プロキオン法律事務所の弁護士の青木です。
上のような質問をされる方は多くいらっしゃいます。つまり、離婚を早く進めたのだけれど、調停は協議よりも時間がかかってしまうのではないかということでしょう。
結論としては、別居してしまっている夫婦では、協議よりも調停で解決をする方が、早期離婚になることが多いと実感しています。
そこで、離婚調停にかかる期間や期日数についてお話します。
1 離婚調停の流れ
離婚調停は、相手の住所地を管轄している家庭裁判所に申し立てを行います。申し立て自体は郵送でも、直接受付窓口に行って行う形でも大丈夫です。戸籍謄本(戸籍事項全部証明書)は必要ですので、あらかじめ役所やコンビニで取得しておきましょう。
大まかな流れは以下の通りです。
・離婚調停の申立書を提出
↓(1週間程度)
・裁判所から調停の期日の日程調整の連絡がくる
↓
・期日が決まったら、裁判所が相手に対して申立書の写しと呼出状を送付
↓(1ヶ月~1ヶ月半程度)
・初回の調停期日が開かれる
↓
・初回期日の当日、2回目以降の調停期日の日程調整を行う
↓(1ヶ月~1ヶ月半程度)
・2回目の調停期日
↓(1ヶ月~1ヶ月半程度)
・3回目の調停期日
より詳しい調停の流れについては、【保存版】これで完璧!離婚の流れと手続きに関する基礎知識をご覧ください。
2 離婚の調停期日の回数
上の大まかな流れを見るとお分かりいただけると思いますが、調停期日は1回では終わらないのが通常です。
離婚自体は相手も応じるという場合でも、その具体的な条件を決めるには時間が必要です。
その後の生活にも影響するものですから、特に妻側は慎重に検討をすることになります。
また、年金分割をする際は、「年金分割のための情報通知書」という資料も必要になります。
財産分与額を決める際は、それぞれの預貯金や生命保険に関する資料も必要になってきます。
そこで、各期日の終盤で、次回期日にはこうしたものを持ってきてくださいといった「宿題」が言い渡されます。
以上の理由から、調停期日は複数回開かれるのが通常です。
離婚の調停期日の回数(期間)について、一般的には、以下のような傾向があると言えます。
離婚自体はそれほど争いがないが、金銭的な条件面で争いがある場合
→2回から4回程度(期間としては3ヶ月から半年)
離婚自体に争いがある場合
→4回から7回程度(期間としては半年から10ヶ月)
※ただし、相手が全く離婚に応じない強固な姿勢を継続して示す場合(割合としては非常に少ないです。)は、2回目または3回目で不成立により終了する傾向。
お子様の親権や面会交流が論点になる場合
→5回から10回程度(それ以上もあり。1年以上かかるケースも多い。)
以上はおおよその目安ですので、参考程度にとどめていただければと思います。もちろん、全体の2割程度は、話し合いが妥結に至らず、「調停不成立」として終了します。
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3 離婚協議との比較
以上お伝えした通り、離婚調停の期間としては、早くて3ヶ月程度、長くて1年以上かかります。
それでは、離婚協議と比較した場合はどうでしょうか。
離婚調停を行う場合は、通常、夫婦は別居をしています。
そのため、ここで比較すべき離婚協議も、別居している夫婦を想定します。
別居している夫婦間で離婚について協議をする場合、まずは話し合いの場所を設けることが多いです。
両親を交えて、どちらかの実家で行う場合もあれば、夫婦二人だけでファミレスなどで話し合いをする場合もあります。そしてそれは一回では終わらないのが普通です。
話し合いの内容としては、やはり、①離婚に応じられるかどうか、②離婚の条件をどうするか、という点になります。
離婚自体は双方争いがない場合でも、例えば年金分割を行うには、公正証書にする必要があるため、公証役場で手続きをする必要があり、公証役場とのやり取りや日程調整も必要になります。
通常の財産分与に関しても、お互いに財産資料を開示する必要があります。資料が足りないなどと揉めることも多いでしょう。
まとめると、離婚協議については以下のことが言えると思います。
離婚協議をする場合でも、複数回の話し合いは必要。
話し合いの内容は、①離婚に応じられるかどうかと、②離婚の条件をどうするかである。
年金分割や財産分与をするに際しては資料や手続が必要になる。
どうでしょうか。結局、離婚協議で行うことや内容は離婚調停とほとんど変わらないのです。
そのため、協議の方が調停より早期に決着できるとは言い難いことはお分りいただけるかと思います。
話し合いの日程調整をするのも、信頼関係が喪失した夫婦間では難しいのも現状です。
話し合いの日程調整が難しい上に、話し合うべき内容も多岐に渡りますから、そのまま別居が数年に及んでしまうというケースも多く見られます。
したがって、調停の方が早期決着に資することも大いにありうるのです。
さらに、調停には、以下のメリットがあります。
- 第三者が介在することで、相手が納得をしやすくなる。(「敵」による提案に対して拒絶反応を起こすことを、「反射的価値引き下げ」と言いますが、調停では調停委員が介在するので、それを避けやすくなります。)
- 必要な財産資料については、裁判所から宿題として提出を指示されるため、財産の内容が明らかになりやすい。
- 裁判所が主導して決める期日が良いペースメーカーになる。
- 離婚条件が裁判相場前後でまとまりやすく、非常識な結論にはなりづらい。
別居をしているご夫婦間では、以上のことを参考にして、離婚協議を行うか、それとも離婚調停を利用すべきか、検討していただくのが良いのではないでしょうか。

基本的には、別居している夫婦間で離婚について話し合いをするのであれば、離婚調停を選択することをお勧めしています。
やはり上にあげたメリット(「反射的価値引き下げ」の回避、期日のペースメーカー化など)は非常に大きいのです。
その上、期間に関しても、協議の場合と大差があるわけでもありませんし、むしろ話し合いの場を設けることも困難な場合は、逆に調停の方が早期解決に資するでしょう。
もちろん、離婚条件を特段決める必要がないケースでは、離婚協議を選択すべきかもしれません。
皆様の状況に応じて、お考えいただけると良いでしょう。