1. 妻以外に恋人がいるという状態のリスク
あなたは、妻と結婚する時、永遠の愛を誓ったかもしれません。
しかし、人は恋をする生き物ですから、たとえ結婚していたとしても、妻以外の女性を好きになることがあります。
妻以外の女性と性的な関係を持つことは「不倫」とか「不貞」と言われ、そのことが妻に発覚した場合、以下のリスクがあります。
リスク1:妻から高額の慰謝料を請求される
リスク2:妻と離婚したくなくても離婚せざるを得なくなる
リスク3:妻と離婚したくても離婚できなくなる
つまり、「妻以外の女性と付き合っている」との状態は、そのような爆弾を抱えた極めて極めて不安定な状態と言えます。
2. リスク1:妻から高額の慰謝料を請求される
妻以外の女性とお付き合いをしていると、妻から慰謝料を請求されるリスクがあります。
慰謝料として認められる額は、具体的な事情により安い場合は50万円程で高いと400万円を超える場合もあります。
妻が慰謝料を請求する先は、①夫、②不倫相手の女性、③夫と不倫相手の両方、があり得ます。
夫の浮気を知った妻が夫との離婚を考えている場合は夫にも請求するでしょうが、妻が離婚は考えていない(夫に浮気相手と別れて欲しい)と考えている場合は不倫相手のみに請求することが多いです。
逆に、離婚は考えていないという場合に妻が夫だけに慰謝料を請求するということは極めて稀です。
ただし、たとえ妻が不倫相手の女性のみに慰謝料を請求していたとしても、今度はその慰謝料を支払った不倫相手の女性から求償請求されることがあります。
つまり、妻からの慰謝料請求に不倫相手の女性が応じた場合、今度は不倫相手の女性があなたに対して、「あなたにも責任がある」として支払ったお金の何割かの負担を求めて請求してくるわけです。
裁判所は妻に対する慰謝料請求に関しては、その主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり、不倫相手の女性の責任は副次的なものと考えています。
そのため、不倫相手の女性から求償請求された場合、あなたは不倫相手の女性が支払った額の5割以上の額を請求されるリスクがあるのです。
<2019/12/15更新>プロキオン法律事務所の弁護士荒木雄平です。昨今、芸能人の不倫に関するニュースが、連日ワイドショーを賑わしていますね。芸能人のように好感度が重要な職業の場合、不倫がバレてしまった場合どう対応するか[…]
3. リスク2:妻と離婚したくなくても離婚せざるを得なくなる
夫の浮気を知った妻が夫と離婚することを決意し、夫に対して離婚を求めてきた場合、浮気をした夫がそれを拒むのは極めて難しいです。
なぜなら、法定離婚原因(離婚訴訟で裁判所が離婚判決を出す要件)を定めた民法770条1項の1号に「配偶者に不貞な行為があったとき」と定められているからです。
つまり、あなたの浮気を知った妻が離婚を求める限り、あなたが裁判所に何を訴えようと、裁判所は「配偶者に不貞な行為があった」ことのみで離婚判決を出す可能性が高いのです。
たとえ浮気がほんの出来心であったとしても、たとえ既に浮気相手とは別れていたとしても、たとえ1回のみの関係であったとしても、妻が離婚を求める限り、結局妻と離婚せざるを得なくなるとのリスクがあるのです。
4. リスク3:妻と離婚したくても離婚できなくなる
さて、最後のこの点が一番大きいリスクかもしれません。
あなたが妻と離婚して、妻以外の女性と結婚したいと考えたとします。
しかし、それも極めて難しいです。
なぜなら、浮気をしたあなたは「有責配偶者」と言われ、裁判所は「有責配偶者」からされた離婚請求は原則として認めないからです。
「他に好きな人ができたから」というのは別れ話の常套句ですが、結婚している場合は妻が同意しない限り原則として離婚できないのです。
なかには、妻が離婚に応じないがために20年近く離婚したくてもできないでいる男性も存在します。
妻と離婚できないということは、すなわち妻に対する扶養義務を負い続けるということです。
たとえあなたが妻と別居して不倫相手と同棲していたとしても、妻には婚姻費用と呼ばれる生活費を毎月毎月何年間も送金し続けることになるのです。
このような、「夫は妻と別居して不倫相手と同棲し、妻は夫から送金されてくる婚姻費用という生活費をもらって生活している」という状態は、夫のみならず妻にとっても不幸かつ極めて不自然な状態かもしれません。
しかし、そうなってしまいかねないというのが、今の日本の裁判所の運用です(なお、有責配偶者に対してここまで厳しい態度をとるのは、先進諸国でも日本くらいです)。

今回は不倫のリスクを簡潔にまとめました。
このようなリスクに直面した場合は、早急に弁護士の無料法律相談を受けることをお勧めします。
なぜなら、曖昧な知識のままでリスクに対応しようとすると、状況がどんどん悪化して、リスクが広がってしまう可能性があるからです。
例えば、不倫慰謝料については、一度応じる意向を示してしまうとそこから減額することは極めて難しくなりますし、その他にも後から撤回できない不用意な発言をしてしまうかもしれません。
妻のバックには既に弁護士がいて、妻はその弁護士のアドバイスに基づいてあなたの言質を取りにきているかもしれません。
妻との離婚については、ずるずると妻と望まぬ婚姻関係に拘束されて妻の生活費を払い続けるより、思い切って「不倫慰謝料+財産分与として支払うべき金額+離婚に合意してもらうための解決金」として、あえて不倫慰謝料の相場よりも高額の金銭の支払いを提示して、妻に離婚に応じてもらう方が経済的にも有利であり、精神的にも幸せへの近道となる可能性もあります。
人は一度安定した生活状況に至るとなかなかそこから動けなくなりますので、どうせもう妻と円満な婚姻関係には戻れないのであれば早いこと離婚する方がお互いのためであると言えるかもしれません。