決)で、その重要性をやや否定的に捉える判断がなされたため、現在ではあまり重視されていません。

 ※なお、この判決以降、面会交流に対して否定的に対応する(面会交流に応じない)監護親が増えたような印象を持ちます。弁護士の間では非常に評判の悪い判決です。

(6)きょうだい不分離

 子供が複数いる際、できるだけ兄弟を分離するべきではないという考慮要素ですが、それほど優先されておらず、絶対的な基準ではありません。

(7)監護開始の態様

 片方の配偶者の承諾を得ずに子供を連れて別居した場合、「違法な連れ去り」であるとして、監護者としてふさわしくない、という主張がされることがあります。

 この点については、他方の親の同意なしで子を連れて別居したことだけから、常に監護者としてふさわしくない、という判断がされるわけではなく、従前の監護状況や主たる監護者の観点から、別居後の監護環境に問題がなければ、それほど否定的には取られない可能性があります。

 もっとも、子供を連れ出すに際し、暴力的な手段を用いるなど違法な手段が用いられていたら問題視される可能性があります。

(8)父母の異性関係

 片方の配偶者が不貞をしていた場合、不貞をしていた事実だけから、監護者としてふさわしくない、という結論にはなりません。しかし、不貞相手に会うために子供のお世話をしなかったなど、不貞行為の結果、子供の監護を怠る結果になったことは、監護者としてふさわしくない、という事情になります。

(9)監護補助者

 一方の親の両親など、子供の監護を手伝ってくれる人(監護補助者)がいる場合、子供の監護が十分にされる可能性が高くなるので、監護者としてふさわしい事情の一つとして考慮されます。

 もっとも、子供と一緒にいる親が、子供の監護をせず、全面的に監護保護者が子供の監護をしている場合には、監護保護者による監護は、一緒に住んでいない親による監護より劣ると評価されます。

3 審判前の保全処分に関する裁判所の考慮事由

 保全処分(審判の決定が出るまでは時間がかかるため、暫定的に引き渡しを求める手続きです。)では、2で見てきた考慮要素に加えて、「審判が出る前に判断をしないと、子供に重大な影響が出るか」が考慮されます。

 例えば、子供と一緒にいる方の親が、子供にお食事を与えないなどの、子供に危険なことが起こる事情が必要です。

4 まとめ

・子供を引き取るための手続きとしては、「子の監護者指定の審判」、「子の引渡しの審判」、そして、これらを本案とする「審判前の保全処分」がある!

・主な考慮要素は以下の通り!

①従前の監護実績
②監護の継続性
③子供の意思
④面会交流への寛容性
⑤兄弟姉妹の不分離
⑥監護開始の態様
⑦父母の異性関係
⑧監護補助者

・審判前の保全処分では、さらに「審判が出る前に判断をしないと、子供に重大な影響が出るか」が考慮される!

弁護士の本音

弁護士のホンネ

 単独親権、共同親権の議論がされ始め、子供とご両親の交流に関心が高まっている状況ですが、お父様もお母様と子供と一緒に生活したい思いは同じだと思います。
 本文では、子の福祉が重視されると記載しましたが、正直、子の福祉が何であるのかは、お父様視点、お母様視点で考えが異なると思います。
 もしかしたら、このコラムを読んで悲しい気持ちになった方がいらっしゃるかもしれません。子の引渡しを求めることが難しそうな場合であっても、面会交流で子供の交流を続けることも検討することができます。
 子供との生活、交流を続けるために何ができるのか、困ったら弁護士に相談されるのがよいかもしれません。

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