別居中の配偶者と同棲している不倫相手に対する慰謝料請求。時効が成立しているかも?

今回の弁護士からのアドバイス

別居中の配偶者が他の異性と同棲している場合・・・

☑️同棲の事実を知ってから3年経つと、慰謝料請求は消滅してしまいます!

☑️同棲がその後も続いていたとしても、慰謝料請求が認められない可能性があります!

プロキオン法律事務所の弁護士の青木です。離婚に特化した弁護士として、年間200回以上の調停や裁判に出席しています

さて、今回は、配偶者(別居中)と同棲している不倫相手に対する慰謝料請求が、時効で消滅しているかもしれないというテーマでお話しします。

「別居中の配偶者が、どうやら不倫相手と同棲しているらしい。」
「その不倫相手に慰謝料請求をしたい。」

このようなご相談は良くあります。該当する方はぜひ最後までご覧ください。

1 慰謝料請求の時効

現在の日本の裁判所の運用では、配偶者が不倫をすれば、その不倫相手(法律用語としては「不貞相手」と言います。)に対して慰謝料を請求することが認められています。

もっとも、慰謝料請求はいつでもできるというわけではなく、不貞行為があったことを知ってから3年以内に行う必要があります。

民法では以下のように規定されています。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

厳密に言えば、不貞行為があったこと(損害)と、その不貞相手(加害者)を知ってから3年以内に慰謝料請求をしなければ、その請求権は時効で消滅することになります。

不貞相手の名前や住所など、どの程度正確に知っておくべきか問題になることがありますが、一般的には、損害賠償請求が可能な程度に加害者を知っているのであれば、そこから時効の計算が開始することになります(最高裁昭和48年11月16日第二小法廷判決、最高裁平成14年1月29日第三小法廷判決、大阪地裁令和5年6月30日判決など)

なお、配偶者に対する慰謝料請求は離婚してから6ヶ月が経過するまでは時効になりません(民法159条)。注意しましょう。専門家でも良く理解していない人が時折います。

(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
第百五十九条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2 配偶者と同棲している不倫相手の行為はいつ時効になる?

(1)同棲していることを知ってから3年経過し、今も同棲が続いているケース

それでは本題です。
別居中の配偶者と同棲している不貞相手に対しても、もちろん慰謝料請求は可能です。

ところが、同棲していることを知ってから3年以上経っているが、今も同棲を続けている場合、慰謝料請求はできるのでしょうか?

今も同棲をしているのであるから、常に不貞行為が発生しているようにも思えますよね。したがって、3年以上前から現在も続いている行為を一体とみれば、時効は問題にならないようにも思えます。

ところが、平成6年1月20日の最高裁判決は、次のように判断をしました。

(平成6年1月20日最高裁第一小法廷判決)
夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同せいにより第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同せい関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当である。けだし、右の場合に一方の配偶者が被る精神的苦痛は、同せい関係が解消されるまでの間、これを不可分一体のものとして把握しなければならないものではなく、一方の配偶者は、同せい関係を知った時点で、第三者に慰謝料の支払を求めることを妨げられるものではないからである。

つまり、最高裁は、配偶者の不貞相手との同棲を知った時は、少なくとも知った時点で発生した慰謝料請求権の時効の計算が開始すると述べています。したがって、同棲を知ってから3年が経過してしまうと、同棲を知った時点に請求できたはずの慰謝料については、請求ができなくなってしまうのですね。

なお、この判例は、その後も不法行為に関する裁判において、度々引用されており、現在も通用しています(例えば、東京地裁令和元年11月18日判決、東京地裁令和元年5月15日判決など)

(2)同棲を知ってからも発生している慰謝料はどうなる?

もっとも、その後も同棲をしているのであれば、同棲を知ってからも発生し続ける慰謝料は請求できるのではないか?そんな風に思う方も多いでしょう。

ただ、これはかなり厳しい可能性があります。理由は二つあります。

①一つは、同棲を知ったことで、請求側の配偶者には多大な精神的苦痛が生じていると思いますが、その後、同棲が継続したとしても、最初に知った時の苦痛よりは弱いものと評価されてしまう可能性があります(最初の苦痛で評価し尽くされている)。

②もう一つは、同棲を知ったことで、すでに夫婦関係は破綻に至ったのだから、その後の同棲は不法行為に該当しないとみなされる可能性も高いです(平成8年3月26日最高裁第三小法廷判決は、夫婦の関係が破綻した後に他の異性と関係を持っても、不法行為にならないと判断しました。その後この判断に基づいて裁判所は判断をしています(東京地裁令和元年5月15日判決、東京地裁平成31年3月28日判決など)。

このような事情があるため、配偶者と同棲をしていることが判明したのであれば、時効が完成する前に、可能な限り早急に手を打つ必要があると言えるでしょう。

今回の弁護士からのアドバイス

別居中の配偶者が他の異性と同棲している場合・・・

☑️同棲の事実を知ってから3年経つと、慰謝料請求は消滅してしまいます!

☑️同棲がその後も続いていたとしても、慰謝料請求が認められない可能性があります!

弁護士の本音

弁護士 青木
弁護士のホンネ

 実は、先ほどの平成6年1月20日の最高裁判決(同棲を知った時点の慰謝料請求権は、その時から時効が進行するという判断)は、高等裁判所の判断をひっくり返したものです。つまり、高等裁判所の裁判官ですら、同棲が続いている間は、不貞行為は一体のものとして時効は進行しないと考えていたわけです。
そうすると、一般の方はなおさらこの辺りを誤って理解してしまっている可能性があります。ぜひ、注視いただければと思います。
今回の記事が皆様の問題に役に立つのであれば幸いです。

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