養育費とは別の医療費請求、認められるケースとNGなケース

1 はじめに

離婚後、お子様が通院を続けて医療費がかさんでいる場合、「養育費とは別に医療費を請求してもいいのだろうか?」と悩む方は多いです。

実際、離婚時の合意書や調停調書には、たいてい次のような条項が含まれています。

病気や事故等により特別な出費を要する場合、その負担について当事者双方で別途協議して定める。」

一見すると、このような記載があれば医療費請求は問題ないように思えます。

しかし、実務の現場では、こうした医療費の請求がきっかけで、元配偶者との関係が悪化してしまうケースも少なくありません。

この記事では、弁護士として数多くの離婚案件に携わる中で得た知見を踏まえ、

  • 養育費とは別に医療費請求が認められるケース
  • 請求する際のポイント
  • 離婚時に定めておくべき取り決め

について、わかりやすく解説します。

2 特別費用に含まれる医療費とは?日常的な医療費と高額医療費の区別

まず最初に理解しておくべきは、「医療費」と一口に言っても、

  • 日常的に発生する医療費(風邪の診察代、軽いケガの治療費、予防接種や定期健診など)
  • 予想外で高額な医療費(入院費用、手術費用、歯の矯正治療費など)

の二つに大きく分かれるということです。

多くの場合、日常的にかかる医療費は、すでに養育費の中に含まれていると考えられています。

つまり、軽度な通院や薬代は、養育費を支払う側が別途負担を求められることなくカバーされる範囲とされるため、特別に請求できません。

一方で、入院費用や長期にわたる歯科矯正の費用などは、日常的に発生しない「特別出費」として認められやすい傾向があります。

このように、まずは請求したい医療費が「日常的か」「高額か」という区別をしっかりとつけることが重要です。

3 相手の合意があれば特別費用に含まれる

次に、特別出費としての医療費の請求は、まずは相手方の合意を取るように心がけましょう。

特に、高額な医療費を請求するときには、相手に「なぜその医療費が必要なのか」「どのような治療が行われるのか」を丁寧に説明し、納得してもらう努力が欠かせません。

この説明と合意の過程が省略されると、後々トラブルの原因になります。

そのため、請求前には必ず医療費の詳細(領収書だけでなく、治療内容や期間も含めて)を共有し、支払いに関する話し合いを行うことが実務的には非常に重要です。

4 合意が得られない場合はどうなるか?裁判所の判断に委ねられる

もし相手が医療費の支払いに合意しない場合は、話し合いだけでは解決できません。

このような場合には、調停や審判の申立てを行い、裁判所の判断を仰ぐ必要があります。

裁判所が医療費を特別出費として認めるかどうかは、以下の点を総合的に考慮して判断されます。

  • 治療が本当に必要であるか(必要性)
  • 医療費が妥当な範囲内であるか(合理性)

つまり、合意がなくても裁判所が認めれば請求可能ですが、請求側に立証責任があるため、証拠をしっかり準備しておく必要があります。

なお、負担割合は収入の按分負担となることが多いでしょう。

5 予見できる医療費は離婚時にあらかじめ条項で決めておくべき

ここまで説明してきたように、医療費の特別出費は後から争いになることが多いため、予見できる医療費については、離婚の際にあらかじめ条項として具体的に取り決めておくことが重要です。

例えば、歯の矯正治療は予見可能性があり、長期間かつ高額な費用がかかることが多いため、

  • どのような医療費を特別出費として扱うか
  • 負担割合はどうするか
  • 支払いのタイミングや方法

などを明確に定めておくと、後々のトラブルを大幅に減らせます。
逆に、合意がないと、矯正治療は美観を良くするためのものにすぎず、「必要性が乏しい」と判断される可能性があります

したがって、発生しそうな医療が分かっている場合は、協議条項に「協議する」とだけ書くのではなく、具体的な金額の目安や範囲も盛り込むのがおすすめです。

6 まとめ(ポイント)

  • 日常的な医療費(軽いケガや通院)は養育費に含まれ、別途請求できない
  • 入院費や歯科矯正など高額な医療費は特別出費として認められる可能性が高い
  • 特別出費の医療費は、請求前に相手方に説明し合意を得ることが大切
  • 合意が得られない場合は調停・審判で裁判所が総合的に判断する
  • 予見できる医療費は、離婚時に具体的に条項で決めておくとトラブル防止になる

弁護士のホンネ

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医療費のトラブルで最も多いのは、やはり「説明不足・情報共有不足」によるものです。

法的に請求可能であっても、請求の際に十分な説明や話し合いがなければ、相手の反発や誤解が生じてしまい、結果として支払いが遅れるなどのトラブルに発展しやすいと言えます。

ですから、離婚後の医療費請求においては、必ず事前に相手に連絡し、治療の必要性や費用の詳細を説明し、合意を得ることが大切です。

また、歯の矯正治療など、必ずしも必要性が高いとは言えないものは、医療費として請求できないこともあります。相手の合意があれば良いですが、できれば離婚時に分かっている医療については、離婚の協議書などで記載しておくと良いでしょう。

話し合いでは解決できない場合は、調停や審判で手続きを行うことになります。裁判所が治療の必要性や合理性を認めれば、相手への請求は可能になります。早めに弁護士に相談して調停や審判のサポートを受けましょう。

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